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From : ビル・トッテン
Subject : 水道民営化を問う
Number : OW563
Date : 2003年3月3日
規制緩和、民営化はいまやグローバル化と並んで政府や大企業が推し進めたいキーワードとなっている。電力に加えて水を民営化する動きが進んでいるが、四半期ごとの利益のために管理してはならないインフラの一つが水だと私は思っている。水道の民営化によって、20世紀が石油の戦争の時代であれば、21世紀は石油だけでなく、水が原因で戦争が起きるだろうという予言すらも、現実味を帯びたものとなっていくだろう。
(ビル・トッテン)
水道民営化を問う
先日、経済紙の一面に「水道事業民間に開放」の見出しのもと、政府がコスト高な日本の水道料金を下げることを狙いとして、地方自治体が運営している水道事業を民間企業に全面委託できるように地方自治法の改正案を提出し、成立を待って年内にも施行するという記事が掲載された。
日本市場狙う外資系
日本の水道料金は、標準世帯の約1カ月の使用量である20立方メートル当たり3千円で、これはフランスの1.5倍、アメリカの2.3倍だという。民間の参入によって料金を下げることが目的だというが、どう考えてもこれは3兆円ともいわれる日本の水道ビジネスに参入を狙う外国企業および日本の民間企業による圧力によってもたらされたものであろう。
事実、すでに水道法の規制緩和で昨年4月から民間委託が一部で解禁されているため、外資系の水道会社や商社などがその市場を狙って地方自治体に働きかけている。
水道の民営化は、果たして本当に日本がとるべき選択肢なのか。それを厳しく吟味することもなく、すでに規制は取り払うものという前提で水道及び下水道の民営化も進められようとしている。
国際的にみて水道料金が割高だというが、事情が異なる国の料金のみを比較しても意味がないし、海外でも水道事業の民営化が進んでいるから日本でも、ということもまったく理由にならない。さらにその海外で水道の民営化で起きている実状を公正な目で見る必要があるのは言うまでもない。
常に日本が手本とするアメリカでは、水道事業はいまだにその大部分が公営である。電力の民営化は進んでいるが、アメリカの水道は公営事業の最後の砦といえるかもしれない。
民営化から再公営化
そのアメリカの水道民営化の事例として、フランスとアメリカ企業の合弁会社、ユナイテッド・ウォーターサービスに、1999年に20年契約で水道事業を委託したのがアトランタ市だった。アトランタ市はこの契約で年間2千万ドル(約24億円)の経費を節約し、それを返済原資として水道設備を修繕するための資金調達をするはずだった。
しかしこの1月、契約が解消された。2019年までユナイテッド・ウォーター社が行うはずだった水道事業は、再びアトランタ市の手に戻されたのである。これによって同市は水道事業を一からやり直すこととなり、地方納税者にとってはその修繕費として今後5年間に最低でも8億ドル(約960億円)の負担増になる。
しかも最近まで同市の水道は水が濁るなど、たびたび問題が起きていたという。今回、公営だった水道が民営化され、再び公営化されたのだが、水質汚濁問題などが発生した場合、民間企業が請け負っていたとしたら市民はどうやってそれを改善させられたであろうか。
契約を解消したユナイテッド・ウォーター社の場合、運営管理に問題があったことは認識しているが、アトランタ市の水道設備の状態が予想以上にひどく、利益が望めないとして契約解消に至ったとしている。
アトランタ市の再公営化は、アメリカにおいて水道の民営化の勢いにブレーキをかけるかもしれない。しかし自治体の財政が厳しくなれば、「うちならもっとよいサービスを提供できる」と名乗り出る民間企業がこれからも出てくるだろう。
価格よりも水質重要
アメリカ政府の予測では、自治体は今後20年間に水道設備に対して約1兆ドル(120兆円)の新規投資が必要になるという。例えば、アトランタ市をとってもその上水道は19世紀に配管を整備されたもので、90年代半ばから水道管に問題が出始めていた。
またそのころ、アメリカ政府が水質基準の順守のために安全基準を満たしていない自治体には罰金を課すことを検討し始めた。1999年にアトランタ市がユナイテッド・ウォーター社と契約を結んだのも、4200万ドル(約50億円)に膨れ上がった公共設備予算を半分以下に削減したいという希望からだった。
公営に戻ったアトランタ市の水道事業費は、ユナイテッド・ウォーター社に支払っていた2200万ドルから、年間4千万ドルに倍増した。しかしそれによって水質は改善されると同市は主張する。私もこれが民営化の最も重要な論点であると思う。水道料金の価格や効率性ばかりが指摘されるが、水道は住民の命に直結している。
電力の民営化によってカリフォルニア州が深刻な電力不足となるなど、地元産業や市民に大きな影響を与えた。規制を取り払い、変動の激しいスポット市場で電気を調達しなければならなくなった電力会社は支払い不能となり、96年の民営化からわずか五年で公的資金の投入という結果になった。
民営化とは、利益を追求する者の手に運営を任せることである。だからこそ、水なしに生きてはいけない人間はその水を四半期ごとの利益のために管理させるようなことになってはならないと私は思う。