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イラクの大量破壊兵器廃棄に「最後通告」を突き付ける米英などの国連安保理決議修正案を支持した日本の対応は、「イラク開戦」で腹をくくった意味を持つ。国際協調と日米同盟の双方を追求してきた政府にとり、国際協調とは「国連の旗」ではなく、イラク攻撃を構える「米国の旗」の下の結集だったことが、浮き彫りになった。節目となる今回の「武力行使支持」表明だが、反戦の声は収まる気配はなく、外交姿勢と世論の溝はさらに拡大しかねない。
【高安厚至、白戸圭一】
■崩れた勝算
「米国が新決議なしの攻撃に踏み切っても、日本は支持するという決意表明だ」。8日の川口順子外相の談話に、17日を大量破壊兵器廃棄の期限とする決議修正案を「支持する」と明記したことについて、外務省幹部はこう強調した。
外務省は8日午前、竹内行夫事務次官が関係局長ら幹部を緊急招集し、外相談話の文案を検討した。従来の米英決議案への支持に加え、修正案への「支持」も打ち出すことで一致。その後、首相官邸に持ち込み、官邸サイドも了解した。
政府はこれまで、攻撃反対の世論を説得したり原油を依存する中東諸国への配慮を示すため、攻撃支持の「大義」をはっきりさせようと、「国際協調イコール新決議採択」を米に求めてきた。この背景には「仏露は最後は米国と妥協し、決議は採択される」との「勝算」があった。
ところが仏露の対米姿勢は予想以上に固く、その後の反戦世論も大きな「誤算」だった。「北朝鮮問題がどうこうという前に、覚悟を決めて同盟の船に乗らなければ、同盟と国際協調の間で股裂きとなる」(外務省筋)という状況に追い込まれた格好になった。
91年の湾岸戦争は、武力行使支持が「日米同盟」と「国際協調」の二つを両立させる道だった。今回、いずれか一方を選ぶという「踏み絵」を踏まされた日本。外務省幹部の一人は「決議案採択後に日本が支持するというのでは『あんた誰だ』と言われる」と日米同盟重視を鮮明にする。だが、省内には「イラク攻撃は中東の不安定化要因になる」として「米追従」を疑問視する声もある。
■「大義」弱まり
決議抜きのイラク攻撃も覚悟――。政府にとって最悪のシナリオは現実味を帯びてきた。国際協調のシンボルである国連の後ろ盾を失ったままの「開戦」に備え、どういう論理立てで「攻撃支持」を打ち出すか、外務省は神経をとがらせ始めている。
小泉純一郎首相はこれまで、イラク攻撃支持の根拠を「国際協調」「日米同盟」の2本柱に求めてきた。「決議なし」では、攻撃支持の論拠が一気に弱まるのは避けられず、「日米同盟」だけで世論や国際社会を説得する困難を強いられるからだった。
このため首相は、日露戦争後の日比谷焼き討ちや60年の日米安保反対デモまで引き合いに出し、「世論に従って政治をすると間違う場合もある」(6日の参院予算委)と正面突破の構えもみせてきた。しかし、国民を説得する手だては見当たらないのが実情だ。
外務省が検討しているのは(1)国際社会の平和と安全に責任を持つ国連安保理が最終判断しなかった(2)日本は茂木敏充副外相のイラク派遣の結果、イラクは大量破壊兵器破棄の意思がないと判断した(3)攻撃は米英単独ではなく、「国際社会対イラク」は保たれている(4)大量破壊兵器は日本自身の問題であり国際社会の一員として協力が必要――というものだが、苦しい論法にも映る。
しかも、これに成算があるわけではない。政府はパウエル米国務長官の「新証拠開示」を機に2月6日以降、早々と攻撃容認決議支持を表明したが、逆に国際社会では突出した。「これが世論の反発の一因になった」(自民党幹部)との見方もあり、世論対策の立て直しは容易ではない。
米英が攻撃を強行すれば、開戦後の対応にも影響する。「戦後」の支援策の柱に据えたい復興支援新法の国会提出を困難視する声も聞かれる。北朝鮮の緊迫化もにらんで、今国会での成立を目指す有事関連法案もおぼつかなくなる。ある自民党幹部は「新決議なしの支持は、日本が、単独行動主義を強める米国の戦争に加担していると見られる」と話した。
[毎日新聞3月9日] ( 2003-03-09-00:11 )