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三洋電株に資本不足の壁――日経金融スクランブル
21日の東京株式市場で日経平均株価は続落。厚生年金基金の代行返上に伴う売りが自動車、電機など国際優良株に広がった。なかでも電機はソニーが昨年来安値を更新したほか、前日の取引終了後に2003年3月期の予想連結営業利益を上方修正した松下電器産業も反落。大手電機株はほぼ全面安の展開となった。
大手電機9社の2002年10―12月期連結決算は各社とも最終損益が前年同期比で改善したが、その度合いにはばらつきが出ている。ソニーの最終利益が1254億円と四半期ベースで最高を記録したのに対し、東芝、NEC、富士通の3社は最終赤字。日立製作所と三菱電機は10億円強の小幅な黒字だった。大手電機の中でも民生用と産業用で格差が目立ってきた。
市場関係者の間で「3S」と呼ばれる銘柄がある。ソニー、シャープ、三洋電機の頭文字をとって民生用電機3社を指す。この3社は大手電機各社が2002年3月期に営業損益段階から大幅赤字に陥った時期でも黒字を確保したという共通点を持つ。「経営資源の選択と集中で先行しており、収益が底堅い」(矢野正義・東海東京証券投資情報部上席マネージャー)といった評価もある。
しかし、21日終値をみると、ソニーの4000円台、シャープの1000円台に対し、三洋電は東芝や三菱電、富士通と同じ300円台にとどまる。三洋電株が中低位に置かれている理由を分析すると、三つの要因が浮かび上がる。
まずは白物家電の販売不振による収益力低迷。白物家電を担う電化機器部門の営業損益は2003年3月期に85億円の営業赤字(前期は8億円の赤字)を見込むが、すでに2002年4―12月期で89億円の赤字を計上している。同分野の国内人員をグループ内で再配置するが、この過程で退職者が出る公算が大きい。退職加算金の計上で今期の最終利益が従来予想の80億円を下回る懸念がある。
第二は株式の過剰流動性。三洋電の発行済み株式数は約18億株でソニー(9億株)、シャープ(11億株)を上回る。金融機関の保有比率はソニーは2割弱だが、三洋電とシャープは5割を超え、持ち合い解消売り圧力も強い。シャープは株式総数十億株、金融機関比率4割以下を目標に定めて自社株買いを進めているが、三洋電は数十億円規模にとどまっている。
それ以上に見逃せないのが、株主資本の充実が遅れ気味なこと。三洋電の前期末の株主資本は約6000億円。1999年3月期に258億円の最終赤字になったことも響いて株主資本は98年3月期末に比べ1500億円減少した。ちなみにソニーの株主資本は2兆円強、シャープは約9000億円に達する。
三洋電の株主資本比率は約22%で、シャープ(47%)、ソニー(29%)を下回る。株主資本を核とする資本構成は債券格付けや資金調達コストを左右する要因であり、その優劣は中期的にみた場合の収益力格差につながる可能性がある。
三つの要因は相互に絡み合いながら、同社の行動を制約している。白物家電の収益構造を速やかに改善するには人員削減や拠点統廃合など大規模なリストラが必要だが、同社にとってリストラ損失計上に伴う株主資本のこれ以上の減少は避けたいところだ。過剰流動性の解消には自社株買いが有効だが、やはり株主資本を痛めてしまっては元も子もない。
資本不足とリストラとのジレンマに直面しているのは三洋電に限った話ではない。電機業界では前期にリストラ損失の計上により、大手9社合計で1兆9000億円の最終赤字に陥った結果、株主資本が前の期末に比べて16%減少。株主資本比率は24.5%と3ポイント強低下した。産業用大手5社のうち日立製作所を除く4社は10%台に低下しており、前期並みのリストラを再度実施することは財務上は不可能になっている。
大手電機9社合計の今期の最終損益は2300億円強の黒字見通しだが、その水準は赤字転落直前の2001年3月期の半分にも満たない。従来型の対処を続けている限り、製造業の本格的な収益回復はあり得ない点を市 場は熟知している。(小林茂)