http://www.asyura2.com/21/hasan135/msg/520.html
Tweet |
自動車、電機メーカー…資材の「急激な高騰」で「負け組」になるのはこんな業界 私たちの生活にも影響がある
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87317
2021.09.15 加谷 珪一 現代ビジネス
コロナ後の景気回復期待から、全世界で資材の争奪戦が発生しており、企業はコスト増という問題に直面している。製鉄業界では、自動車の鋼材値上げに踏み切っており、一連の影響は日本の基幹産業にも及んでいる。資材価格の上昇をきっかけとしたコストプッシュ・インフレが進む可能性も取り沙汰されており、一部からは70年代のオイルショックを見るようだとの意見も聞かれる。
最大顧客だった自動車業界向けも値上げ
新型コロナウイルスが依然として猛威を振るう中、ワクチン接種が進む先進諸外国では、コロナ後の景気回復を見据えた動きが活発になっている。コロナ危機によって世界のサプライチェーンは混乱しており、供給はむしろタイトになっている。そうした中で、各社がコロナ後の増産を見越して資材の確保を急いでいるため、あらゆる原材料価格が軒並み値上がりしている状況だ。
鉄の原材料となる鉄鋼石の価格は過去1年で2倍に高騰しており、鉄鋼各社は対応に苦慮している。鋼材は重く、輸送が困難であることから基本的に地産地消が多いが、少なくとも鉄鋼石だけは輸入する必要があるので、全世界的な資源価格の高騰は業界にとってコスト要因となる。原材料価格の上昇と歩調を合わせて鋼材価格も大幅に上がっており、価格を据え置けば各社にとって利益を圧迫する状況となっている。
製鉄は鉄鋼石から新しく鉄を産出する高炉と、鉄のスクラップから再生産する電炉に大別されるが、スクラップ価格も大幅に上がっている。
鋼材をもっとも多く購入しているのは自動車業界で、次いでビルの鉄骨や鉄筋を必要とする建設業界、船舶の製造に用いる造船業界と続く。とりわけ自動車業界は鉄鋼業界にとってお得意様中のお得意様であり、これまでは簡単に値上げとは言えない雰囲気があった。
自動車業界など大口顧客については、長期の取り引を維持する代わりに、割安な価格を提示していたとされるが、鉄鋼各社は物価上昇があまりにも激しいことから、自動者業界に対して値上げを通告し、自動車業界も渋々了承したとされる。それだけ今回のインフレの影響が大きかったことが分かる。
値上がりは今後も継続か
このほか、原油価格は1年で1.6倍、材木の先物価格は一時4倍にまで上昇したほか、半導体の価格も種類によっては2倍以上の価格になっている。半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、コスト上昇に対応するため、8月から最大20%の値上げを実施している。半導体については、コロナ後を見据えたIT投資の強化で全世界的に品不足となっており、価格の引き上げ以前に半導体そのものを入手できないという企業も多い。
現代の自動車はコンピュータのかたまりとなっており、自動車産業は半導体産業にとっても大口顧客となっているが、自動車業界では半導体の確保がままならず、トヨタ自動車をはじめ一部のメーカーでは減産を余儀なくされているのが実状だ。
各社は増産のための投資を強化しているが、ラインが整備されるまでには時間がかかることに加え、IT投資は今後さらに拡大する可能性が高く、半導体不足と価格高騰は当分の間、継続する可能性が高い。原油価格についても短期的にはピークとの見方が出ているものの、長期的に見ても値下がりしないとの見方を示す専門家は多い。その理由は、逆説的ではあるのだが、脱炭素シフトが今後、急ピッチで進むからである。
日本を除く各国では脱炭素政策が想像以上のペースで進んでおり、今後、石油需要は激減すると予想されている。需要が減れば価格は下がりそうなものだがそうではない。石油会社は今後、需要が大幅に減少することを理解しているので、油田に対する新規投資はもはや行わない。既存の設備と資金の範囲で、石油の需要が続く限り、最大の利益を上げようとするので、むしろ価格を引き上げる意向が強くなるのだ。
鉄鋼についても、脱炭素シフトは価格上昇要因となる。高炉は鉄鋼石を石炭(コークス)で還元して鉄を製造するので、大量の二酸化炭素を排出する。欧州では二酸化炭素を出さない製鉄プロセスへの移行が進んでおり、実用化の目処も立ちつつあるが、しばらくの間は先行投資が必要であり、価格は高く推移せざるを得ない。
