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「銀行員」が間もなく消滅?転職市場で「いま起きていること」
https://friday.kodansha.co.jp/article/272186
2022年10月28日 FRIDAYデジタル
今さらコンサルティング力やIT力を求められても…
@人口減少、A低金利、Bデジタル化、という三重苦により、メガバンクや地方銀行の苦戦が伝えられて久しい。特に、個人向けビジネスでは、楽天銀行やSBI証券といったネット銀行やネット証券がその利便性や手数料の安さなどから、デジタルネイティブ世代だけでなく、30代から50代のミドル世代、そしてシニア層に至るまで幅広く利用されるようになっており、相対的に銀行は収益機会を失っている。
ネット銀行やネット証券を傘下にもつデジタル企業は概して、@経営スピード、Aテクノロジー、Bデジタル人材で勝り、既存の銀行と違って、余剰人員と余剰店舗を抱えていないことも強みだ。
こうしたデジタル企業に対抗すべく、メガバンクや地銀の銀行員もデジタル専門力やクリエイティブさが問われるようになっている。
「ジェネラリストに価値はない。全員がスペシャリストになれ」「これまで比較的単純な作業に従事してきた行員をよりクリエイティブな仕事に振り向ける」といった発言をメガバンクの首脳がこぞってしている。
年功序列と終身雇用という暗黙のルールのなかで2年から3年での転勤を繰り返し、本部や支店などの様々な職場を体験するジェネラリストを意図的に養成してきた銀行と銀行員にとって、人事・組織方針の大転換だ。安定性を重視して就職し、一環してジェネラリストとして働いてきた多くの銀行員からは、「今さらコンサルティング力やIT力を求められても困る」と不満の声が聞こえてくる。
メガバンクや地方銀行では、銀行に見切りをつける形で離職が相次いでいるという(写真はイメージ:アフロ)
一種の「パワハラ」!?
メガバンク出身のある外資系証券会社のアナリストは、「銀行は、デジタル化に伴う業務量削減によって捻出した余剰人員を営業現場に投入し、コンサルティング業務を強化している。しかしながら、例えば、事務やバックオフィス、本部にいた銀行員が、急に営業の最前線に出され、専門知識や顧客配慮が求められるコンサルティング業務において活躍できるのだろうか。また、本人はそれを希望しているのだろうか」と疑問を呈する。
安定を重視しジェネラリストとして働いてきた銀行員に、急にコンサルティング力やIT力にクリエイティブさまで求められる職場や職種への配属は酷であり、一種のパワハラともいえよう。
多くの銀行が、豪華な研修施設を持ち、行内研修を充実させるというが、クリエイティブな職種であればあるほど、研修や資格ではなく、経験とセンスの比重も大きくなるものだ。
銀行員から公務員へ転職も
こうした状況下、メガバンクや地方銀行では、銀行に見切りをつける形で離職が相次いでいるという。営業やマーケティング担当、商品企画担当、プライベートバンカーやアナリストといった専門職など多くの職種に及ぶ。それも「20代から30代だけでなく、40代にも及んでいる」(転職サイト会社担当者)という。実際、「銀行員、転職」とスマホで検索してみると、ずらりと様々な転職サイトやアドバイス、動画での体験談まで出てくる。
かつての銀行員の転職や退職だと、家業を継ぐことを除けば、銀行から証券会社や外資系金融会社などが主流だったが、今は様変わりだ。はやりのスタートアップ企業やベンチャー企業の立上げや独立、コンサルティング会社やIT企業に転職かというと、「それはごく一部のケースであり、そうではない」(同)という。
なんと、例えば、メガバンクの場合、政府系金融機関や官公庁、地方銀行の場合、県庁や市役所といった地元の自治体やJAバンクグループや政府系金融機関などに転職するケースが増えているという。官公庁や自治体の場合、20代であれば、一般的な公務員試験を、30代以上であれば、社会人経験者採用枠などをパスして採用されるということだ。
銀行を選んだ若者は、あくまでも保守的だ。転職先もより保守的な転職先を選んでいるのだ。銀行を見限り、更なる安定と保守を求めているといえよう。20代、30代の嗅覚は敏感だ。確かに、銀行がなくなったとしても、官庁に県庁、市役所、JAバンクや政府系金融がこの先もなくなることはないだろう。
なぜグーグルでなく、メガバンクに就職するのか?
