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「完全予見者の"微妙な"優位性」 BNPパリバ証券会社 シニアクオンツアナリスト 栗田昌孝氏 houさんへ三井住友が下落した仕組みの解説も載ってます
http://www.asyura.com/2003/hasan23/msg/394.html
投稿者 Ddog 日時 2003 年 3 月 12 日 00:03:41:

(回答先: 8316/O 三井住友フィナンシャルグループ 大証1部 212000 (13:46) -31000 -12.75% 前日終値 243000 投稿者 hou 日時 2003 年 3 月 11 日 21:33:51)

株クオンツ「完全予見者の"微妙な"優位性」 BNPパリバ証券会社 シニアクオンツアナリ
スト 栗田昌孝氏

【トピックス 】将来利益の完全予見だけでは不十分
【マーケット動向】銀行の優先株を利用したヘッジ取引の真実
【スタイル動向 】Smallは総じて堅調、Largeで高PERが苦戦
【セクター動向 】セクターはニュートラルに
【ファクター動向】高配当利回りプラス期末配当予想の上方修正銘柄

1.トピックス:「将来利益の完全予見だけでは不十分」

「正確な将来利益」を「なるべく早い時機に」見破ることができれば、対ベンチマーク超 過利潤の獲得に大きく貢献しそうである。実際、企業調査担当者の存在意義は、カバレ ッジ企業のミクロ・ファンダメンタルの詳細な調査・分析を通じて「将来利益の早期発見( 事前完全予見)」に近づくことができればパフォーマンスに貢献するはずだ、という前提 で成り立っていると考えられる。
では、こうした「完全予見」はどのくらいパフォーマンスに貢献するのであろう?それ を検証するために、ここで2人のファンドマネージャー、A氏とB氏に登場してもらうこと にしよう。
A氏は「一期先利益が完全予見できた」ということを前提に銘柄を選択する。他方、B氏 は「前期実績利益が将来利益のもっとも妥当な(アンバイアスな)期待値である」というこ とを前提に銘柄を選択する。このように両ファンドマネージャーの利用可能な情報に違 いを設定して、両者の「選択した銘柄の違い」と「パフォーマンスの格差」を調べることで 、完全予見の貢献度がどのくらいなのか測ることができるであろう。
また、A氏もB氏も「同一の銘柄選択プロセス」に従う。でなければ、A氏とB氏の試行が 互いに対照実験の関係にならないからだ。「同一の銘柄プロセス」とは、@東証一部全銘 柄について「利益÷EV(ネット負債+時価総額)」を算出して、Aその値(利益÷EV)が東証 一部内で上位20%(5分位中1分位)を購入する(逆に下位20%、すなわち5分位中5分位は「売 り」と判断)、という「2次的手続き」のことを指す。「2次的手続きが同じ」であれば、A氏と B氏の選択した銘柄およびリターンの違いは「利用可能な情報(1次情報)の差」に起因する ということがより鮮明になる。
94年6月から02年4月まで月次入替運用の結果、A氏の選択銘柄(のべ約15000回)のアク ティブリターン(対東証一部)は平均値で13%、中央値で4%、それに対して、B氏のそれら は4%と-2%となった。この数字だけ見るとA氏の圧勝である。しかしながら、両者の差は 実は「紙一重」なのだ。
A氏が選択した15000回のうち、およそ7300回(48%)に相当する部分はアンダーパフォ ―ムしていたのである(B氏は全選択回数に対して51%がアンダーパフォーム)。完全予見 を以ってしてもA氏は実に100回中48回も「負けていた」のである。A氏の高い平均リターン は「ごく一部の例外的大当たり」によって不自然に引き上げられていた公算が高いのだ。
更に、A氏とB氏の選択銘柄とパフォーマンスの違いが「微妙である」ことを追加的に調 べるため、同時クロス集計を行った。これによってA氏が選択した銘柄に対してB氏はど のような評価をしていたのかを識別できる(その逆の場合、B氏が選択した銘柄に対するA 氏の評価も同時に調べた)。それによると、A氏の選択した銘柄のうちB氏も「買い」と判断 していたものが71%も含まれていることが判明した。そして、それらのリターン平均は11 %であり、A氏の選択銘柄全体の平均リターンである13%より低いリターンしか生み出して いないのである。要するに、完全予見者の選択銘柄のうち7割以上は前期実績に基づく選 択とオーバーラップする上に、それらの付加価値は低いということだ。逆に、Aの「買い( 1分位)」のうちB氏が「売りと判断した(5分位)」ケースは、約150回(A氏の選択の1%相当部 分)、平均リターンは50%(中央値で7%)と高かったのである。この僅か「1%の部分を選択し たこと」がA氏とB氏のパフォーマンスの違いの真因だったのである。
このことは、完全予見の利を生かすには、@自分が完全予見できていることと同じく らいに、A他人が完全予見できていないこと、が重要な要素であることを示唆する。他 の市場参加者の「バリュエーション相対水準を完全予見している程度」によって、自らが 獲得できるリターンが左右されるのである。また、完全予見者がリターン獲得のために 見るべき点は、バリュエーションの相対水準そのものではなくて、実は「バリュエーショ ンの相対水準の変化」であったのだ(しかし、こうしたケースの絶対数は「全体の1%」と非 常に少ない)。
加えて、実際上の問題は「A氏のように出来ない」ということであろう。多くの市場参加 者はA氏とB氏の中間に位置するものと推察される。仮に、自分が「B氏的」であったとして も、幸いB氏の「買い」のうち64%はA氏の「買い」とミートする。B氏の低リターンは「B氏は 『買い』だが、A氏は『売り』と評価した」銘柄のせいであり、これらはB氏の組入れの約 10%も占めていた。この「10%の部分を選択しないこと」がB氏の潜在的付加価値であり、A 氏の潜在的付加価値である「1%の部分を選択すること」よりも確率的には容易なのだ。

