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こんな、MLが来ていたので添付します。
以下本文
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哲学クロニクル 第354号
(2003年2月26日)
避けるべき〈罠〉
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ブランショが亡くなりましたね。享年95歳とか。バタイユ、フーコー、レヴィナ
ス、デリダなど、多くの哲学者に影響を与え、もう伝説的な人物になっていまし
た。追悼。
さて今回は、『帝国』をネグリと共著で出版して、話題を呼んでいるハートの文
章をご紹介しましょう。
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避けるべき〈罠〉
マイケル・ハート、ガーディアン、2003年2月21日号
アメリカ政府には、新たな反ヨーロッパ主義とでもいうものが生まれている。も
ちろんアメリカ合衆国とヨーロッパのイデオロギー的な対立には長い歴史がある。
昔の反ヨーロッパ主義は一般に、欧州諸国の圧倒的な権力、傲慢さ、帝国主義的
な行動に抗議するものだった。しかし現在では関係が逆転している。新しい反ヨー
ロッパ主義は、アメリカの覇権に基づいたもので、欧州諸国がアメリカの権力に
屈せず、アメリカのプロジェクトを支援しないことに抗議しているのである。
アメリカ政府にとってもっとも重要な問題は、イラクを攻撃するアメリカの計画
に欧州諸国が支援を与えないことにある。この数週間のアメリカ政府の主要な戦
略は、「分割して征服する」ことにある。まずラムズフェルト国防長官は、いつ
もながらの慇懃無礼な態度で、アメリカのプロジェクトに異議を唱える欧州諸国、
主としてフランスとドイツを「古いヨーロッパ」と呼び、重要な国ではないと切
り捨てる。他方で、ウォール・ストリート・ジャーナル紙には最近、イギリスの
ブレア首相、イタリアのベルルスコーニ首相、スペインのアスナール首相が連名
でアメリカの戦争計画を支援する書簡が掲載されたが、これは分割された残りの
部分の顔を示すものだ。
アメリカの一国中心主義の全体のプロジェクトは、一般的な枠組みでは、イラク
との戦争だけに収まるものではなく、必然的に反ヨーロッパ的なものにならざる
をえない。アメリカ政府の一国中心主義は、ヨーロッパあるいは他の諸国の連合
が、アメリカと平等に権力を競いあうことができるという考え方に挑戦されてい
る。そしてドル安ユーロ高の現象は、平等で競合する可能性のあるふたつの権力
ブロックという考え方を支えるものになっている。
ブッシュもラムズフェルドもその同僚たちも、世界が二極化する可能性をうけい
れることはないだろう。冷戦の終焉とともに、この考え方は捨てられたのである。
一極的な秩序への脅威は否定されるか、破壊される必要があるのだ。アメリカ政
府の新しい反ヨーロッパ主義は、実は一国中心主義的なプロジェクトの表現なの
である。
このアメリカの新しい反ヨーロッパ主義とかなり対応した形で、現在のヨーロッ
パと世界の他の地域で、反米主義が高まっている。とくに先週末に組織された反
戦運動は、さまざまな種類の反米主義に彩られていたし、これは避けられないこ
とだった。アメリカ政府は、この戦争を主導しているのはアメリカであることを
明確にしているので、戦争への抗議運動は、アメリカ合衆国への抗議運動となら
ざるをえなくなる。
しかしこの反米主義は、たしかに正当な要素はあるものの、〈罠〉となるものだ。
この反米主義は、アメリカ合衆国について過度に統一された均質な考え方を作り
だし、アメリカ国内に存在する広範な異議申し立て運動をみえなくする傾向があ
る。しかし問題はこれだけではない。わたしたちの政治的な対抗案は、大国と権
力ブロックに依拠したものとなるという考え方を作り出すことこそが問題なのだ。
この反米主義はたとえば、ヨーロッパのリーダー諸国が、わたしたちの主要な政
治的な道筋を代表するものであり、好戦的で一国中心主義的なアメリカにかわる
道徳的で多国籍的な代案であるという印象を作り出してしまう。反戦運動の反米
主義は、わたしたちの政治的な想像力の地平を閉ざしてしまい、わたしたちは世
界を二極的に(あるいはさらにまずいことに、ナショナリズム的に)みることし
かできなくなってしまう。
これについては、反戦運動よりもグローバリゼーションに抗議する運動のほうが
はるかにすぐれている。グローバリゼーション抗議運動は、今日の資本主義的な
グローバリゼーションを支配する力、すなわち支配的な国民国家と、国際通貨基
金、世界貿易機構、大手の企業などの複雑さと複数主義的な性格を認識している
だけではない。平等と自由に基づいて、国境と地域的な境界を越えた複数の相互
的な活動によって、資本主義的なグローバリゼーションに代わる民主主義的なグ
ローバリゼーションを想像しているのである。
要するに、グローバリゼーション抗議運動が達成した偉大な業績のひとつは、政
治を国家や国家ブロック間の争いとして考えるのをやめたことにある。生まれう
る将来について、グローバルなビジョンをそなえたグローバルなネットワークの
結びつきの政治学として、インターナショナリズムが再発明されたのである。こ
の側面では、反ヨーロッパも反米主義も、もはや意味のないことにすぎない。
グローバリゼーション抗議運動を支えていたエネルギーの多くが、いまや反戦運
動にふりむけられるようになっているのは、不幸なことだが、避けられないこと
でもある。わたしたちはこの戦争に反対しなければならない。しかしこれを超え
る視線をもつ必要があるし、狭い政治の論理の〈罠〉にひきずりこまれるのは避
けねばならない。戦争に反対しながらもわたしたちは、グローバリゼーション抗
議運動が作り出してきた拡張的な政治ビジョンと、開かれた地平を維持しなけれ
ばならない。反ヨーロッパ主義と反米主義の対立といううんざりするようなゲー
ムは、ブッシュ、シラク、ブレア、シュレーダーにまかせておこうではないか。
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(c)中山 元
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