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「金融審議会での議論が今後どのような形で進もうと、繰り延べ税金資産の取り扱いについては、銀行業界と金融庁との間では既に結論が出ている。その一件については我々−−つまり銀行業界サイドとしては、全く心配していない−−」
大手都銀首脳が、こう断言してみせる。
去る2月6日、首相及び金融担当大臣などの諮問機関である金融審議会に設置されたワーキンググループ「自己資本比率規制に関する作業部会(座長・池尾和人慶大教授)」の初会合が開かれた。
大部分の大手マスコミはこの作業部会の動向について全くフォローしようとしないが、銀行業界サイドはその議論の行方について、まさに固唾をのんで見守っているのが実情だ。
それというのも、竹中平蔵経財・金融担当相が火を付ける形で、昨年秋に大きな議論を巻き起こした“税効果会計”についてこの作業部会では集中して議論を行うからだ。
そもそもこの“税効果会計”とは、不良債権を処理するにあたって有税で引当金を積んだ場合に(つまり、税引き後の利益から引当金を積んだケース)、将来的に融資先が経営破綻するなどして払い込んだ税金が戻ってくることを想定し、その戻り分を自己資本に導入するという会計上の仕組みのことを指す。
現在、金融庁の事務ガイドラインでは、今後5年間の利益見込み額の合計額を上限に、“戻り分”の自己資本への参入を認めている。
「この事務ガイドラインを受ける形で、銀行各行は積極的に“税効果会計”のメリットを享受することになったのです。この結果、繰り延べ税資産の自己資本算入(税効果会計)が、実際の自己資本に占める割合は、メガバンクの場合20−30%にも達しているのが実情なのです−」(金融庁幹部)
竹中大臣の主張としては、本当に戻ってくるのかどうか分からないものを−赤字決算書で利益をあげられなければ、繰り延べ税金資産は戻ってこない−、ジャブジャブに自己資本に算入するのは不適切、というものだ。
つまり邦銀の自己資本は、“税効果会計”によって実力以上にカサ上げされている、という主張に他ならない。
「竹中大臣が昨年段階で想定した当初の構想では、米銀なみの10%を上限とする、という内容だったのです。しかしこの“構想”には、与党、財務省、銀行業界等が一斉に強く反発したために、論議は先送りされてしまったのです」(金融庁幹部)
そして、その“先送り”を受ける形で発足したのが、前述の作業部会だったのである。
「とはいえ、米国と日本では税制の面で大きな違いがあるのが実情です。つまり広範囲に無税償却(無税で引当金を積むこと)が認められている米国と、それが認められていない日本では、“税効果会計”のあり方について同じ土俵の上に立って議論することはナンセンスです。つまり、“税効果会計”は、税制とワンパッケージの形で議論すべきなのです」(メガバンク役員)
万が一、竹中プランが実施されたならば、自己資本比率8%割れ−公的資金再注入を受けなければならない大手行が続出する。それだけに銀行業界は必死だ。
本稿冒頭の大手都銀首脳が言う。
「しかしその件については、行政当局と銀行業界との間では“税効果会計”の見直しをするならば、税制とワンパッケージの形で行う、という合意が形成されているのです」
まずそうした、“結論”ありきでスタートした作業部会なのだが、その議論の行方には要注目だ。
2003/2/17