現在地 HOME > 掲示板 ★阿修羅♪ |
|
【ソウル澤田克己】北朝鮮が27日、国際原子力機関(IAEA)の査察官を退去させるとともに、使用済み核燃料の再処理施設である「放射化学研究所」の再稼働を宣言したことは、朝鮮半島情勢を「非常に危機的なものにした」(外交筋)といえる。北朝鮮はこれまで、核施設の封印撤去などを進める「瀬戸際外交」を展開しながらも、査察官に自由な活動を許すなど一定の配慮を見せてきた。今回の措置は「より強硬な路線への方針転換」(同)といえる。
北朝鮮は12日、米朝枠組み合意(94年)で凍結した核施設の再稼働を宣言。22日から黒鉛減速炉や放射化学研究所の封印を次々と撤去し、監視カメラも布で覆うなどして作動を妨害する措置を取った。
ただ、北朝鮮はこの間、査察官の行動を妨害するようなことはしなかった。このため監視カメラがなくても、国際社会の監視は可能だった。北朝鮮情勢に詳しい外交筋によると、北朝鮮当局は査察官たちに「あなたたちを退去させるつもりはない」と明言していたという。
一方、別の外交筋は「核燃料再処理施設の稼働と査察官の追放が、事態を危機的なものにしかねない2つの要素だと認識されていた」と指摘した。再処理施設の稼働は核兵器用プルトニウム生産につながり、査察官の追放は、そもそも再処理施設を稼働させたかどうかすら確認できなくするからだ。
米朝不可侵条約の締結を求めている北朝鮮の狙いは、金正日(キムジョンイル)体制の存続を米国に認めてもらい、攻撃されない保障を得ることにある。
危機を高めることで米国を対話に引き出そうという「瀬戸際外交」はそのための手段だが、米国は応じる気配をまったく見せていない。北朝鮮は焦って新しいカードを次々に切っているようにも見えるが、今や、取りうる手段はほとんど残っていないのが実情だ。朝鮮半島情勢の先行きは、極めて不透明なものになりつつある。
◇ ◇
北朝鮮が27日、稼動させると発表した「放射化学研究所」は、朝鮮中央通信によると「燃料棒を安全に保管する」施設だ。しかし、IAEAなど国際社会は、使用済み核燃料再処理施設とみている。
同施設は、96年の完成予定で85年に着工したが、94年の米朝枠組み合意に基づき凍結された。しかし、この段階で施設はほとんど完成されており、プルトニウム抽出実験は可能だとみられている。抽出実験の施設は建設が進められており、40%が完成しているとされる。
聯合ニュースによると、実験室には年間で最大で約70トン貯蔵できる。封印を撤去したとされる8000本の使用時済み核燃料棒は約50トンは保管が可能だ。
【堀山明子】
◇ ◇
◇北朝鮮核問題をめぐる今年の動き◇
1月29日 ブッシュ米大統領、北朝鮮など3カ国を、大量破壊兵器開発をめざす「悪の枢軸」と非難
8月7日 KEDO、米朝枠組み合意に基づき軽水炉本体建物の基礎工事に着手
29日 ボルトン米国務次官、枠組み合意に基づく核査察早期受け入れを要求
9月17日 訪朝した小泉首相が査察受け入れを求めたのに対し、金正日総書記は「米国が誠実に対応すれば解決」
25日 ブッシュ大統領、北朝鮮との高官協議再開を明言
10月4日 ケリー米国務次官補が訪朝し、金永南最高人民会議常任委員長と会談
16日 米国務省、ケリー訪朝時に北朝鮮が核兵器用の濃縮ウラン計画を認めたと発表
11月14日 KEDO、枠組み合意に基づく重油提供の12月からの凍結を決定
29日 IAEA、北朝鮮の核計画を非難し、特別査察受け入れを要求
12月2日 IAEAに対し、核兵器開発計画放棄は受け入れられないと文書で通告
12日 IAEAに対し、核施設凍結解除を通知。封印と監視カメラ撤去も要請
22日 IAEAに対し、封印、監視カメラの撤去を宣言
24日 北朝鮮、主要核施設の封印撤去を完了
25日 IAEA、北朝鮮が核施設内に新たな核燃料棒400本を搬入したと発表
27日 北朝鮮、IAEA査察官の追放を決定
[毎日新聞12月28日] ( 2002-12-28-00:37 )