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外食大手、営業時短要請に“応じない”動き広まる…「雇用守れない」「外食産業崩壊」
https://biz-journal.jp/2021/01/post_203366.html
2021.01.20 06:00 文=編集部 Business Journal
「Getty images」より
「また、ランチがどうのこうのと言われましてね、ふざけんなよと」――。低価格のイタリアンレストラン大手のサイゼリヤ(東証1部上場)の堀埜一成社長は1月13日の決算会見で怒りを露わにした。
西村康稔経済再生相は前日(1月12日)、緊急事態宣言下では「昼間も含めて外出自粛をお願いしている」と説明、「ランチはリスクが低いわけではない」と指摘し、改めて昼間の外出自粛を呼びかけた。午後8時までの時短営業の要請に続き、ランチタイムの会食を自粛するよう求めたことに、堀埜社長の不満が爆発した。
東京都内の大手外食チェーン店が時短協力金の対象外であることに関して、「(大手が)外食業界に与える影響は大きい。恐ろしいのは大手がつぶれること。多くの人が働く場所を奪ってはいけない」と述べた。
サイゼリヤが1月13日に発表した2020年9〜11月期の連結決算の純利益が前年同期比81%減の2億5000万円となった。それでも、かろうじて3四半期ぶりに黒字を確保するという窮状が続いている。
■居酒屋大手、時短要請を無視する店も
「夜が厳しいならランチに手を出せばいい、というほど甘くない。今回の緊急事態宣言中、月5〜6億円の赤字は覚悟している。(時短営業の要請を)順守させていただくが、このままでは日本の外食産業が崩壊すると危惧している」
居酒屋大手ワタミ(東証1部上場)の渡邉美樹会長は1月8日の会見で危機感を滲ませた。この日、首都圏の1都3県に緊急事態宣言が発令された。2020年4月とは異なり、飲食を通じての感染リスクの低減に軸足が置かれ、飲食店は2月7日まで営業時間を短縮するよう要請された。その後、大阪、愛知、福岡など計11都府県に対象地域が拡大した。酒類の提供は19時までという制限があるため、夜が稼ぎ時の居酒屋などは再度、苦渋の決断を迫られることとなった。
ワタミは1都3県にある直営店100店のうち83店の休業に踏み切った。「ミライザカ」や「鳥メロ」など居酒屋が対象で、焼肉店などの業態は午後8時までの営業とする。営業を続けると、かえって赤字が大きくなると判断した店を軒並み閉めたわけだ。
居酒屋は「12月が1年で最大の稼ぎ時」(関係者)だが、コロナの第3波の到来で忘年会が激減。ワタミの12月の売上高は前年同月比59.1%減と大きく落ち込んだ。休業などに伴い正社員約200人を食品スーパーに一時出向させたり、弁当などの宅配事業に配置転換したりして雇用を維持する。
今回の緊急事態宣言では、政府の時短要請に応じた飲食店への協力金を1日最大6万円支給することになった。渡邉会長は「店舗の立地や規模によって必要な支援金の額は異なる。一律はあまりにも乱暴だ。もっと丁寧な補償ができないのか、問題提起したい」と踏み込んだ発言をした。
「白木屋」や「笑笑」などを展開する居酒屋チェーンのモンテローザ(東京都武蔵野市、非上場)は、東京都内にある337店の約2割にあたる61店を順次閉店する。2度目の緊急事態宣言を受け、時短要請に応じていたが、都が求める午後8時までの営業では、継続は困難として閉店を決めた。
串カツ専門店チェーンの串カツ田中ホールディングス(東証1部上場)は1都3県の直営84店に加えて関西圏の25店を全面休業した。昨年4月の緊急事態宣言を機に持ち帰りや宅配の取り組みを強化してきた。今回、「営業時間が午後8時まででは需要は見込めない。宅配や持ち帰りも(売上は)限られる」とみて休業を決めた。
国や都の時短要請に叛旗を翻した外食チェーンも多々ある。「博多劇場」など居酒屋を展開する一家ダイニングプロジェクト(東証1部上場)は、1都3県にある計71店の営業時間を一旦短縮したが、9日から大半の店で午後8時以降も営業している。
武長太郎社長は1月12日、自社のウェブサイトに「営業を行わない限り300名以上の社員と、800名を超えるアルバイトメンバーの雇用を守ることはもちろん、パートナー企業や、飲食店経営に携わるサプライヤーを守ることができません。これらの雇用を守ることも、我々の使命だと考えています」と書き込んだ。
時短要請に応じた場合に支給される協力金の不備が原因で国や都の要請に叛旗を翻したということのようだ。都は支給対象を中小企業(資本金5000万円以下または従業員50人以下)や個人事業主に限定しており、大手は対象外だ。神奈川、埼玉、千葉の各県は大手企業も協力金の対象なのに東京都はそうではない。都の措置に武長社長は「不公平感を覚えました」と不満を表明した。東京都は「東京は他県に比べてチェーンの数が多いため、財源の観点から、大手を対象外とした」と説明している。
都内を中心に「カフェ ラ・ボエム」など和食・洋食のダイニングレストランを運営するグローバルダイニング(東証2部上場)は首都圏の1都3県にある30店で時短要請に応じていない。長谷川耕造社長は自社サイトに「今の行政からの協力金やサポートでは時短要請に応じられません」と言い切り、通常通り深夜までの営業を継続すると宣言した。
東京都の小池百合子知事は1月18日、大手企業も協力金の対象とするよう検討を始めたことを明らかにした。数日中に結論を出すとしている。大手飲食チェーンは昨年4月の緊急事態宣言の際にはそろって時短要請に応じた。しかし、今回、叛旗を翻すところが多数出たのは、それだけ経営が厳しくなっているということだ。
ワタミの渡邉会長は「銀行次第だと考える」と言い、外食企業は存亡の危機に立たされており、銀行の腹ひとつでジ・エンドになるかどうかが決まるというシビアな見方をしている。2021年は大手外食の倒産が続出するかもしれない。
(文=編集部)
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