2.マーケット動向:「銀行の優先株を利用したヘッジ取引について」

近頃話題の優先株ヘッジ取引について説明する。前月、三井住友FGが発行した優先株 は「株」という呼び名であるが、実際には「転換社債」に近い。ただし、満期到来日に残存 している部分については額面で償還されない点が転換社債とは異なっている(株価が転換 価額を下回っていても株式に強制転換される)。平成15年2月20日付けの三井住友FG発行 のステートメントには、転換価額312千円、転換請求期間は平成15年4月14日から平成17 年7月12日、更に、株価が下落した備えとして優先株保有者は「転換価格の下方修正条項」 が付与されている(下限は156千円)と記載されている。
この優先株を保有すると、保有者はコール・オプション・ロング(株式を転換価額で買え る権利の保有)のポジションを持つ。このコール・オプション(以下コール)の価値はその 原資産である普通株式の時価と連動するわけであるが、その連動の程度をデルタと呼ぶ 。例えば、株式の時価が10%上昇したとき、コールの価値が3%上昇するような場合、連動 の度合い(デルタ)は30%と表す。つまり、株式の時価の変化に対して、その「何掛け」でコ ―ル価値が変化するのか?という、言わば、「掛け目」をデルタという。デルタは通常0%( 無連動)から100%(完全連動)の間で変動する。転換可能株数が1000株でデルタが30%であ るとき、潜在的に300株保有している(1000株×30%)のと同等なので、ヘッジのため300株 空売りする(ネット0株のポジション)。このデルタで計算された潜在保有株数分をヘッジ して、ネットでニュートラルのポジションを組成することを「デルタヘッジ」と呼ぶ。そ の後、株価が下落してデルタが10%に低下すると潜在的保有株数は100株へと減少する。 すると、ネットでは200株の空売り(100-300=-200)のポジションになるので、株価下落分 だけ「売りの利益」が獲得できる。反対に、株価が上昇して、デルタが50%に増加すると潜 在的保有株数は500株と増加する。ネットでは200株の「買い持ち(500-300)」なので値上が り益が発生する。つまり、デルタヘッジに関しては株価の上昇、下落双方にインセンテ ィブがあり、特段「売り」への偏ったインセンティブは生じない。需給に対してはニュー トラル要因だ。
では、なぜ銀行株が下落したのか?この優先株保有者は、株価が下落しても大丈夫な ように「デルタヘッジ」による第一安全弁と、仮にデルタヘッジしなくても転換価格が156 千円までは下方修正され得るという第二安全弁を保持している。言わば、「船体2重防御 構造」なのだ。実は、彼らの真のリスクは、転換請求終了時に株価が156千円を下回って しまうことである。そこで「株価が156千円以下になるリスク」に対して優先株保有者は「 保険をかける」必要がある。その保険とは「156千円が行使価格のプット・オプションを相 対取引で購入する」ことで達成される(その保険料は時価が300千円付近のときは微々たる もの)。「保険(プット)」の受け皿は大抵証券会社のデリバティブ部門になる。証券会社は 「保険料」を受け取って、優先株保有者の「株価156千円以下の下落リスク」に応じる。
この時点で優先株保有者のポジションは「無敵」になる。元々、デルタヘッジ(第一安全 弁)、転換価額下方修正条項(第二安全弁)が存在する上に、株価156千円以下のときは「保 険(プット)」のカバー(第三安全弁)が成立するからだ。
証券会社は、将来の保険金支払いの可能性に応じて、つまり、満期時に156千円以下に 株価が下落して相手からの補償請求にさらされるリスクに応じて、現時点で株を少し空 売りする。そうすれば、156千円以下に株価が下落した場合、空売りからの利益が発生し て、保険金支払いに対処できるからだ。
証券会社が「保険金支払いの備え」のために空売りすれば株価は下落する。仮に300千円 から250千円となったとしよう。ここで、優先株保有者は余分に空売りを仕掛けるのだ。 そして、仮に、200千円まで株価が下落するとしよう。証券会社は慌てふためく。「将来 の保険金支払の可能性=156千円以下に株価が下落する確率」が高まってしまうからだ。 そして、将来の下落時の保険金支払に備えて「更に追加で株を空売りしておく」という行 動をとる。すると、また株が下がる、下がるから「支払いに備えて」株を売る・・・。このル ―プが希薄化以上の効果をもたらす。
優先株保有者は、言わば「高みの見物」状態だ。空売りした株は、株に関する「信用創造 」を伴いながら下落スパイラルをたどる。そして、安くなったところで空売り分を買い戻 すと同時に追加で「買い持ち」して、株価の踏み上げを行う。今度は、売りすぎたポジシ ョンを証券会社が自ら「価格を踏み上げながら」買い戻していく。その後株価が大きく上 昇したところで「買い持ち分」を売却すればよい。そして、また空売りを仕掛ける・・・。こ れを繰り返す。

