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(回答先: フロイトの罪〜セクシャル・アビューズ〜 投稿者 中川隆 日時 2021 年 6 月 25 日 10:24:47)
1896年、ジクムント・フロイトは、論文『ヒステリー病因論』の中で、六人の男性患者と十二人の婦人患者、計十八のヒステリー症例を紹介、
そしてその全ての症例が抑圧された性的暴行の結果であることを明らかにします。
これらの研究の結果、フロイトは、ヒステリー発病の裏には単一ないし複数の時期尚早な性体験があり、しかもそれは子ども時代でももっとも早い時期に体験されている、と結論付けます。
要するに、ヒステリー発病の原因は幼少時の性的虐待が原因だと言っている訳です。
当時、ヒステリー患者は下層民よりも特権階級、つまり貴族階級の方により多く発症していました。
この点について、フロイトは次のように説明します。
『社会の上層にある人は、教養、ならびにしばしば知的な面だけに偏って発達した人格のために精神的外傷を防衛するが大きい。
ところがまさにこの精神的外傷の防衛(抑圧、記憶内容からの感情の分離、理想化による否認など)こそノイローゼを生む原因なのだ。』
(アリス・ミラー 『禁じられた知』P159より)
この解釈は、当時のフロイトの立場の微妙さを暗示させます。
ヒステリー発症が当時の特権階級に多いと言う事実、それにフロイトの結論を重ね合わせますと、幼児に対する性的虐待は、下層民よりも貴族社会の中で多く起こっている事になります。
フロイトにしてもそうは言えなかったと言う事情があるのでしょう。
また、彼自身の常識が、そのような事実を拒否していたという面もあるでしょう。
とにかく、フロイトはヒステリー発症の原因を幼少時の性的虐待による精神的外傷そのものではなく、精神的外傷の防衛によるものだと考えた訳です。
従って、その治療法は、患者の記憶の奥に抑圧された虐待の記憶を自覚させ、それと向き合う勇気を起こさせる事です。
精神的外傷を消す事は出来ませんが、防衛の機能を働かす必要が無くなった時、症状に悩まされる事は無くなります。
この、初期のフロイトの理論を、誘惑理論と言うそうです。
この言葉も、後には別のニュアンスの言葉に変化していくようですが、当時の意味で言うならば、
患者の神経症は、幼少時に受けた、大人からの誘惑により受けた精神的外傷の結果である、という事です。
ですが、フロイトのこの理論は世の中に受け入れられませんでした。
先ず第一に、ヒステリー症状の原因が性的虐待にあるとすれば、ヒステリー患者の数だけ、いや、発症に至らないケースも含めればそれ以上の性的虐待が現に行われている事になります。
大人が、あるいは年長の者が幼児を慰み物にするという非道な行いの例がそんなに多いとは、当時の常識では考えられなかったのです。
もう一つ、問題があります。
フロイトがどのように言い訳しようと、彼の理論に従えば、幼児の性的虐待は下層民の間よりも特権階級の間で多く行われているというニュアンスは拭い去れません。
そして、フロイトの著作の読者の殆どは、その特権階級の人間達なのです。
フロイトの誘惑理論を葬り去ってしまったのは当時の社会のタブーに触れたからです。
そして、そのようなタブーを支えるものとして、キリスト教的な教育があるのです。
フロイト自身も当時の教育を受け、そして自らのトラウマに自分自身がとらわれていました。
貴族達の攻撃に反論しながら、貴族達と同じ疑問を彼自身が感じていたという事です。
そして、彼自身の両親や子ども時代を理想化したいという願望も、彼の中にあったという事です。
1897年9月、フロイトは誘惑理論に代わる、衝動理論を発表します。
一言で言えば、子どもの深層心理の奥に潜む性的な記憶は現実に起こった性的虐待の記憶ではなく、自らの幼児性欲が引き起こしたイメージだと解釈する方向に転換してしまったのです。
エディプス・コンプレックス、口唇期性欲、肛門期性欲、性器期性欲、様々な概念が用意されました。
全ては、患者の中の記憶が現実の性的虐待の記憶ではなく、自らの幼児性欲の衝動が引き起こした幻想であると説明する為のものです。
