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エア・ドゥとソラシドエア、なぜ合併ではなく経営統合?第三極の4社、苦境で再編へ
https://biz-journal.jp/2021/06/post_234085.html
2021.06.24 06:05 文=編集部 Business Journal
ANAのボーイング767-300(「Wikipedia」より/INOUE, Takeshi jp)
北海道が地盤の航空会社エア・ドゥ(AIRDO、札幌市)と九州を拠点とするソラシドエア(宮崎市)は、共同持ち株会社を設立して経営統合する。新型コロナウイルス感染拡大で業績が低迷するなか、生き残りをかけた再編に踏み切る。
2022年10月をめどに両社を傘下にもつ持ち株会社を設立する。両社は筆頭株主の日本政策投資銀行などを引受先とする第三者割当増資による優先株を発行する。今年7月にAIRDOは70億円、ソラシドは25億円を調達する。増資後、両社は資本金を1億円に減資し、税制上は中小企業になる。政投銀は「地域路線の維持」と出資の目的を説明している。持ち株会社の名称や出資比率などは今後詰める。
AIRDOの草野晋社長は5月31日、札幌市で記者会見し、「自助努力には限界がある」と再編を決断した理由を語った。ソラシドの高橋宏輔社長も宮崎市での会見で「厳しい環境を乗り越え、コロナ後に対応するには相当の変革が必要」と強調した。
両社は人材や技術を持ち寄り、経営の効率化を図る。資材の共同調達などにも取り組み、コストの削減を進めることでコロナ禍でも路線網を維持したいと前向きだ。AIRDOは1996年、北海道国際航空として設立。2002年、民事再生法を申請し、全日本空輸(現・ANAホールディングス)の支援を受け05年に経営を立て直し、12年、現社名となった。「北海道の翼」として新千歳−仙台、羽田、神戸など国内10路線で運航している。
筆頭株主は政投銀(持ち株比率32.49%)、2位がANAHD(13.61%)。以下、双日(10.0%)、北洋銀行(5.0%)、石屋製菓(4.25%)、楽天(4.25%)、北海道空港(3.4%)である(20年3月末時点)。
AIRDOの21年3月期決算(単独)は、純損益が121億円の赤字(20年3月期は4億円の黒字)だった。08年3月期以来13年ぶりの赤字決算で、過去最大の最終赤字となった。旅客数の急減で売上高は174億円(同61.8%減)に激減、営業損益は129億円の赤字(同22億円の黒字)。そのため純資産は20年3月期の128億円から22億円に、自己資本比率は28.2%から5.3%に急激に悪化。債務超過に転落するのは時間の問題だった。22年3月期の通期業績予想は「合理的に算定することが困難」として開示しなかった。
一方、ソラシドエアは1997年にパンアジア航空として設立。2015年、現社名に変更した。宮崎−羽田など九州各地と羽田空港を結ぶ路線と、那覇空港を結ぶ沖縄路線を2本柱に国内14路線を運航している。ソラシドの筆頭株主は政投銀(19.24%)。2位は地元の宮崎交通とANAHDが同率(17.03%)。以下、地元の米良電機産業(6.6%)、宮崎銀行(2.77%)などとなっている(20年3月末時点)。
ソラシドの21年3月期決算(単独)は、純損益が76億円の赤字(20年3月期は9億円の黒字)を計上した。売上高にあたる営業収入は202億円(前の期比51.6%減)、営業損益は105億円の赤字(同14億円の黒字)だった。純資産は20年3月期の118億円から57億円に、自己資本比率は37.4%から13.9%へと悪化した。
政投銀が筆頭株主でANAHDと共同運航しているなど、両社は共通点が多い。路線の重複もないことから、「統合は自然な成り行き」との見方が強い。統合前に政投銀が両社に金融支援することについて、航空業界では「統合が支援の条件だった」とみている。政投銀も「統合と支援は引き換えではないが、完全に分けられるものではない」(同行幹部)と認めている。
