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『共和党の歴史的勝利で終わった2002年の米中間選挙。その運動期間中、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、精力的に全米を遊説して回った。どこでも同じ演説をし、どこでも同じくだりで喝采を浴びた。
「自由はアメリカからの贈り物ではない。神からの贈り物だ。この国は決して征服しない。解放するだけだ」
〈中略〉
善と自由のために世界をつくり直すのだ。独裁者を倒すのだ。外交努力で足りなければ、力を用いても目的を達成しよう。ならず者から大量破壊兵器を取り上げよう。9・11のテロリストたちに弁解の余地はない。彼らは邪悪な存在だから、懲らしめてやる・・・・。
勇ましすぎる?そう、世界にはそう思う人が少なくない。
〈中略〉
イラク情勢が大詰めを迎えた今、ブッシュは世界に、アメリカの行動が善であることを納得させられるだろうか。
イラクをめぐる代理戦争
あいにく多くのイスラム教徒は、ブッシュ政権はイスラエルと手を組み、世界の西欧化を図っていると信じている。
〈中略〉
「アメリカ人は、自分たちがどれほど嫌われているかわかっていない」と、イスラエルの和平交渉担当者だったウリ・サビルは言う。「善意のつもりが悪意として受け取られるこんな国は、今までになかった。アメリカは親権に訴えているのに信じてもらえないとは気の毒だ」
〈中略〉
コフィ・アナン国連事務総長も、強大なアメリカの行動と世界に於けるルールをめぐる、フランスとロシア、中国の3ヶ国とブッシュ政権の代理戦争だったと認めている。
〈中略〉
先制攻撃もトーンダウン
国連安保理は15対0の全会一致で対イラク決議案を採択したが、アメリカは査察結果が出るまで武力行使をしないと譲歩した。採択後、アナンは「(フランスは)自分たちは国際法と安保理を守ったと思っているだろう」と語っている。単なる「こじつけ」では、世界は戦争を許さない。「理にかない、信じられる根拠がなければならない」とも語っている。
ブッシュに国際協調路線を取る気があるかどうかは、今後数ヶ月のイラクへの対応でわかるはずだ。とはいえ、「ならず者超大国」と呼ばれるアメリカにも、わずかながら安心材料がある。事情通によれば、ブッシュの世界観は大人になりつつあるからだ。
〈中略〉
今ではブッシュ政権のタカ派でさえ、対イラク戦争と、長期化すると考えられている「フセイン後」の両方に他国の協力が欠かせないことを認めている。
〈中略〉
政権に近い筋によると、アメリカに対する世界の不安を取り除くため、アメリカは「脅威となりうる国がアメリカの力をしのいだり、同等になろうとするのを阻止」するという文言は、最終章にひっそりと入れられた。
〈中略〉
確かにイスラム過激派の脅威と戦うにあたって、キリスト教の神を持ち出すのは穏やかではない。ウィルソンと違って、ブッシュは誰も望まない「文明の衝突」という危険なゲームに手を出そうとしているのかも知れない。
〈中略〉
ドクトリンの「20世紀の大いなる闘争は、国家に成功をもたらす単一の持続可能なモデルの勝利に終わった。それは、自由と民主主義、自由経済だ」という一説は、アメリカのことではない。
〈中略〉
国家安全保障戦略にかかわる政府高官は言う。「われわれはイスラム世界のためにも、思想の戦争に勝利しようと努めている。『アメリカのようになれ』と売り込んでいるわけではない」
〈中略〉
別の機会には、アメリカのイラク侵攻が与えるインパクトを考慮してこう言った。「われわれには領土拡大の野心はまったくない。帝国を築く意思もない」
〈中略〉
力の支配ではなく、共通の価値に基づく「ソフト」な帝国を築こうとするなら、強大な力を持ちつつ、穏やかに語るべきだ−−−ブッシュのチームは、その点をようやく理解しはじめた。
〈中略〉
世界はフセインにも、テロの脅威にも当時ほど怯えていない。だからアメリカ政府には、さらなる外交努力が必要になる。
〈中略〉
世界中でアメリカに対する怒りの声が聞こえている。だが、反米的な世論が圧倒的にみえても、文明世界の価値観は驚くほど似通ってきている。
〈中略〉
ブッシュ政権は核兵器開発を認めた北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)に対しても、多国間協調路線で取り組んでいる。朝鮮半島での戦争はほぼ不可能であることに気づいたからだ。
〈中略〉
イラクに関する方針が変わった最大の理由は、アメリカ国民は単独で戦争をしたくないということが世論調査で常に示されてきたからだろう。神はアメリカの側にいるのかもしれない。だがそうであれば、神もまた国際協調路線をお望みのようだ。
』