それでも、フロイト自身は誘惑理論を全く捨ててしまった訳ではないようです。
何とか、衝動理論と誘惑理論の接点を見出そうという意欲は持っていたようです。
しかし、フロイトの弟子達にとって、フロイトの精神分析学イコール衝動理論なのでしょう。
フロイトは、誘惑理論から衝動理論へと移る時、幼児の性的虐待という個別的な体験を、人間が誰しも幼児期に持つ性的な衝動として普遍化してしまいました。
それで、性的虐待以外の原因で起こる様々な心理現象も、全て性欲に結び付けざるを得ないという矛盾が生じてしまったのでしょう。
アリス・ミラーによれば、フロイトの初期の精神分析治療の驚くべき効果は、彼自身が自分の誘惑理論に疑問を感じ始めたと思われる頃から失われてしまったと言う事です。
初期のフロイトが行っている、患者をありのままに受容し、過去の虐待の記憶を解放する事によって患者を治療していくやり方です。
「あなたは悪くない。あなたは犠牲者だったのだ。」
と認めていくやり方です。
過誤記憶
精神分析の創成期にフロイトは、ヒステリー患者の心的現実(mental reality)に着目したが、やがて近親姦の記憶などを訴えるクライエントが彼の予想をはるかに上回って増えてきたために、「こんなに近親姦が多いわけがない」とフロイトの中で理論の撤退が起こり、かつて彼が心的現実と呼んだものは幻想(fantasy)へと変化していった。
このプロセスと似たようなことが、1980年代以降のアメリカにおいて繰り返される。
家庭内暴力や近親姦の被害を訴えるクライエントたちに、一部のカウンセラーがアミタールなどの催眠系薬物を使用する催眠療法である回復記憶療法(RMT:Recovered Memory Therapy)を用いて、無意識の中から抑圧された記憶(Repressed Memory)を引き出し、意識の上に回復された記憶(Recovered Memory)として置きなおすことによって諸症状を治療しようと試みた。
1988年、エレン・バスとローラ・デイビスの共著『The Courage to Heal』(邦題『生きる勇気と癒す力』)のなかで、女性の原因不明の鬱は幼少期に受けた性的虐待の記憶を抑圧しているからである可能性が高いから、虐待されたと感じているなら虐待されていると主張するべきである、ということが述べられた。
これが発端となって、アメリカでは多くの女性クライエントが、引き出された記憶をもとに、加害者である家族(近親姦をおこなった父など)を被告に相手どって法廷闘争をくりひろげるようになる。
『Trauma and Recovery』(邦題『心的外傷と回復』)の著者として名高い精神科医ジュディス・ハーマン(Judith Herman)なども原告側の立場に立ったが、司法の場は彼女たちに冷たいとあるていど予見していた。
これに対して被告側の弁護に立った認知心理学者エリザベス・ロフタス(Elizabeth Loftus)が、「ショッピングモールの迷子」という実験をおこない、クライエントの訴える近親姦の記憶は、セラピストやカウンセラーが捏造した事件をクライエントに植え込んだものであると主張し、原告たちの一連の訴えを偽記憶症候群(にせきおくしょうこうぐん:FMS:False Memory Syndrome)と名づけた。
また、虐待加害者として訴えられた親たちも、このロフタスと連動して、症候群の名前に基づいて1992年、偽記憶症候群財団(FMSF:False Memory Syndrome Foundation)を設立し、財源的にも裁判を有利に闘っていく体勢をととのえた。
この実験に基づいて、家族という密室で起こった虐待などの犯罪を、司法の場で追及しようとした原告たちは敗訴し、原告たちから抑圧された記憶を引き出したセラピストやカウンセラーは莫大な賠償金を払わされることになった。
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その後の近親相姦の調査でフロイトが女性の妄想だと考えていた行為がすべて現実に行われていた近親相姦の記憶だったとわかってきました。
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