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ファミマ・2022年問題、旧サンクスのオーナー大量離脱の危機、本部への不満充満
https://biz-journal.jp/2022/01/post_277170.html
2022.01.29 06:00 文=松崎隆司/経済ジャーナリスト Business Journal
ファミリーマートの店舗
「そろそろ、No.1を入れ替えよう。」
こう銘打った巨大広告が昨年の10月、渋谷駅前に突如現れた。広告主がコンビニエンスストア店舗数で業界2位のファミリーマートだったことから、業界最大手セブン-イレブンに対する挑戦状だとメディアはこぞって取り上げた。
「特定の企業を対象にしたものではありません。消費者から一番おいしいといってもらいたい。ただそれだけなのです」(ファミマ広報担当者)
ファミマの商品はこれまで大手3社のなかでも「おいしくない」というイメージが付きまとっていたが、これを払しょくするのが大きな狙いだという。ファミマは商品戦略を大きく見直し、昨年10月18日にはプライベートブランド(PB)の刷新を発表した。消費者への認知度が低いといわれてきたお菓子類や日用品が中心の「ファミリーマートコレクション」と、抗議が殺到した総菜類の「お母さん食堂」など複数あったPBを「ファミマル」に一本化。店頭での訴求力を高めていくという。
なぜここにきて、急に店舗や商品の訴求力強化をアピールするようになったのか。
「昨年から旧サークルKサンクス(CKS)と大規模な契約更新が始まっているからではないでしょうか」
大手コンビニ幹部はこう語る。そして契約更新のピークの時期が2022年になることから、「ファミリーマート2022年問題」と呼ばれている。
ファミマがCSKを傘下に持つユニーグループ・ホールディングス(GHD)と合併契約を締結したのは2016年2月3日のことだった。当時ファミマの国内の店舗数は1万1930店舗、CKSは6712店舗、合計すると1万8642店舗となる。これは業界では圧倒的な首位を維持し続けてきたセブン-イレブンの国内店舗数1万8572店舗を超え業界トップに躍り出ることになる。
その後16年9月1日から「One FamilyMart」を目指し、全国36都道府県に展開する「サークルK」「サンクス」のブランド転換を開始した。17年1月4日の「新年のご挨拶」でユニー・ファミリーマートホールディングスの上田準二社長(当時)は次のように語っている。
「昨年9月にユニーグループ・ホールディングスと経営統合し、新会社『ユニー・ファミリーマートホールディングス』として大きな転換を遂げた年でありました。加盟店の皆様や社員、お取引先など新たな仲間を多数迎え、CVSでは国内において約1万8000店規模になるとともに、GMSを含めた国内グループ全体の売上高は4兆円に迫るなど、新たな流通グループとしてスタートを切りました。2017年もユニー・ファミリーマートホールディングスは、『くらし、たのしく、あたらしく』の企業理念のもと、常に新しい価値を創り出し、お客さまに新鮮で楽しさ溢れる毎日のくらしをご提供できるよう、グループ一丸となって取り組んでまいります。CVSにおいては、商品はもちろん、物流・ITなどのシステム統合を早期に完了させ、サークルK・サンクスからファミリーマートへのブランド転換を一気呵成に進めてまいります。そして、全国約1万8000店のスケールメリットを活かし、店舗におけるあらゆる分野での『質』を徹底的に高めてまいります」
なんとも勇ましいメッセージだ。ちなみに15年10月15日にファミマとユニーGHDが共同で発表した「経営統合に向けた基本合意締結について」という資料では、統合後5年以内に国内グループ売上高5兆円以上、連結営業利益1000億円以上、連結純利益600億円以上、そして国内店舗数は2万店以上になると試算していた。
■「ファミマの傘下に入って正直、がっかりしました」
ファミマの平均日販は16年度で52万円、CKSは42万円。ファミマの経営陣は当時、CKSのオーナーたちはこぞってファミマへのブランド転換に協力すると考えていたのだろう。ところが、いざ蓋を開けると実態はまったく違っていた。実はCKSのオーナーたちの間ではファミマ傘下入りに対する不満が鬱積していた。
「ファミマの傘下に入って正直、がっかりしました。両社の企業文化があまりにも違うからです。ファミマとは一緒にやっていけないというオーナーは少なくなかったと思います」(元CKSオーナー)
CKSのオーナーはかなりの裁量権が認められ、本部の商品以外の商品の販売も許されていたという。
「その立地立地で必要な商品というのがあるんですよ。そんなものすべてを本部がカバーしているわけはない。だから必要なものを本部には報告して独自で調達していたのです。これが大きな収益源の一つになっていたのですが、ファミマにグループ入りすると、これを認めてはくれない。だから自分の裁量で仕事をしてきたCKSのオーナーにとっては、すごく仕事がやりづらくなったのです」(元CKSオーナー)
