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(回答先: 人材は外で育つのか 投稿者 日時 2003 年 2 月 14 日 01:28:55)
☆日本から金だけでなく高度技術や人材も中国に流れる時代だとすると、日本人の賃金が中国並みに低下するまで日本への投資復活は無く、その時には中国には二度と追い付けないレベルまで落ちてるカモ
知財戦略で勝つ
第11回「どう対応する中国での知財ノウハウ流出」
(科学ジャーナリスト 馬場 錬成氏)
最終更新日時: 2003/02/14
2月12日、東京で開かれた日本貿易振興会(ジェトロ)主催の「中国・台湾における知的財産の保護」セミナーは、海外に移転した企業の知的財産に関する課題が続出するものとなった。
特に、石油類試験器の専業メーカーであるT社が受けた中国での模倣品被害のケースは、ノウハウ流出の典型的なケースであり、今後の日本企業の中国での活動のあり方を考えさせた。
退職部長が製品図面をコピーし持ち出す
T社は、95年10月、上海に合資会社を設立し、最新技術の製品の現地生産を開始した。しばらくして、現地社内で営業と製造が反目する内部抗争が発生し、99年3月に中国人の製造部長が退職していった。部長は退職直前に、大量の図面をコピーして持ち出している現場を社員に目撃されている。
間もなく、辞めた製造部長はT社の部品仕入先であり日系の独資企業に転職していることが判明した。半年後、その企業からT社製品とそっくり同じ製品が売り出された。T社は、日本の不正競争防止法の中国版である「反不正競争法」違反で、その企業を裁判所に提訴した。
反不正競争法第10条
経営者は、次の各項に掲げる手段を用いて商業秘密を侵害してはならない。
(1) 窃盗、利益による誘引、脅迫その他の不正な手段により権利者の商業秘密を取得すること。
(2) 前号の手段により取得した権利者の商業秘密を開示し、使用し、又は他人の使用を許可すること。
この条において商業秘密とは、公衆が知悉しておらず、権利者のために経済的利益をもたらすことができ、実用性を有し、かつ権利者が秘密保持の措置を講じている技術情報及び経営情報をいう。
T社はこの条文を根拠に、秘匿されたノウハウは中国でも保護されると考えたのである。T社は中国人弁護士を代理人にして、01年6月「訴訟物に係る技術開発過程と証拠物」を法廷に提出した。相手側が「製品は模倣品ではなく、自社で開発したものだ」と主張したため、裁判所に「司法鑑定」を申請した。
被告の全図面を提出させて原告の図面と照合し、模倣を立証することを裁判所に訴え、短期間でそっくり同じ製品を製造できたのは、T社から持ち出した図面によるもの以外不可能であると主張した。相手が自力製造と主張するなら、その実現手段を立証させる訴えもした。
相手側の企業の親会社は、東京に本社のある日本企業である。もしかしたら東京の親会社は、中国で提訴されていることを知らない可能性もある。そう考えたT社は2002年4月、東京本社に提訴の事実を通告した。通告した2日後に、東京本社の執行役員が、東京のT社を訪れてきた。説明を聞いて、相手側は示談の可能性についての発言もあった。数日後に再び社長を伴って来訪した。社長は「この部門は閉鎖させる。上海責任者を聴取し、問題があれば一緒に再来訪する」と言って帰った。しかし結果的に、その企業は部門の閉鎖もしないし、再来訪することもなかった。
中国裁判所の司法鑑定に仰天
石油類試験器の専業メーカーであるT社から、中国人の製造部長が大量の図面を持ち出してライバル企業に移った。その直後から、T社製品とそっくり同じ製品がその企業から市場に出回ってきた。T社は反不正競争法違反として裁判所に訴えた。
裁判所は、T社側の請求による司法鑑定をするため、上海の大学教授と2人の技術者を鑑定人に指名した。司法鑑定の結果は「逆工程で模倣できる程度の技術は公知であり、商業秘密とは言えない」であった。
鑑定結果にT社は仰天した。「模倣できる程度は商業秘密ではない」。コロンブスの卵の逸話を否定する結論である。これではどのようなノウハウも企業秘密にはなり得ない。代理人の弁護士からは、「中国の法廷は技術音痴である。技術鑑定の結果は最終決定になる。この裁判は敗訴する。おかしいと思うが控訴審に持ち込んでも勝てる見込みがないし、金もかかるので提訴を取り下げることがもっとも傷が軽い」と言ってきた。
一審で敗訴すると裁判費用も鑑定費用も全額戻らないが,判決前に取り下げれば、中国では裁判費用の半額が返還される。資金力の余りないT社にとっては、それも重要な選択肢になるが、それ以上に弁護士が意気消沈してやる気を失っていることが気になった。結局、泣く泣く提訴を取り下げた。
この事件は、いくつかの教訓を残している。
事件が残した教訓
まず第1に、中国に進出した日本企業の図面の管理体制であり人材の流出である。製造部長は会社を辞める直前に大量の図面をコピーしている。また、この部長に続いてT社からは、営業部長、技術部長と相次いで裁判で訴えたライバル企業へと転出している。図面だけでなく、人材と一緒にノウハウも流れたのである。
最近、図面などの企業秘密の管理を厳しくする日系企業が増えたと言うが、まだまだ管理が甘いと指摘する人は多い。また、次々と幹部社員がライバル社などに引き抜かれたり転出するケースは、中国ではよくある例だと言う。引き抜かれるごとに給与などの待遇は上がっていく。
第2に、中国の司法判断の未熟さである。司法鑑定そのものが判決と同じように扱われるようであり、裁判所が鑑定人をどのような基準で選定するのか不透明でもある。裁判官のさじ加減一つで鑑定人が決まり、鑑定結果が決まるような印象を与えているのも公正さを疑わせる。また、このような裁判を担当する弁護士も力量不足であるとの印象を残している。
第3は、中国に進出した日本企業の現地法人を、日本の本社がコントロールできないようなケースが出てきていないかという危惧である。今回のノウハウ流出、模倣品製造事件でも、東京本社は中国の現地法人がやっている不正行為を知っていながら放置せざるを得ないほど、現地法人への依存度が大きくなっているのではないかと言われている。
もしこの観測が当たっているなら、中国での現地法人の知的財産の管理や経営のあり方をもっと戦略的に考えていかないと、大手企業でも同じようなことになるのではないか。中小企業が中国で起こし、結果的に敗訴したノウハウ流出事件は、多くの教訓を残している。
■第10回「特許庁は審査官を大幅増員せよ」(2003/01/30)
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■第4回「田中耕一さんのノーベル賞と企業の特許戦略」(2002/10/17)
■第3回「お粗末だったノーベル賞業績の特許戦略」(2002/10/15)
■第2回「職務発明規定を廃止せよ」(2002/09/13)
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