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http://www.hotwired.co.jp/news/news/20030317201.html
イラクの危険地帯からウェブ報道を試みるフリー記者
Mark Baard
2003年3月14日 2:00am PT カメラマン用ベストを身につけ、衛星電話を携えたクリストファー・オールブリトン氏(写真)は、飛び交う砲弾の似つかわしいタイプにはあまり見えない。だが、ウェブで初めて単独での戦場取材を敢行するだけの度胸はあるようだ。
もと『ニューヨーク・デイリーニュース』紙記者で、イーストビレッジに住むオールブリトン氏は、イラクへの単独取材旅行の一環として来月、自身のウェブログサイト『バック・トゥ・イラク2.0』に直接記事を送ることを計画している。
オールブリトン氏は、近々勃発しそうな米イラク戦争が、イラク北部のクルド人自治区の人々に与える人道的影響を報道したいと話す。クルド人自治区は、米国が定めたイラク北部の飛行禁止区域に含まれており、攻撃対象からははずれている。
大手報道機関の力で「送り込まれる」記者たちは、あらかじめ用意されたSUV車『ハマー』に揺られ、着いた先々で見たものを主要メディアで報道するが、かたやオールブリトン氏はヒッチハイクをしポケットマネーを使って、バグダッドを除けばイラク国内で最も危険な場所と化すおそれのある地域であるクルド人自治区で取材を敢行するつもりだ。
米国が侵攻を開始すれば、イラクのサダム・フセイン大統領は残存する核兵器、生物兵器、化学兵器をクルド人自治区に投入しようとするかもしれない。一方、人権擁護団体『ヒューマンライツ・ウォッチ』が先週発表した報告書によれば、米国がイラク政府を倒しにかかっている間に、隣のトルコ政府がクルド人自治区への侵攻を試みる可能性もあるという。フセイン政権はクルド人を目の敵にしているが、トルコもそれに負けないほど強い敵意をクルド人に抱いているうえ、クルド人の都市キルクークとモスル周辺の原油資源が豊富な地域をねらってもいるのだ。
オールブリトン氏は、もし化学兵器攻撃に遭ったらガスマスクをかぶり、元イスラエル兵にもらったアトロピン[神経ガスの解毒剤]を自分で注射するつもりだと語る。また、トルコがクルド人自治区に侵入してきた場合の避難計画も考えてあるという。
それより、爆弾や弾丸によってインターネット接続が絶たれた場合のほうが、オールブリトン氏にとっては心配だ。
「インターネット・カフェは(イラクのクルド人自治区には)山ほどある。しかも検閲されていない。だが、それも状況によってどうなるかわからない」とオールブリトン氏。
そこで同氏は旅行中、衛星電話を持ち歩くつもりだという。衛星電話をノートパソコンにつないで、インターネットへの接続と自身のサイトの更新を行なうのだ。また、今使っているノートパソコンをもっと丈夫なものに取り換えたいとも考えている。「去年の夏は、米アップルコンピュータ社の『パワーブック』を持って(クルド人地区へ)行った。だが、今度の大旅行を乗り切るには、少々ガタが来ていると思う」とオールブリトン氏は述べた。
オールブリトン氏は昨夏にもイラク北部を訪れている。そのときはトルコとシリアを経由し、シリアのビザでイラクのクルド人自治区に入ったが、滞在したのは1週間だけだった。しかし今回の取材では、1ヵ月の滞在を予定している。
「今回、ビザと現金は4月にならないと送られてこない。攻撃開始に間に合わないことを最初はとても悔やんだが、今ではその後の占領のニュースも同じくらい興味深いものになると考えている」とオールブリトン氏。
また旅費については、米ペイパル社のオンライン決済システムや米アマゾン・コム社の「クリックで寄付」できるシステムを介し、寄付金を募ることで調達している。すでに60人のウェブログ訪問者から1800ドルを超える寄付が集まった。オールブリトン氏はその返礼として、特報と写真をウェブログに掲載する前日に寄付してくれた人々に送ることにしている。
「それを見て取材の提案などを電子メールで送ってくれれば、寄付してくれた人たちが私を派遣するといった形にもなる。だが、行動はあくまで無理でない範囲でだ。死ぬ気はない」とオールブリトン氏。
オールブリトン氏は、このオンライン経由の寄付と貯金とを合わせて、旅費と必要経費に充てる計画だ。「全部で約1万ドルの予算を組んでいる」
1万ドルというと、たんなる旅行者が持つには大金に思えるかもしれないが、戦場特派員の経験豊富な人物に言わせると、戦地で活動する記者にとっては少なすぎる額だという。
「紛争地域を取材するにはたくさんの――本当にたくさんの――現金が必要だ。飛行機、車、運転手、通訳、すべて現金で支払わなければならないし、避難しなければならないときにも十分な費用が必要になる」と語るのは、コロンビア大学ジャーナリズム大学院で地域紛争の報道について教えるジュディス・マトロフ氏。
マトロフ氏はこれまでに、アンゴラ、チェチェン、ルワンダ、北アイルランドの地域紛争を取材してきた。その際、現地には3万ドルほどの現金を持っていったという。
マトロフ氏はオールブリトン氏の独立性を賞賛し、彼のように自由な立場なら、大手の報道機関が見過ごす可能性のあるニュースも手に入れられるかもしれないと述べた。しかし同時に、報道機関の支援を受けないということは、1分あたり1ドル50セントかかる衛星電話料金の負担は言うまでもなく、身の安全を確保する資金にも困るのではないかという懸念も抱いている。
「拉致でもされたら、誰が助けに行くというのか」とマトロフ氏。
オールブリトン氏は、衛星電話料金と頑丈なノートパソコンについては、提供者が現れてくれることを期待している。また、身の安全に関しては、昨夏にクルド人自治区で知り合った役人や民間人に頼るつもりだという。
目下のところ、オールブリトン氏が実際問題として懸念しているのは、衛星電話のせいで自分が米国の空爆の標的になるのではないかということだ。
つい先日も、オールブリトン氏は自身のウェブログにこんなことを書いている。「携帯電話――あるいは衛星電話――の電源を入れたときに、米軍のセンサーが信号をキャッチしないとは断言できない……米軍パイロットはおそらく、爆撃の生き残りが電話で何か指令を出していると考えるだろう」
[日本語版:近藤尚子/高橋朋子]