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東京 ２月12日(ブルームバーグ)：日本銀行は13、14日の２日間の日程で、政策委員会・金融政策決定会合を開く。「当座預金残高目標が15−20兆円になるよう金融市場調節を行う」とした金融調節方針は据え置かれる見通し。月内にも明らかになる次期日銀総裁人事を前に、金融政策は模様眺めを決め込むことになりそうだ。
１月の金融経済月報は、景気の現状は「全体として下げ止まっているが、回復へ向けての不透明感が強い状態が続いている」、先行きは「景気回復への動きがはっきりとしない状態がしばらく可能性が高い」として、いずれも前月の判断を据え置いた。２月はイラク情勢をめぐる不透明感が増していることへの警戒感が強調される可能性はあるが、現状、先行きとも、概ね１月の判断が踏襲される見込みだ。
注目の日銀総裁人事については、福田康夫官房長官は10日午前の会見で「（21、22日の７カ国財務相・中央銀行総裁会議の前に明らかになることは）ないのではないか。現職の総裁がＧ７に行かれるということであれば、もうすぐに代わるという看板をぶら下げて行くわけにいかない」と述べており、月末までずれ込む見込みだ。株価は安値近辺で推移しているが、短期金融市場が極めて落ち着いていることもあり、金融政策は現状維持の公算が大きい。
マネーの伸びは鈍化
ただ、年度末を控え、引き続き金融政策には強い圧力がかかりそうだ。14日公表される昨年10−12月の実質国内総生産（ＧＤＰ）はマイナス成長に落ち込むとの予想が多い。昨年初めに底を打ったとみられる景気循環も、昨年後半には既にピークを打ったとの見方が強まっている。イラク情勢をめぐる不透明感から米国株も不安定な動きを見せている。イラク攻撃などを受けて米国株に波乱があれば、日本の株価も影響を免れない。
日銀券、貨幣流通高、日銀当座預金を合わせたマネタリーベースの前年同月比伸び率は、１月には13.4％増と昨年11月（21.8％増）、12月（19.5％増）から急速に鈍化。１ケタ台になるのは時間の問題だ。同月のマネーサプライ（Ｍ２＋ＣＤ）伸び率も2.0％増と、2000年12月（2.0％増）以来の低い伸びにとどまった。竹中平蔵経済財政・金融担当相はマネーサプライの伸びを引き上げるよう日銀に要請しており、日銀に対する圧力を強めるのは必至だ。
昨年12月の決定会合では、複数の日銀政策委員が「先行き、金融市場の大きな変動等を機に実体経済が悪化に向かうような場合には、追加緩和の可能性を検討する必要がある」と述べている。年度末を控えて、株価の一段の下落などで金融市場に動揺が走れば、当座預金残高目標の一段の引き上げ、長期国債買い入れの増額などの追加緩和に踏み切る可能性もあろう。
追加緩和なら従来型の量的緩和
日銀の当座預金に関しては、４月に発足する日本郵政公社が既に一定の残高を積むことを決めており、その残高は１兆円以上の規模になる見込みだ。次回３月４、５日の金融政策決定会合では、郵政公社の当預残高が増える分だけ、機械的に当預残高目標が引き上げられる公算が大きい。マネタリーベースの伸び率がここに来て急速に鈍化しているだけに、そのタイミングで追加緩和に踏み切れば、見かけ上のマネーの伸びを維持することができる。
長期国債買い入れ増額が従来通り月2000億円にとどまれば、日銀券発行残高という上限にもまだ余裕もある。ただ、長期金利がこのところ史上最低水準（長期国債相場は最高値近辺）で推移していることもあり、日銀内では、長期国債の買い入れ増額に慎重な見方が増えているのも事実だ。日銀としては、買い入れ増額が相場上昇を加速させて潜在的な下落リスクを高め、将来仮に相場が崩れたとき、犯人扱いされるような事態は何としても避けたいはずだ。
しかし、そうかと言って、速水総裁の最後となる３月の決定会合で、従来の量的緩和路線を逸脱し、日銀が指数連動型上場投信（ＥＴＦ）の買い入れなど非正統的な政策に走ることも考えにくい。銀行保有株買い入れ枠を現行の２兆円から拡大するという選択肢についても、日銀内には抵抗感が強い。年度内に金融市場の波乱などで追加緩和が必要になった場合には、消去法によって、従来型の量的緩和の拡大が最有力候補であることに変わりないだろう。
東京 日高 正裕 Masahiro Hidaka
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