つまり鉄鋼、石油、半導体という、産業を支える素材や部品のすべてが長期にわたって値上がりするという話であり、場合によってはコストプッシュ・インフレとなりかねない。実際、米国の物価上昇は一連の動きを反映しているともいえる。
オイルショックの影響は業界によって違っていた
こうした事態を前に、一部からは、あらゆる資材価格が上昇し、メーカー各社を困らせた70年代のオイルショックを彷彿させるとの声も聞こえてくる。もちろんオイルショックに比べれば、その影響は少ないだろうが、似たようなメカニズムが働いているのは間違いない。
では70年代のオイルショック当時、各企業はどのような影響を受けたのだろうか。
1973年、OPEC加盟6カ国は1バレルあたり3.01ドルだった原油公示価格を5.15ドルに引き上げ、翌年1月からはさらに11.65ドルに引き上げた。これをきっかけに一次産品のほぼすべてが値上がりし(ウールは約2倍、砂糖は6倍、小麦は6倍、銅は2.5倍など)、全世界的にインフレが進んだ。日本でも72年から80年にかけて消費者物価指数は約2倍に高騰し、「狂乱物価」という言葉が新聞の紙面を飾った。
各企業は対応を迫られたものの、原材料価格が一気に上がってしまってはどうすることもできない。基本的に各社は販売する製品価格に転嫁するしか方法はなかったが、どこまで価格に転嫁できたのかは業界によって大きく違っていた。
容易に価格転嫁できたのは、石油、電力、鉄鋼、化学など主に素材やエネルギーを扱う企業である。これらの業界は総じて増益となっており、価格転嫁が容易だったことが推察される。
電力業界は政府の規制に守られており、コストに一定の利益を載せて利用者に請求できるので(総括原価方式)、価格の転嫁は簡単だ(今回についても電力各社は2カ月連続の値上げを決定している)。素材メーカーは普段は顧客からの値引き圧力が強い業界である一方、顧客企業にしてみればないと困る資材であり、非常時には逆に強い交渉力を発揮する。今回、鉄鋼各社が自動車メーカーに対して値上げを認めさせたのも同じ理屈である。
また、消費財を生産しているメーカーもあまり影響を受けなかった。普段、消費者は値上げに敏感だが、日用品はないと困るのでメーカーが一方的に値上げを決めてしまうと受け入れざるを得ない。オイルショック当時、トイレットペーパーが棚からなくなる程、消費者は混乱していたので、思いのほか値上げはスムーズに実施できた可能性が高い。
銀行や商社はむしろ好調だった
逆に、オイルショックの影響を大きく受けたのは、自動車と電機だった。自動車や家電など耐久消費財は、消費者が毎日、買わなければならない商品ではない。消費者にとっては価格が高くなった分、買い換えサイクルを長くするという選択肢が出てくるので、販売数量が減少する可能性がある。
特に影響が大きかったのは、価格帯が高い自動車であり、オイルショックの発生は営業利益を大きく減少させた。機械は、消費者でなく企業が顧客なので、それなりに価格転嫁と数量維持が可能だったため、何とか利益を維持した格好だ。
商社は総じて利益を拡大させている。今ほど資源への依存度は高くなかったものの、消費関連の品目や鉄鋼などの素材は、仕入れコストの上昇分だけ価格に転嫁できたので、利益を維持できた。銀行も基本的に好調だったといってよい。仕入れ額の増大で資金需要が増えたことに加え、物価上昇に伴って金利も上昇したので収益が拡大した。
当時の状況を総合的に考えると、素材や原材料、消費財を提供する企業は強く、耐久消費財を提供する企業はインフレに弱いことが分かる。銀行は本来、インフレには強い業種だが、今の時代は超低金利なので、金利が動かないと以前のような効果は得られないかもしれない。
要注意なのは、やはり自動車や電機といった業界であり、価格上昇が続くと減益要因になる。一方、消費者にとっては、日用品の価格がさらに上がる可能性があるので注意が必要だ。
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民135掲示板 次へ 前へ
最新投稿・コメント全文リスト コメント投稿はメルマガで即時配信 スレ建て依頼スレ
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民135掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。