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トヨタは笑いが止まらない?アルファードの“爆売れ”が続く理由と他車を圧倒する強みとは
https://biz-journal.jp/2021/06/post_229516.html
2021.06.01 18:10 文=小林敦志/フリー編集記者 Business Journal
「トヨタ アルファード | トヨタ自動車WEBサイト」より
“年間販売台数10万6579台”、これはトヨタ「ルーミー」、ホンダ「フィット」、日産「ノート」よりも多く、しかもコロナ禍真っ只中となる2020事業年度締め(2020年4月から2021年3月)での、「アルファード」の年間販売台数である。月販平均台数は約8800台。これが2020事業年度締めでの下半期(2020年10月から2021年3月)の月販平均台数では、1万台強となる。
支払い総額で600万円も珍しくないアルファードが年間で10万台強も売れるのだから、トヨタ系ディーラーはまさに“笑いが止まらない”状態となっていることだろう。アルファードはもともと販売現場では“高収益車種”などとも呼ばれ、販売しただけでも、ディーラー利益やセールスマンが得られるセールスマージンは高いものとなっていた。
さらに、購入者のほとんどがローン、しかも支払い総額600万円ほどになることもありフルローンを組んで購入することが多く、ディーラーが提携している信販会社から得られるバックマージンもハンパではなく、まさに“ボロ儲け”できるクルマなのである。
「今もなお、新車販売は好調に推移しております。会社からはアルファードをメインに、ハリアーなど、ほかも含めて高収益車種を積極的に売るようにと指示が出ております」とは現場のセールスマン。
販売現場で聞くと半導体不足問題によるものとしているが、納期がやや遅れ気味となっているのは気になるが、4月末に改良を行って以降も好調な販売が続いているようだ。
改良後も、その前から続いていた大幅値引きは引き締められることはなく、アベレージで50万円引きは獲得できる勢いにあり、場合によっては70万円引きも十分期待できる状況で販売されているので、買い得感は改良後も圧倒的に高く、アルファードの“爆売れ”状況が終焉を迎えることは当分なさそうである。
■トヨタの全店全車種併売化も追い風に
2020年5月から実施されたトヨタ系ディーラー(トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店)全店舗での全車種(一部を除く)併売化により、トヨペットの専売から全店扱いになったことも、アルファードの販売台数を押し上げたのは間違いない。
新型コロナウイルス感染拡大が表面化するかしないかの頃に生産ラインを増設したとのことで、これにより納期が大幅に短縮(一時期、納車待ち半年も当たり前だった)されたことも大きく貢献しているようである。
アルファードのようによく売れる高額車を扱った経験の少ないカローラ店では、当初は“腫れ物に触る”ように売っていたのだが、セールスマン個々がコツをつかむようになると、水を得た魚のように売りまくり始めた。ちょうど、2020事業年度締め上半期末(2020年9月)あたりから、一気に月販1万台ペースとなった頃の話である。
トヨタ店でも、「クラウン」ユーザーから「アルファードに乗りたい」というリクエストはあったのだが、全店併売化まではトヨペット店の専売だったので、クラウンに乗り継いでもらったりしていた。しかし、アルファードを扱うようになってからは積極的にアルファードを売るようになった。
兄弟車の「ヴェルファイア」は4月末の改良でモノグレード(単一グレード)構成となったのだが(カタログはアルファードと一緒になった)、もともと専売していたネッツ店に、改良後「ヴェルファイアを見に来た」といっても、「なんでアルファードじゃないんですか?」といったことをセールスマンが聞いてくる始末であり、今は“オールトヨタ”でアルファードの積極販売が行われているといっていいだろう。
■圧倒的に高いリセールバリュー
押しが強く、ひたすらゴージャスイメージを強調した内外装といったクルマ自体の魅力もあるが、今の人気はそこを超越して、“金融資産”のような面も意識してアルファードを選ぶ人も目立ってきている。
その背景にあるのが、圧倒的に高いリセールバリューである。トヨタ系ディーラーで、残価設定ローンを5年払いで組んだとする。そして、5年後の支払い最終回分として、据え置かれる残価相当額を算出するための残価率は最大49%となっている。トヨタでは残価率について若干の“幅”が持たされており、利用者が任意に選択することができる。
