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(回答先: 「新総裁下の日銀政策効果限定的」 投稿者 Ddog 日時 2003 年 3 月 07 日 00:16:07)
伊藤隆敏・東京大学先端科学技術研究センター教授です。 「重大岐路、未踏の政策パッケージ打ち出せ」伊藤隆敏・東京大学先端科学技術 【問】何を最も危惧されますか。
低迷を続け、デフレの出口が見出せない日本経済。どこに問題があり、どんな方向に進むのか。複数の有識者に現状と展望を伺った。
研究センター教授
【問】日本経済は本格的回復基調に乗れないでいます。
【答】「失われた10年」という言葉が使われているように、ここ10年間の日本経
済は潜在
成長率を下回る成長率しか達成出来ていない。政府・日銀による財政・金融政策
はほぼ出
尽くして手詰まり状態にある。「政府・日銀はどうしてもっと能動的な政策を打
ち出さな
いのか」との疑問や批判が内外で高まっているにもかかわらず、政治的決断の鈍
さと政府
l 日銀の不協和音から思い切った政策が採れないでいる。物価は3年連続下落し、デフレは終息しそうにない。このままの状態で行けば、5年以内に経済システムのどこかで非常に大きな危機が起きるだろう。それは、銀行や生命保険の破綻かもしれないし、財政の破綻かもしれない。
【答】勿論、財政破綻だ。財政は膨大な債務を抱えてまさに危機的状況にある。政府債務GDP比率は140%と高水準だが、190%程まで高まるだろう。200%になれば誰がどう考えても財政破綻、つまり国家破綻状態だ。そこからの脱出の出口は大増税か、ハイパーインフレか、債務不履行だ。どれを選択するにせよ生活水準の大きな切り下げは免れない。それを避けるために今から相当な努力をしていかないといけない。そういう面で、今、大きな政策転換を迫られている。
【問】対処法は。
【答】日本経済は、物価下落期待が消費や投資意欲を低下させ、それが景気後退に繋がり、さらなる物価下落の期待を引き起こしているという悪循環にある。この悪循環を断ち切れば事態は改善する。それには、財政、金融、銀行システムの3つの改革を同時に実行することだ。
【問】具体的には。
【答】消費、住宅投資、設備投資を活発化させるような減税と増税を組み合わせて、歳出規模を拡大せずに景気を刺激する。さらに、不良債権を抜本的、迅速に処理して銀行システムを健全化する。不良債権処理の加速でデフレが深刻化するから、大胆な金融政策を実行する。伝統的金融政策は限界にきているから、金融緩和は伝統的手段を超えたものでないといけない。例えば、長期国債の買い切り額の増額でデフレが止まらない場合には、日銀がETF(株価指数連動型上場投信)やREIT(不動産投信)を購入し、貨幣供給を増加させる。リスク商品のETFやREITは、国債とは別なチャネルに働きかけるから、マネ―の一部は株式の購入や外貨建て預金、資産購入など、リスクをとる金融商品に向かうだろうし、消費や投資にも向かうだろう。
さらに、日銀は一定の物価上昇率を政策目標とするインフレターゲットを採用し、インフレ期待を醸成する。これは、2年後に消費者物価指数(除く、生鮮食料品)のインフレ率を1%から3%の範囲内にすることを目標に金融政策を運営して行くというものだ。2年後という期間を設定したのは、6ヵ月後では期間が短か過ぎるし、5年後では遅過ぎるからだ。金融政策を発動してから、それが効果を持つまでに少なくとも6ヵ月はかかる。5年後ではどこかが破綻している。
以上を政策パッケージとして実行すれば、単独で実行する場合の副作用を相互に打ち消して、2年後にはデフレは終結し、日本経済は力強い回復を見せるだろう。
【問】デフレ容認論もあります。政策パッケージ実行の可能性をどう見ますか。【答】デフレと共存するということは賃金、所得も下がるということだから、モノが安くなっても購買力が高まることはない。デフレ期待で消費と投資が抑制されると、総需要が下がって物価が一段と下落し、負債の実質負担増となって債務者に響いてくる。債務者に対する負の効果の増大は不良債権を大きくするから、金融システムが上手く機能しなくなる。経済に歪みが生じ、経済はどんどん収縮し破綻する。デフレに良いものはない。デフレは悪だ。
デフレが世界的傾向という見方も誤りだ。物価が下がっているのは日本と中国くらいだ。中国は発展途上国として高成長を続けているからデフレスパイラルに陥る危険はない。デフレスパイラルのリスクがあるのは日本だけだ。中国のデフレ輸出説も経済全体としては誤っている。日本の中国からの輸入品のすべての消費財に占める割合は2%程度と非常に小さく、日本のデフレを説明することは出来ない。私自身は、小泉首相は相当なことをやる覚悟があるという希望を持っているが、日銀の新総裁・副総裁の決断も必要だ。戦後、デフレになった先進国はない。前例のない政策を実行するしかない。
【問】実行しなければどうなりますか。
【答】ゼロ%の経済成長とインフレ率のマイナス1%のデフレが進行し、5年後までに金融システムは破綻する。失われた10年からさらに破滅の道を歩むのか、それとも、大きな政策転換を重ねて再生の道を歩むのか。まさに、今はその大きな分かれ目だ。
これか
ら5年の間に結論が出るだろう。
(聞き手・QUICK情報本部 岡村健一)