■収入が大幅に減るオーナーが続出
それだけではない。CKSの平均日販はファミマよりも低いが、本部は複数店舗の運営を奨励していた。それでオーナーは一定の収益を上げることができるようになっていた。さらに3店舗ごとに100万円の補助金を出し、不採算店を抱えているオーナーでも採算をとることができた。ところがファミマの傘下に入ると補助金がなくなってしまったという。
それまで「一オーナー一店舗主義(エリアフランチャイズを除く)」を貫いてきたファミマには、複数店を経営するオーナーをサポートする仕組みがなかったからだ。ファミマの加盟料は400万円(これは建値で実際には300万円程度だという話もある)でロイヤリティは48%(営業総利益が月300万円以下の場合)であるのに対して、CKSの加盟料は250万円でロイヤリティは37%(営業総利益が月240万円以下の場合)。ブランド転換する場合にはいったんCKSの加盟料などを清算し、改めてファミマに加盟料などを支払う手続きとなっていた。
ファミマは「ブランド転換した店舗では、店舗の一日あたりの売上が平均で10%以上伸長しております」(ファミマのニュースリリースより)と説明していたが、本部に支払うロイヤリティはファミマのほうが高いため、収入が大幅に減るオーナーが続出した。
そのため契約更新が始まると、契約を終了してしまうオーナーたちが後を絶たなかったという。17年度には664店舗、18年度には393店舗、計1057の店舗が単純閉店している。。ファミマは不採算店を整理したと説明しているが、このなかには契約更新をしなかったオーナーたちもかなり含まれているといわれている。
それでも16年度には829店舗、17年度には2720店舗、18年度には1025店舗、計4575店舗がブランド転換した。大多数のオーナーたちが契約更新に応じたのは契約の中途解約の問題があったからだという。
「CKSはもともと15年が基本で、その後10年単位で契約の更新が行われていました。ファミマとの契約更新の時期に契約が終了していれば問題はないのですが、契約が残っていれば莫大な違約金が発生する。しかも店のオーナーを辞めた後にやれる仕事は限られている。だから渋々契約を結んだ人は少なくなかったのではないでしょうか」(同)
■問題はシステムと商品
しかし、ブランド転換したオーナーの間では不平不満はさらに拡大したという。
「なかでも大きな問題となっていたのがシステムと商品なんです。ファミマのシステムはCKSに比べて10年は遅れていた。発注は売り場で登録し、棚順でないと発注できない。だからファミマに転換したオーナーからは、それまで1時間で済んだ仕事が2時間かかってしまう、といった不満を漏らしていました」(同)
CKSの前身、サンクスはシステム投資には積極的で、一時はセブン-イレブンの日販を抜いたこともあった。そうしたシステムがサークルKとの経営統合後にも引き継がれ、CKSのシステムは業界の中でも進んでいるといわれていたのである。
「ファミマにブランド転換したオーナーは、なぜわざわざお金をかけて遅れたシステムを導入しなければならないのかという疑問を持ち続けていたと思います」(同)
さらにもう一つ大きな問題が商品の問題だった。ファミマの弁当はあまり評判がよくなかったのである。
「CKSの弁当はご飯の上にドーンとおかずが乗っているようなものが多いので、見た目はよくなかったのですが、味には定評がありました。一方でファミマの弁当はお世辞にもうまいとはいえない。統合後にはCKSでもファミマの商品を売るようになり、恵方巻の予約を必死になってとったことがあったのですが、あとからお客さんから『今年はなんだか味が落ちたね』というお叱りを受けました」(同)
しかし、そうした旧CKSのオーナーたちの大量契約更新は21年から再び始まり、22年にはその山場を迎えようとしている。ファミマはこの5年間の間にどう変わったのか。旧CKSのオーナーたちはどう考えているのか、次回レポートする。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)
●松崎隆司/経済ジャーナリスト
1962年生まれ。中央大学法学部を卒業。経済出版社を退社後、パブリックリレーションのコンサルティング会社を経て、2000年1月、経済ジャーナリストとして独立。企業経営やM&A、雇用問題、事業継承、ビジネスモデルの研究、経済事件などを取材。エコノミスト、プレジデントなどの経済誌や総合雑誌、サンケイビジネスアイ、日刊ゲンダイなどで執筆している。主な著書には「ロッテを創った男 重光武雄論」(ダイヤモンド社)、「堤清二と昭和の大物」(光文社)、「東芝崩壊19万人の巨艦企業を沈めた真犯人」(宝島社)など多数。日本ペンクラブ会員。
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