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"試練の冬" 世界経済の見通しと課題/櫻井玲子・nhk
2022年10月13日 (木)
解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/474618.html
世界経済は今、「試練の冬」を迎えようとしています。
ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとした、エネルギー価格の高騰も背景に、
▼ヨーロッパ・アメリカ・中国の減速で、「世界同時不況」に陥る懸念や、
▼物価の上昇と、景気の後退が同時に起きる「スタグフレーション」の可能性。
▼そしてその影響を受ける日本の課題や対応策について考えていきたいと思います。
【世界同時不況の可能性強まる】
IMF・国際通貨基金が今週発表した、最新の見通しによりますと、来年2023年の世界全体の成長率は2.7パーセントにとどまる見込みで、半年前の予想から、1パーセント近くも、下方修正されました。
これはおととしに起きた、新型コロナウイルスの感染拡大による異例の景気減速を除けば、2009年以降、最も低い成長率です。
各国別にみても、
▼アメリカはたった1パーセント。
▼ユーロ圏はわずか0.5パーセントの成長しか見込めず、
▼中国も4.4パーセントと半年前の予想から0.7パーセント下方修正されました。
▼また新興国と途上国の成長率も3.7パーセントと、厳しい見通しが続きます。
そして▼コロナ禍からの本格的な回復が期待されてきた日本も、1.6パーセントの成長にとどまることが予想されています。
IMFは「ヨーロッパ・アメリカ・それに中国経済が失速し、世界経済の、実に3分の1以上がことしから来年にかけて景気の縮小に直面する」と予想しています。
まさに、『世界同時不況』ともいえる状況です。
IMFは「最悪期は、これから来る」と警告しています。
【高まるスタグフレーションリスク】
景気を落ちこませる最大の要因は、物価の大幅な上昇と、それを抑えるための対応策によるものです。
IMFは世界全体のインフレ率がことしは8.8パーセントまで上昇したあと、来年は6.5パーセントと、いくぶん落ち着くものの、去年の水準に戻るのは再来年になるとみています。
コロナ禍からの回復で、アメリカやヨーロッパでは、消費や雇用が大幅に改善。
人手不足で賃金も上がって「物価高」になっているところに、ロシアによるウクライナ侵攻が起きて、エネルギーや食料価格がはねあがる「資源高」が加わり、1970年代以来ともいえる大幅なインフレが起きています。
厄介なのはこうした物価の上昇を抑えようと、各国が金融の引き締めに走る。
つまりこれまで景気を支えるために導入してきた低金利政策を一気にやめ、利上げを急ごうとすると、景気が急激に冷え込むことです。
特に心配されているのが、ヨーロッパです。
ユーロ圏の消費者物価指数の伸び率はすでに10%に達し、ヨーロッパ中央銀行は歴史的なインフレを抑えようと、これまでのマイナス金利政策を捨てて利上げを急いでいて、年末からその影響で景気が冷え込むことが予想されています。
ただ、この冬はロシアとの対立でエネルギーの供給が綱わたりになることが見込まれ、金融当局が利上げを急いだところで燃料や食料価格は簡単には下がらないのでは、とも、みられています。
このため、物価の高騰と、景気の悪化が同時に起こる「スタグフレーション」に陥る可能性が高まっています。
またアメリカでも急ピッチで利上げをすすめる中で、すでに住宅市場などが低迷しはじめており、こちらも物価が下がりきらないまま、景気が悪くなるリスクが指摘されています。
さらにアメリカの相次ぐ利上げにより、市場でより金利の高いドルを買う動きがすすみ、ドル高によって、新興国や途上国から資金が流出したり、輸入に頼る国の経済に悪影響を与えたりすることが心配されています。
このためG7・主要7か国は12日、声明を発表し、各国がすすめる金融引き締めについては「国を超えた影響の波及を抑えることに留意」するという文言を盛り込み、急激な利上げによる悪影響に配慮すべきだとしています。
【「円安」「資源高」が日本を直撃】
さて、ここからは日本が直面する課題について、考えてみたいと思います。
アメリカが急ピッチで利上げに走る中、日本がマイナス金利政策を続けていることを背景に、円安ドル高が加速しています。
そしてエネルギーや食料を海外に頼る日本を直撃するのは「資源高」です。
注意しなければならないのは、欧米では、コロナ禍の回復により、物価だけでなく賃金も上がっているのに対し、日本では賃金はさほど上がっていないということです。
賃金が上がらないのに、生活必需品であるエネルギーと食料の値段だけが上がる「資源高」と、輸入品の価格を上げてしまう「円安」は、所得の低い世帯を中心に、より大きな打撃を与えることになります。
最新の消費者物価は前年同月比で3%上がり、およそ30年ぶりに3%台の上昇をみせています。
今後3パーセント台後半から4パーセントといった、日本が近年、経験したことがないようなインフレが起きる可能性もあります。
すでに実質賃金も、物価上昇の影響を受けて5か月連続のマイナスとなっており、所得の低い家庭などが光熱費や食費の高騰に立ち往生しないよう、支援が必要となるでしょう。
【今こそ「日本に投資」するとき】
また欧米の利上げや海外経済の減速によって、日本が海外との貿易や投資で稼ぐことも、これまでにくらべ、難しくなってきています。
今週発表された8月の経常黒字は、去年の同じ月より96パーセントも減少。
「円安」も背景に「貿易赤字の拡大」が日本を苦しめています。
一方でプラス材料もあります。注目すべきは、日本経済がG7・先進7か国の中では、相対的に、堅調さが見込まれるということです。
専門家たちは、日本がコロナ禍からの回復が欧米にくらべて遅れたことで、皮肉にも、まだ「伸びしろ」を残していると、指摘しています。
今週から始まった水際対策の緩和によりサービス産業の改善が期待されるほか、デジタル化や脱炭素化といった時代の変化を背景に、企業の設備投資意欲がそれほど衰えていないのも、心強いところです。
そこで、今こそ、日本企業は、比較的堅調な経済と円安局面を活かして、日本に投資する。国内投資をすすめることが打開策の一つとして考えられるのではないでしょうか。
この20年、日本企業は、安い労働力や、より多くの消費者がいる市場を求めて、海外にひたすら投資をしてきました。
しかし、今は円安や海外のインフレで、日本人の労働力は相対的に安くなっています。
また、感染症の拡大や災害、それに経済安全保障上の理由からも、国内の安定的な供給網が必要とされています。
製造業の一部の企業では海外拠点を日本に戻す動きも出てきました。
これからの成長分野を見極めながら、国内の設備投資をすすめ、エネルギー危機を克服するような技術開発を促進し、日本人の人材育成に力を入れる。
そうした動きを支援することで新たな雇用が生まれたり、賃金が上がったりすれば、日銀の金融緩和頼みになりがちな成長戦略からの脱却も、実現するかもしれません。
IMFのトップ、ゲオルギエワ専務理事は「この危機を乗り越えるための短期的な対策も必要だが、それだけでは不十分だ」として、各国に世界経済のぜい弱さに耐えられるような抜本的な変革を訴えています。
政府には、足元で苦しんでいる人たちをきちんと支援しつつ、将来に向けて種をまき、水をやって育てていくような政策も期待したいと思います。
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