たいていセールスマンはアルファード以外の車種では「残価率は少し抑え気味のほうがいいですよ」とアドバイスするのだが、アルファードに関しては「迷うことなくマックスレベルでいきましょう」となるようだ。
そもそも、残価率は“安全圏内(設定残価割れしないように実際の相場よりやや低めに設定される)”で設定されるのが一般的であり、中古車相場を意識した下取り査定額や買い取り査定額などは、アルファード以外の主要トヨタ車であっても、ほぼ間違いなく設定した残価相当額を超えることになる。
たとえば、アルファードの特別仕様車となるSタイプゴールドIIにおいて5年払いで残価設定ローンを組むと、支払い最終回分として据え置かれる残価相当額は200万円になる。つまり、仮に支払い総額で650万円になったとすると、現金一括払いなら650万円を用意しなければならないが、残価設定ローンでは支払い最終回分の精算は当該車両の返却、またはアルファードならトヨタ車への乗り換えをすれば、現金での精算は必要なくなる。
金利負担分は差し引いて考えなければならないが、残価設定ローンでは200万円近くの現金をセーブできるので、単純に考えれば本来の支払い総額は650万円なのだが、450万円で購入できると言えるだろう。
ただ、残存価値が高いことは“諸刃の剣”であるともいえよう。支払いを続けても残債はなかなか減らない。そのなかで、支払い途中でダメージの大きい事故を起こして廃車となれば、信販会社の対応次第だが、事故車両自体は解体処理ができても、残債があるので廃車手続きはできずにナンバープレートだけが残ったまま、ローンを支払い続けるという事態も現実に起こっている。セールスマンの多くは、残価設定ローンの利用に際し、少しでもリスクヘッジができるとして車両保険の加入を勧めてくるので、ぜひ検討してもらいたい。
■伝説的逸話と“アルファード転がし”とは?
また、残価設定ローンでは再ローンを組んでそのまま乗り続けることも可能となっている。ただ、延長期間は2年までとなり、前出のアルファードのケースでは支払い最終回分200万円を元金として再ローンを組んで返済を続けようとすると、月々9万円ほどになるとのことなので、現実的とはいえないのである。
「残価設定ローンは完済するな」、これは新車販売現場の合言葉のようになっている。設定される残価率が安全圏内のものであるとは前述したが、採算分岐点を読み間違うことがなければ、支払い途中で残債があるなかで下取り査定をすると、下取り査定額で残債整理ができるだけでなく“お釣り”が残り、それを次の新車購入資金に回せることもある。全般的にリセールバリューが良いトヨタ車では、完済前に下取り査定での残債整理をすることの旨味が大きいのだが、アルファードは特に「完済するな」となるらしい。
わかりやすく言えば、アルファードの場合、残価設定ローンを利用して購入した場合は、設定した残価相当額にいくら上乗せして売却するか、といった話が当たり前となっているようだ。コロナ禍前で海外への中古車輸出も活発だった頃は、「下取り査定をしたら新車販売価格より高くなった」とか、「中古車で買うより、新車で買ったほうが安かった」などの“伝説”のような話をいくつか聞いた。
また、“アルファード転がし”も積極的に行われていた。決まった走行距離内に押さえ、決められたグレードとボディカラー(パールホワイト系またはブラック)などのアルファードを半年おきなど短いスパンで新車に入れ換え続けることを“アルファード転がし”と呼んでいるのだが、転売を繰り返すたびに儲かっていくというのである。
もともとミニバン自体がリセールバリューは高い傾向があり、かなりの低年式車でもしっかりと価値が残るとされているなか、アルファードは他メーカーにライバルらしいライバルがいない。また、東南アジアなどではわざわざ「日本仕様がほしい」という富裕層も多く、日本からの中古車として輸出される車両も人気が高い。圧倒的なブランドステイタスが築き上げられており、売る側、買う側双方にとって、旨味の大きいクルマとなったのである。
購入するアルファードの価値の上げ方(どんなオプションをつけたらいいか)や、より儲かる売却タイミングなど“おいしい話”については、やはり専売車種として長い間取り扱ってきた経験のあるトヨペット店のセールスマンが、さまざまなノウハウを持っていることになる。
販売現場で聞くと、全体的に残価設定ローンの利用率が上がるにつれ、新車購入時に残価率などリセールバリューを気にするお客が目立ってきたとのことである。また、アルファードはモデルチェンジ直前がかなりの“売り時”になるとのことだが、そのあたりの事情については次回に詳述したい。
(文=小林敦志/フリー編集記者)
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