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海外売上高比率が9割…村田製作所が過去最高益、「世界シェア上位」経営の秘密
https://biz-journal.jp/2021/12/post_269591.html
2021.12.16 06:00 文=編集部 Business Journal
村田製作所本社(「Wikipedia」より)
村田製作所は2023〜25年3月期までの「中期経営方針2024」と2030年に向けた長期ビジョンを発表した。世界的に環境への意識が高まる中、脱炭素に向けた対応などを強める「戦略投資」という項目を新たに設定。3年間で2300億円を投じる。株主還元でも2700億円を計画する。
新中計は売上高2兆円(22年3月期の予想は1兆7300億円)、営業利益率20%以上、ROIC(投下資本利益率)20%以上に設定。投資が拡大するが収益力を落とさないよう配慮する。営業キャッシュフロー(CF)は前中計(今期まで3年間)より12%多い1兆2500億円を創出する。
スマートフォンやパソコンなどに欠かせない積層セラミックコンデンサー(MLCC)が牽引役だ。MLCCは世界シェア4割を占める。環境投資では各生産拠点などに太陽光発電システムを導入する。50年の再生可能エネルギー導入比率100%という目標達成に向け、25年3月期までに25%、31年3月期に50%とするロードマップも示した。温暖化ガス排出量も25年3月期に20年3月期比20%減を目指す。
今年11月に、高周波部品の生産子会社・金津村田製作所(福井県あわら市)で、工場の100%再エネ化を初めて達成した。発火しにくく長寿命の高性能リチウムイオン電池「フォルテリオン(FORTELION)」を活用した蓄電システムを導入。駐車場にはカーポート型の太陽光発電システムを設け、蓄電システムと組み合わせた。
MLCC増産など通常の設備投資には6400億円を投資する。需要が拡大するMLCCは、タイで増産する。チェンマイ近郊の電子部品工場に近隣する土地を購入し、120億円を投じて延床面積約8万平方メートルの新棟を建設。23年3月に稼働する。MLCCは国内や中国、フィリピンに主力工場があり、タイでも主要部品の生産を始め、生産拠点を分散化する。
当面の業績は好調だ。2021年4〜9月期の連結決算は売上高が前年同期比21%増の9080億円、営業利益は69%増の2221億円、純利益は68%増の1677億円と過去最高となった。主力のMLCCや通信機器に使う表面波フィルターなど世界シェアが高い部品が好調。用途別売上高では巣ごもり需要を背景に、パソコンや関連機器向けが31%増の1827億円になったほか、ゲーム機器などのAV機器向けも10%増の396億円となった。通信向けは3%増の3927億円。高速通信規格「5G」対応スマホなどの需要が大きく業績に寄与した。車載向けは顧客メーカーが生産回復に備えるため電子部品の在庫を積み増した影響が大きく、51%増の1648億円だった。
22年3月期通期は、売上高が前期比6%増の1兆7300億円、営業利益16%増の3650億円、純利益14%増の2710億円の見通しを据え置いた。村田恒夫会長は下期以降について「需要は弱含みになる」と慎重な見方をしている。11月15日の中期経営方針の発表を受けて、翌16日の株価は前日比308円(3.5%)高の8989円に急騰した。環境投資や株主還元への取り組みを好感した買いが入った。
■全固体電池を量産
村田製作所の売上高営業利益率は24.5%(21年4〜9月期)と、電子部品大手の中で断トツの収益性を誇るが、数少ないアキレス腱が電池事業だ。
電気自動車(EV)や太陽光発電などの普及とともに蓄電池の市場の拡大が見込まれる。日本政府が2050年の温暖化ガス排出ゼロの目標を打ち出したこともあり、脱炭素の機運が高まってきた。
現在、主流のリチウムイオン電池の次の本命と目されているのが全固体電池。内部の電解液を固体にして出力をあげるのが特徴。エネルギー密度が高まり、発火のリスクも低いという利点がある。欧米の自動車メーカーを中心に世界中で車載電池への投資が過熱している。
村田製作所には海外売上高比率が91.6%(21年3月期)というグローバル企業としての誇りがある。そこで、22年3月期中に全固体電池の量産に乗り出す。野洲事業所(滋賀県野洲市)に量産ラインを設置し、イヤホンなどのウエアラブル端末向けに供給する。月産10万個の生産を最終的に予定している。
電池事業は17年、ソニーから買収したことで本格的にスタートを切った。ソニーが1991年、世界で初めてリチウムイオン電池を量産した福島県郡山市の工場は現在、生産子会社・東北村田製作所となっている。リチウムイオン電池技術に主力のMLCCで培った積層技術を加味して大容量化を実現。発火しにくい高性能電池の「フォルテリオン」を生産している。
全固体電池などの新製品の立ち上げは負担になっており、22年3月期に達成する予定だった電池事業の黒字化は先送りする。電子部品の需要は長期的には5Gや電装化が進む自動車用向けを中心に拡大するとみている。次なる成長の柱として、早急に全固体電池を軌道に乗せることが課題である。全固体電池は何といっても脱炭素の切り札となる可能性があるからだ。
(文=編集部)
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