今回、すぐに合併に踏み込まないのは、競争促進のため新興航空会社に優先配分されている羽田の発着枠が減る恐れがあるからだ。ANAHDの出資比率が20%を超えた場合でも優遇の対象から外れる。こうした事情もあって、ANAHDは追加の支援に踏み込めない。政投銀が支援するのは、こうした事情もあるようだ。
■ANAHDの出資を受けている4社が“合併予備軍”だ
AIRDOとソラシドエアは、北九州が拠点のスターフライヤー(北九州市、東証2部上場)やスカイマークと共に航空自由化の流れを受けて00年前後に新規参入した第1陣だ。羽田空港の発着枠が拡大するなか、ANAや日本航空(JAL)に対抗する第三極を形成したが、競争激化で各社は経営難に陥った。ANAHDの出資を4社とも受け入れ、経営を再構築してきた。だが、コロナの直撃を受け、再び経営が悪化した。
スターフライヤーは06年、北九州空港の開港と同時に就航。北九州空港を拠点とし、北九州−羽田線を中心に福岡などの空港に就航。11年、東証2部に上場した。コロナ禍で減便・運休が相次ぎ、20年12月末の自己資本比率は0.4%まで落ち込んだ。
債務超過転落を避けるため、21年3月、議決権のない優先株を発行。筆頭株主のANAHDが15億円、投資ファンドのアドバンテッジアドバイザーズ(東京・港区)が55億円、安川電機やTOTOなど福岡県に本社を置く12社が計10億円分を引き受けた。これとは別にアドバンテッジに新株予約権を割り当て、最大30億円をアドバンテッジから調達した。
北九州市は当初、増資してスターフライヤーを第三セクターとする案を検討したが、最大110億円の増資が決まったため、補助金による支援に切り替えた。北九州市の10億円の補助額は地場企業による増資額と同水準である。
スターフライヤーの21年3月期の決算(単独)は売上高が182億円(20年3月期比54.7%減)、最終損益は100億円の赤字(前の期は4億円の赤字)。上場来、最大の赤字額となった。20年12月末時点で0.4%に悪化した自己資本比率は大幅な増資を実施した結果、19.1%にまで改善。当面の危機を乗り切った。
3月期末時点のスターフライヤーの筆頭株主はANAHD(17.96%)。以下、TOTO(4.89%)、ゴルフライフ(3.63%)、安川電機(3.30%)と地場企業が続く。ANAHDが16.50%出資(20年9月末時点)するスカイマークでは佐山展生会長が退任した。佐山氏はスカイマークに50.1%を出資する投資ファンド、インテグラルの代表からも退いた。
佐山氏は15年、経営破綻したスカイマークの再建を陣頭指揮し、業績を回復させたが、やはり新型コロナ禍で「20年までの再上場」という目標を果たせなかった。再上場の申請を19年10月に行ったが、20年4月にこれを取り下げたままだ。
スカイマークは6月末に電子公告で決算を開示する。旅行需要の低迷で2期連続の赤字(20年3月期は12億円の赤字)となったのは確実だ。昨年3月末で純資産は216億円、自己資本比率は約30%あったが、赤字が膨らめば自己資本比率は低下する。ANAHDや政投銀、三井住友銀行といった株主と追加支援で、どう折り合いをつけるかが焦点だ。
AIRDOとソラシドエアの経営統合は国内航空再編の序幕ということだ。「協力範囲が限られており、効果は限定的」(航空業界を担当するアナリスト)との厳しい指摘がある。
将来的にはANAHDの勢力圏に入っている新興4社の大同団結へと発展する可能性を残しつつ“離陸”することになる。
ANAHDは経営の軸足を格安航空会社(LCC)に移す。傘下のANAとLCCのピーチ・アビエーション(大阪府田尻町)が8月から共同運航(コードシェア)を実施する。成田空港と札幌、福岡、那覇を結ぶ5路線で開始する。いずれもピーチが小型機「エアバスA320」を使用して運航する便の座席をANA便として販売する。
ANAはANAHDの出資先のAIRDOやソラシドエアなど地方を拠点とする新興航空会社と共同運航を実施しているが、国内LCCと共同運航を行うのは初めてだ。今後、対象路線を拡大し、基幹路線はANA、地方路線はLCCとの共同運航を行い、棲み分けることになる。
(文=編集部)
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