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時価会計、一時停止の愚――日経金融スクランブル
東京株式市場では12日も日経平均株価が8000円台割れのままで取引を終えた。約5カ月間にわたって8000円台を防衛してきたが、イラク情勢などを巡る国際情勢の不透明化には耐えきれなかった。そうした事態を受けて、永田町や霞が関方面では「市場安定化策」の議論がにわかに盛り上がり始めたが、市場には歓迎一色とはいえない雰囲気が漂っている。銀行の保有株制限の延期、日銀による銀行保有株買い取り枠の拡大、ETFの購入、インフレ目標の設定――。
百家争鳴の様相を呈する議論のなかで、市場関係者がひときわ警戒を強めているものがある。時価会計の一時停止や減損会計の導入延期など、会計制度を後退させる策だ。 会計制度の不透明化が嫌気されるのは、「問題先送りはよくない」といった抽象的なな理由からではない。「買い手の減少につながる」(モルガン・スタンレー証券の神山直樹株式ストラテジスト)可能性が大きいからだ。
リスクの大きさを見極めてから、それでも利益を狙うにはどの程度の価格で買えばいいのか考える。株式を含めた金融商品の価格を形成しているのはこうしたロジックだ。値下がり損を被るかもしれない株式は十分に割安な価格でしか買わないが、元本割れの心配が小さい債券にはそこまでの割安さは要求しない、といった具合だ。会計制度が後退するとどうなるのか。上場企業の実態がますます見えにくくなるのだから、株式への投資リスクは一段と高くなる。つまり、「現在の株価水準では『まだ買えない』と判断する投資家が増える可能性がある」(神山氏)のだ。
そもそも日本では固定資産の評価損などを計上する減損会計が未導入であるなど現在の会計制度が充実しているとはいいがたい。それを反映しているのが株価純資産倍率(PBR)が一倍を割る銘柄の多さだ。
12日の東証一部では連結PBRが一倍未満の銘柄が931と全体の6割に達した。株価が1万円台を維持していた2001年前半でもこの数は4割超だった。
PBRが一倍未満なら、その企業を資産価値を下回る価格で買収できるわけで、理論上はありえない話だ。そんな不自然に低い株価の銘柄が東京市場にあふれるのは、企業の決算情報が額面通りに受け止められていないことの裏付けだといえる。時価会計の一時停止などの措置が追い打ちをかければ、超低位で安定する銘柄の数をさらに増やすことにもなりかねない。
企業経営の緊張感を弱めるとの懸念も浮上している。2003年3月期に上場企業が業績のV字回復を見込むのは、その原動力であるリストラの手を緩めなかったからだ。だが、会計制度の後退で経営実態に目が向かなくなれば、「リストラを促すプレッシャーが弱まる」(ゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井チーフ・ストラテジスト)との声があがっている。
時価会計の一時凍結については小泉純一郎首相が「奇策はしない」と述べるなど、政府はいまのところ否定的な姿勢を保っている。ただ、1998年3月期で銀行に保有株の株価下落を反映しない原価法の採用が突然認められた「前科」もあるだけに先行きは予断を許さない。
「『日本経済の破たんは回避するから』と政府が言明して、国民に犠牲を払ってもらい、インフレ時代に約束した年金や生命保険などの引き下げに踏み切るしかない」(ドイツ証券の武者陵司チーフストラテジスト)といった発言まで出るような切迫した状況で、会計基準の変更という小手先の対策が出てくること自体に市場関係者は落胆を隠せないでいる。
日経平均株価は7日ぶりに上昇したが、市場では「自律反発の域を出ない」と
の声がもっぱらだった。こうした中、時価会計の一時停止は、永田町や霞が関の
期待に反し、相場の足を引っ張る可能性の方が大きい。(山下茂行)