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(回答先: 塩川財務相、G7で中国人民元切り上げ提起へ【読売新聞】 投稿者 ご破算に願いましては 日時 2003 年 2 月 21 日 15:00:59)
国際金融トピックス No.44
2003年2月7日 人民元の行方
国際通貨研究所 研究員 糠谷英輝
世界第5位の貿易大国、世界最大の直接投資受入国、世界第2位の外貨準備保有国へと中国は急成長を遂げている。一方で中国の為替相場制度は、公式には人民元相場は市場の需給によって決まる「管理変動相場制」であるとされているが、資本取引は幅広く規制され、中央銀行である中国人民銀行が人民元相場を厳格にコントロールしており、実際には「米ドル・ペッグ制」となっている(1ドル=8.3元)。
最近、世界経済が低迷する中で、中国の輸出が増加する状況を受けて、中国はもはや国際経済に組み込まれているとして、人民元の切り上げ、あるいは変動幅拡大を求める米国・日本をはじめとした対外圧力が高まってきている。しかし中国国内では農村部を中心とした過剰な労働力、国営企業の民営化や企業競争の激化による今後の失業者増加も予想されている。生産の増加、輸出の増加による持続的な高成長は社会不安を防止するためにも中国にとっては必須の課題であり、このために人民元の安定は必ず確保されるべきものとされている。輸出増加に影響を与え、デフレ化でさらに輸入価格が低下する人民元の切り上げは、対外圧力が高まったとしても、中国にとっては受け入れ難いものである。
人民元の変動幅拡大はどうであろうか。外国為替取引を行う中国外為交易中心の取引時間が拡大されたり、これまで中国銀行と中国建設銀行のみに認めていた先物為替取引を中国工商銀行にも認めるなどの決定がなされ、これらは人民元の変動幅拡大への布石だとのコメントも見られる。しかしいずれも貿易取引の拡大等による為替増加に対応したものに過ぎず、近い将来の人民元為替相場制度の変更を暗示するものではないというのが、現地の一般的見方である。北京の新体制が発足する時期でもあり、現状を変更する時期にはないとの声も聞かれ、また当局自体、今後の国際収支の変化を未だ予想し難い状況にもある。
他方、地場企業の対外投資規制の緩和(資金流出制限を緩和するもので人民元切り上げ圧力を緩和することも意図されている)、国内資本市場を制限付きで対外開放する適格外国機関投資家制度(QFII)の導入、一部地方に限った部分的な金利の自由化など、中国は諸規制の緩和や市場開放を極めて慎重に進めてもいる。これらはWTO加盟による金融サービス分野の開放(2006年)に向けた準備でもある。資本取引を自由化していけば、人民元の固定的な為替相場制度も変更を余儀なくされてくる。その際にはアジア通貨危機の経験からして、いわゆるシークエンシング(順序付け)が重要なポイントとなってくるもので、この点は中国も明確に認識している。具体的には国内の金融市場の整備、効率的な金融政策の運営、金融監督体制の確立、そして不良債権問題を抱える国内金融機関の健全化・競争力強化などを行った上で、人民元為替相場制度の改革を行うということである。
それまでの間に仮に変動幅が拡大されたとしても、そもそも公式には管理変動相場制であり、人民元為替相場制度の改革が発表されることはないであろう。資本取引の自由化や市場開放を段階的に進めていき、これによる資金の移動・為替需給の変化を把握した上で、相場水準の調整が必要であれば、人民元相場をこれまでと同様の手法で、すなわち豊かな外貨準備を使って人民銀行が厳格なコントロールの下で調整していくというシステムは今後数年の間で、変わることはないものと予想する。
転載元
http://www.triltd.co.jp/japanese/iima_topics/topics_kiji/01_topics_no44.htm