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デジタル合成技術はすべて偽物、人の目を騙しているだけだ 井筒和幸の「怒怒哀楽」劇場
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/288849
2021/05/08 日刊ゲンダイ
思えば、もう50年前からだ。ミニコミ誌、地方新聞や週刊誌に自分が生きてる証しとして、映画感想コラムを日課のように途絶えることなく書き続けてきた。何を見てどう感じたのかだけではない。その一本の映画をなぜ選び、それが自分の人生にどう左右したのか、どう心を奪われて、それが自分の思想や行動にどう影響したかを書き届けてきた。それは批評でも研究でもなく、映画体験史だった。
今年3月からは、我が「無頼」で取材を受けたことが縁で、「月刊神戸っ子・KOBECCO」という1961年創刊の老舗のタウン誌でも、映画コラムを書かせてもらっている。編集部さんが「監督がいつの時代にどんな映画を見てきたのか、池波正太郎風に書いてもらえたら幸いです。今、家でネット配信の時代だし、読者に作品紹介していただけたら」と。
自分の体験史が他人をどう刺激するか、池波正太郎と映画の好みは合わないだろうが、こっちの気の向くまま、しばらくつづらせてもらうつもりでいる(阪神地区に行った折にはどこかの店で、旅のお供にでもそのタウン誌を見つけてみて下さい)。
「コッポラ監督の61年のデビュー作、『グラマー西部を荒らす』ってピンク映画もマヌケな作り方だけどオモロいよ。アメリカでVHS買ってきたから見なよ。ついでにヤツの『ディメンシャ13』ってホラーも安い作りだけど面白い」と昔は先輩から教えてもらったが、以来、人から「あれは見ないとあかんよ」と薦められる作品は皆無になった。度肝を抜かれてしばらく映画館の席を立てないものが消えてしまって久しい。
ありもしない物語をつづっただけの三文小説も氾濫中だが、映画こそそんな嘘らしいミステリー本か漫画の原作ものばかりだから、リアリズムに欠けた登場人物の二番煎じにはついていけないし、“どこにおるんだ? こんな男”“嘘だろうこんな話!”で終わるのが、今の世界中の映画たちの実情だろう。
スパイアクション物はアトラクションだし、ミステリー物はコントだし、宇宙物もおとぎ話ばかりで、体感するはずの天体空間のリアルな恐怖感などまったくない画面ばかりだ。
デジタル合成技術は何でも本物みたいに見せられるようになった。でも、キーボードを叩いて描くデジタルな流れ星も、デジタルな嵐の大海もデジタルな森もお花畑も、すべて偽物で人の目を騙している。車の窓外に流れる景色もデジタル合成画像が多い。車を運転できない俳優が増えたし、俳優事務所もやらせないからだ。ますます実写撮影がやりにくくなっている。
先日、鬼才サム・ペキンパー監督が70年代初めに撮った、メキシコの田舎を舞台にした流れ者の残酷な話、「ガルシアの首」に久しぶりに見入ってしまった。もちろん、映画館じゃなく、自宅のケーブルテレビでだ。テレビ画面でしか見られないのは情けないが、この時代の空気感まるごとのリアリズム映画は、デジタル合成に騙され慣れた者の心をも奪ってくれるはずだ。
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井筒和幸 映画監督
1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。
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