銀行で退職者、転職者が増える一方、デジタル化が進む以上、銀行でもデジタル人材は必要だ。新しいスマホアプリやシステムを導入したものの、動かす仕組みを理解し、アップデートできる行員は数えるほどしかいない。結局、提携するシステムベンダーやデジタル企業に丸投げし、ブラックボックス化してしまう。みずほFGで相次いだシステム障害の遠因とされる、ブラックボックス化という二の舞を避けるためにも自前のデジタル人材は欠かせないのだ。
デジタル人材は、具体的には、システム開発は無論、クラウド、ビッグデータ、AI、サイバーセキュリティー関連の専門職、データサイエンティスト、金融工学や統計学専門職、アプリなどデジタルプロダクトデザイナーなどを指す。
実際、三井住友銀行では、国内外の大学院卒を対象に、総合職に「デジタライゼーションコース」を設け、ビッグデータやAI等を活用した先進ビジネスを構築する人材を募集している。また、三菱UFJ銀行では、データサイエンティスト、データアーキテクト、サイバーセキュリティーの専門家といった職種で中途採用を継続的に行っている。
もっとも、「なぜグーグルやアップルでなく、メガバンクに」「なぜ起業ではなく、銀行に」という点が解決されない限り、採用は苦戦しそうだ。優秀とされるデジタル人材にとって、あまたある選択肢のなかで、デジタル対応で劣勢の銀行にわざわざ好んで入る者は少ないだろう。
デジタル人材獲得のためには、報酬は無論、業務における権限、勤務体系、勤務時間、副業や兼業是認、福利厚生などかなり柔軟な対応が必要となってこよう。
一種の「パワハラ」!?
メガバンク出身のある外資系証券会社のアナリストは、「銀行は、デジタル化に伴う業務量削減によって捻出した余剰人員を営業現場に投入し、コンサルティング業務を強化している。しかしながら、例えば、事務やバックオフィス、本部にいた銀行員が、急に営業の最前線に出され、専門知識や顧客配慮が求められるコンサルティング業務において活躍できるのだろうか。また、本人はそれを希望しているのだろうか」と疑問を呈する。
安定を重視しジェネラリストとして働いてきた銀行員に、急にコンサルティング力やIT力にクリエイティブさまで求められる職場や職種への配属は酷であり、一種のパワハラともいえよう。
多くの銀行が、豪華な研修施設を持ち、行内研修を充実させるというが、クリエイティブな職種であればあるほど、研修や資格ではなく、経験とセンスの比重も大きくなるものだ。
銀行員から公務員へ転職も
こうした状況下、メガバンクや地方銀行では、銀行に見切りをつける形で離職が相次いでいるという。営業やマーケティング担当、商品企画担当、プライベートバンカーやアナリストといった専門職など多くの職種に及ぶ。それも「20代から30代だけでなく、40代にも及んでいる」(転職サイト会社担当者)という。実際、「銀行員、転職」とスマホで検索してみると、ずらりと様々な転職サイトやアドバイス、動画での体験談まで出てくる。
かつての銀行員の転職や退職だと、家業を継ぐことを除けば、銀行から証券会社や外資系金融会社などが主流だったが、今は様変わりだ。はやりのスタートアップ企業やベンチャー企業の立上げや独立、コンサルティング会社やIT企業に転職かというと、「それはごく一部のケースであり、そうではない」(同)という。
なんと、例えば、メガバンクの場合、政府系金融機関や官公庁、地方銀行の場合、県庁や市役所といった地元の自治体やJAバンクグループや政府系金融機関などに転職するケースが増えているという。官公庁や自治体の場合、20代であれば、一般的な公務員試験を、30代以上であれば、社会人経験者採用枠などをパスして採用されるということだ。
銀行を選んだ若者は、あくまでも保守的だ。転職先もより保守的な転職先を選んでいるのだ。銀行を見限り、更なる安定と保守を求めているといえよう。20代、30代の嗅覚は敏感だ。確かに、銀行がなくなったとしても、官庁に県庁、市役所、JAバンクや政府系金融がこの先もなくなることはないだろう。
なぜグーグルでなく、メガバンクに就職するのか?
