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瀕死”の姿浮き彫り
まるで、重病の患者のカルテを見せられたような、暗澹(あんたん)たる気分にならざるを得ない。
銀行の体力を、詳細な財務データに基づいて検証した本書を読んだ後の感想である。
日本の銀行は約10年間で80兆円余の不良債権を処理したが、デフレの進行で不良債権の残高が増え続け、衰弱が止まらない。株価急落で再び3月危機が取り沙汰(ざた)される中、銀行は最後の拠(よ)り所である自己資本を、事実上喪失している、というのが本書のポイントだ。
大手銀行の自己資本比率は表向き10%以上あり、国際的な健全性基準(BIS基準)を満たしている。だが、これは様々なかさ上げの結果にすぎない。将来、利益が上がらなければ資産計上できない繰り延べ税金資産や、引き当て不足額、公的資金分などを除くと、裸の実力はゼロ近辺かマイナスだ――というのだ。
衝撃的なデータはまだある。ペイオフが凍結解除されたと仮定して、破綻(はたん)金融機関の平均預金カット率を試算すると、金融庁の早期是正措置の導入後が約25%、前は約27%。前後でほとんど差はない。つまり「早期是正措置は預金者保護に十分機能していなかった」のである。互いに資本を持ち合う銀行と生命保険会社の一蓮(いちれん)托生(たくしょう)の関係にも検証のメスが入れられている。
本書に並ぶ様々な数値は、まさに瀕死(ひんし)に近い日本の銀行と、その上に立つ、砂上の楼閣のような日本経済の姿を浮き彫りにしている。
では、どのような処方箋(せん)を書けばいいのか。 深尾氏は、銀行に公的資金を投入しても金融再生はできないと言う。デフレが止まらない限り不良債権が発生し続けるからだ。
そして、銀行再建には強力なマクロ政策でデフレから脱却することが先決と訴え、モノの価値が下がりカネの価値が上がるデフレの克服策として「預貯金や国債、現金などへの課税(マイナス金利)」という“劇薬”にまで言及している。危機の深さを直視させる一冊である。