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「新総裁下の日銀政策効果限定的」
http://www.asyura.com/2003/hasan23/msg/226.html
投稿者 Ddog 日時 2003 年 3 月 07 日 00:16:07:

エコノミスト「新総裁下の日銀政策効果限定的」みずほ証券・ チーフエコノミスト 佐治信行氏
03/03/05

【景況判断】現状(3ヵ月前比):やや悪い 先行き(3ヵ月後):悪いGDP予測:02年度1.5%(1.0%) 03年度▲0.3%(0.2%)
【金 利】短期:横這い TIBOR3ヵ月 0.10%
長期:やや弱含む 10年物新発国債0.70%
【円 相 場】円安120円/1ドル
【株 価】株安 日経平均8,000円
l GDP予測値は実質GDP成長率、前年比%。カッコ内は直近10回分の平均値
l 長短金利、円相場、株価は3ヵ月後(03年6月末)の予測値

1.景気見通し:「在庫調整圧力足許さほど強くないが、海外要因から生産活動弱含む」03年1月の鉱工業生産指数は前月比1.5%上昇と事前の予測値同2.1%(経済産業省調べ)を下回った。生産指数が上昇した背景はパソコン春モデルの生産開始、カメラ付き携帯電話(新機種)の生産増加など、増加要因が集中したことが挙げられるが、中国国内での通信・電気機器の在庫が昨年8月頃から増加が加速している現況を勘案すれば、国内在庫率が低水準に止まっているからと言って楽観は許されない。まして、電気機械工業の1月の生産実績予測実現率が▲4.8%、2月の予測修正率が▲1.3%と計画未達、予測下方修正の動きが顕著化していること、また米国国内需要も力強さにかけることは先行きの生産弱含みを示唆している。
一方、需要サイドでは1月の家計調査でみられるように、実質消費支出は前年比
l 2.0
%と低迷が続いている。12月のボーナス支給の減少、消費牽引世帯の不在と言った足許での家計部門の支出抑制要因は続くと考えられる。また、設備投資に関しては、機械受注統計でみる限り自動車と素材産業での設備投資底入れが近いようにみられるものの、全体としての反転上昇の勢いは感じられない。国内民需は10〜12月期前月比0.3%増加の後、1〜3月期は同▲3.4%が予想されている。こうした需要牽引役が限られる中で先行き景気は調整色を強めていく方向となろう。
2.金融環境:「量的緩和継続、緩やかな円安ドル高」日銀の新人事が福井総裁、武藤副総裁、岩田副総裁に内定した。この結果、日銀の今後の政策スタンスは大幅には変更されないものと予想される。金融政策は従来路線が継承されることになろう。インフレ目標導入など非伝統的金融政策については、実質的に既に「CPI上昇率ゼロ%まで…流動性供給…」で実行されているところである。今後、その路線を継承・拡張するとすれば国債買切りオペの拡張を当面続けるしかない。国債市場は年間36兆円から40兆円発行される新規財源債の半分に相当する金額を日銀が買う約束がされている市場である。
言うまでもなく買い手が確定している市場ほど安定感がある市場はない。BIS自己資本規制が銀行に厳格運用され、企業会計の時価原則が減損会計導入を通じて完結される今後の予定を勘案すれば、銀行はリスク資産をはずして安全資産である国債を買い続けざるを得ない環境は不変であろう。また、年金資産も過去の株価下落による積み立て不足の教訓から運用が保守的になる傾向が強まるとも考えられる。国債市場では買い手過剰の状態が続き、長期金利の低下局面が続く。
量的金融緩和の手段の一つとしてETF購入、外債購入も考えられるであろうが、金融機関保有残高が限られていることから、マネタリーベース増加につながる分は限られているし、資産市場に与える影響も少ないとみられる。円ドルに関しては、イラク攻撃と米国経済の先行き懸念のドル安と政府・日銀の円売り介入によるドル高(対ユーロ介入からユーロ高も)との綱引きから、変動幅が限られる展開が暫く続こう。ただ、米国は対外収支と財政収支が悪化する中、輸入価格上昇と金利上昇につながるドル安政策は執りづらいと推察され、当局の政策スタンスは円安ドル高の方向へ相場地合を向けていくのではないかと考えられる。
3.注目点:「日本の素材産業の収益力は高まる局面」ここへ来て素材産業の収益環境が改善する環境が整い始めてきている。過去5年間注目されてきた通称ニューエコノミーの電機セクターの収益力は一昨年の大型リストラ実行により、今年度は底入れ回復に向かっているものの、先行きについては中国、韓国の過剰供給により懸念は高まる一方である。実際、電機セクターの足許の損益分岐点はリストラにも拘わらず90年代に比較して悪化している。他方、素材産業は商品市況の上昇とこれまでの長年の合理化、事業再編、リストラから損益分岐点の改善が足許で顕在化してきている。ただ、ここへ来ての商品市況の上昇はイラク危機の影響だけではない要因が働いているように窺われる。代表的なものとしては中国の素材需要の拡大である。中国では農村部の過剰労働力の吸収先として輸出型、ハイテク型、労働集約型の産業へ政策が傾斜している。経済特別区を中心にこれらの産業に税制面での優遇措置が執られていることもあって、財政資金面での制約が発生。資本集約的な川上・素材産業の生産能力増強が川下・下降産業に比較して遅れている。また、中国の需要はプラスチック、金属、化学の分野で明らかに韓国製、台湾製から日本製へ移行してきている。これは、電機セクターでの動きとは全く異なる。つまり、川上・素材製品の供給制約と川下・加工製品の過剰供給の対称性が世界的且つ構造的になりつつある中、今後は素材産業、オールドエコノミーへ注目が集まる。

<佐治信行氏略歴>
1958年生。82年関西学院大学法学部卒。日興證券入社。日興リサーチセンター投資戦略部長、興銀証券チーフエコノミストなどを経て、2000年10月から現職。エコノミスト人気調査ランキング1位(2002年3月25日付日経金融新聞)。

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