銀行で退職者、転職者が増える一方、デジタル化が進む以上、銀行でもデジタル人材は必要だ。新しいスマホアプリやシステムを導入したものの、動かす仕組みを理解し、アップデートできる行員は数えるほどしかいない。結局、提携するシステムベンダーやデジタル企業に丸投げし、ブラックボックス化してしまう。みずほFGで相次いだシステム障害の遠因とされる、ブラックボックス化という二の舞を避けるためにも自前のデジタル人材は欠かせないのだ。
デジタル人材は、具体的には、システム開発は無論、クラウド、ビッグデータ、AI、サイバーセキュリティー関連の専門職、データサイエンティスト、金融工学や統計学専門職、アプリなどデジタルプロダクトデザイナーなどを指す。
実際、三井住友銀行では、国内外の大学院卒を対象に、総合職に「デジタライゼーションコース」を設け、ビッグデータやAI等を活用した先進ビジネスを構築する人材を募集している。また、三菱UFJ銀行では、データサイエンティスト、データアーキテクト、サイバーセキュリティーの専門家といった職種で中途採用を継続的に行っている。
もっとも、「なぜグーグルやアップルでなく、メガバンクに」「なぜ起業ではなく、銀行に」という点が解決されない限り、採用は苦戦しそうだ。優秀とされるデジタル人材にとって、あまたある選択肢のなかで、デジタル対応で劣勢の銀行にわざわざ好んで入る者は少ないだろう。
デジタル人材獲得のためには、報酬は無論、業務における権限、勤務体系、勤務時間、副業や兼業是認、福利厚生などかなり柔軟な対応が必要となってこよう。
人口減少に低金利に加え、デジタル化の進展によって苦戦する銀行にとって、人員の削減は不可避の状況
すでに早期退職制度も実施されている
人口減少、低金利に加え、デジタル化の進展によって苦戦する銀行にとって、人員の削減は不可避の状況である。実際、全国銀行全体の経費6.5兆円のうち、人件費は2.7兆円で42.6%を占めている(2022年3月末)。ちなみに、ネット銀行の一角である大和ネクスト銀行の営業経費に占める人件費の割合は16.9%に過ぎない(2022年3月末)。
メガバンクでは、みずほFGでは2026年度末までに1万9000人を削減。三菱UFJ銀行は2023年度末までに6,000人程度の自然減を見込む。多くの銀行で新卒採用の抑制も続いている。
しかし、こうした新卒抑制や定年退職など自然減だけでは対応できず、早期退職制度という名の人員削減が始まることも想定されよう。表向きは、セカンドキャリア支援制度、チャレンジ・キャリア制度、起業・独立応援などもっともらしい前向きな名前となるが、要は早期退職制度だ。
実は既に実施事例もある。2021年6月、名古屋市に本店がある中京銀行が、希望退職者を募集すると発表した。募集対象者は45歳以上の総合職などで、150人が応じ2022年3月末に退職している。なお、中京銀行は愛知銀行と経営統合し、2022年10月には、共同持ち株会社「あいちFG」を設立している。
全国銀行協会によると、メガバンク、地方銀行などあわせて全国27万1,515人の銀行員は、既に前年比で9,187人が減少している(2022年3月末)。
銀行の業務が異業種に代替され、銀行員の仕事がスマホに置き換わるなか、従来型の銀行員が消えてしまう日が刻一刻と近づいているのかもしれない。
文:高橋克英(たかはし・かつひで)
株式会社マリブジャパン代表取締役、金融コンサルタント。1969年、岐阜県生まれ。1993年慶應義塾大学経済学部卒、2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。三菱銀行、シティグループ証券などを経て、2013年に同社を設立。著書に『銀行ゼロ時代』(朝日新聞出版)、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(講談社+α新書)、『地銀消滅』(平凡社)など。
写真:アフロ
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