3.スタイル動向:「Smallは総じて堅調、Largeで高PERが苦戦」

12月末から2月末にかけて低位・小型が優勢であった。特に、「往年の仕手株が再起・復 活」のような事象も観測され、時価総額が500億以下のSmall銘柄ではPERの水準に関係な く対TOPIXを上回るリターンを示した。LargeはPERの高いものと低いもので明暗が分かれ た。最も振るわなかったのはLargeで高PERのものである。Largeで低PERは総じて堅調で あった。特に、来期ベースで低PERであるグループの中に良好なパフォーマンスを上げる ものがあった。仕手株が今後上がりつづけるかどうかは、はっきり行って「不明」であり 、ここからLargeのエクスポージャーがプラスにでる投資家は、わざわざ無理にSmall化 する必要はないように思われる。

4.セクター動向:「セクターはニュートラルに」

12月末から2月末にかけて電気機器、医薬品及びサービスといった業種は上方修正或い は下方修正に関係なく「一律的に」パフォーマンスが悪かった。反対に、水産・農林、食品 、倉庫などは業績修正に関係なく全体パフォーマンスが良い。また、小売など多くの企 業が決算を迎えた業種では、上方修正銘柄対下方修正銘柄のリターン格差が業種内で大 きく発生しており一律的に語ることができないようである。
今後、多くの銘柄が3月決算を迎えることになり、業種を一律的に捕捉するよりも、決 算直前の「予想のぶれ」に従って、個別銘柄を軸に考えた方が良さそうである。セクター・ リスクはニュートラルに近づける方が良いと判断する。

5.ファクター動向:「配当予想の上方修正」

期末配当の時期もあり「予想配当利回りの水準」並びに「予想配当がこの時期に増額修正 された」銘柄を選択するのは比較的面白いのではと考える(当然、配当性向が高すぎるも のは除外する)。東洋経済による2月の予想配当が上方修正された銘柄は28社(反対に予想 配当下方修正は15社)であった。そのうち7銘柄は配当利回りが2%以上であり、更に配当 性向が30%未満であるものは3社存在した。ちなみに、その3社のうち東京建物(8804)の予 想配当利回りが増額修正(6円→7円)され、2/28終値ベースで予想配当利回りが3.63%、配当性向は28%である。いかがなものであろうか?

<栗田昌孝氏略歴>
1994年早稲田大学理工学部数学科卒、山一證券に入社し投資開発部配属。97年6月以降、 クレディリヨネ証券、ソシエテジェネラル証券、UBSウォーバーグ証券において一貫して クオンツリサーチに携わる
。2002年2月より現職。クオンツ人気調査ランキング8位(2002 年3月25日付日経金融新聞)。

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