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「有事に相当の反騰相場が期待」大和総研アメリカ・副社長 岡野進氏
投稿者 Ddog 日時 2003 年 2 月 05 日 23:37:32:

エコノミスト「有事に相当の反騰相場が期待」大和総研アメリカ・副社長 岡野進氏

エコノミスト情報VOL.84大和総研アメリカ 副社長 岡野進氏03/02/05

【景況判断】現状(3ヵ月前比):横ばい 先行き(3ヵ月後):横ばい
GDP予測:02年度1.2%(0.8%) 03年度1.2%(0.1%)
【金 利】短期:横ばい TIBOR3ヵ月 0.09%
長期:強含み 10年物新発国債0.90%
【円 相 場】強含み115円/1ドル
【株 価】株高 日経平均10,000円
l GDP予測値は実質GDP成長率、前年比%。カッコ内は直近10回分の平均値
l 長短金利、円相場、株価は3ヵ月後(03年5月末)の予測値

1.景気見通し:「春頃に設備投資拡大に転じられるか」

前回コメント(11/20)で、景気の本格回復には「3兆円規模の有効需要創出策が必要」としたが、政府の経済対策はこれには達しないものとなった。

2002年度の補正予算における公共投資1.5兆円追加のかなりの部分が有効需要増加に直接寄与すると思われるが、景気回復を確実にするというところまではいかなかった。やはり、研究開発減税、投資減税も民間の投資を誘発するという方向性としては正しいものの、全体規模は控えめに過ぎるのではないだろうか?

輸出の回復が一服し、製造業は停滞局面に入っている。一方で、意図せざる在庫増加の発生という事態には至っていない。輸出も相手国のGDP水準との比較でみると過剰状態にあるわけではなく、したがって、大きな調整圧力は今のところでてきていない。米国の景気スローダウンが深刻な不況へと転換しない限り、日本についても景気後退ではなく停滞局面が継続するとみておくべきだろう。

米国の2002年10-12月期GDP成長率(速報値)は年率0.7%と停滞を示すものとなった。個人消費の減速(1.0%)、輸出の減少(▲1.7%)が響いた形だが、一方で、民間設備投資の増加(1.5%)という景気循環的なポイントでポジティヴな面もでてきた。建設投資が▲9.3%と依然下向きだが、機器・ソフトウェアは5.0%増加で4-6月期以降の増加への転換傾向を維持している。

一方、景気回復の主要因であった在庫投資は33億ドル(96年価格)へとスローダウンした。2001年の在庫ストック大幅減から循環的に増加に転じた在庫投資が一服してきている。ただし、在庫ストックの積みあがりは生じていないので新たな在庫調整局面が必要になっているとみる必要はない。むしろ最近の動きとしてインフレ連動債の利回りが低下しており、期待実質金利が低下していることが半年後には設備投資にポジティヴに利いてくる可能性もある。90年代後半のような盛り上がりは期待できないが、情報関連を中心にペントアップ需要による投資回復が景気を再び加速させることとなるだろう。

こうしてみると、日本の輸出もしばらく停滞状況が続くものの、2001年のように急減して景気後退の主要因になるということはないであろう。景気動向の最大注目点は遅れている設備投資の反転時期である。2002年は製造業の生産が回復したが通常観察される生産のモメンタムの改善が約半年遅れで設備投資の改善をもたらすというルートが切れているかにみえる。稼働率水準が一定のしきい値に達していないからであるとする説明もあるが、産業ごとにみていくと、鉄鋼のように稼働率水準がバブル期の水準に戻った産業でまったく設備投資に増加の動きがでていない。

一方で、稼働率水準としては低いままの電機産業で半導体関連の設備投資の増加が起きてくる可能性もある。むしろ、今回は世界景気全体の不透明感が強い中でモメンタムの改善に対して設備投資がでてくるのが「遅れている」と見るほうが良いのではないか。

研究開発減税やIT投資減税がきっかけとなって春以降設備投資が反転してくる可能性はまだ大きいとみる。

2.金融環境:「反騰相場の可能性−イラク懸念の裏側でファンダメンタル改善の動き」

1/27、国連査察団の安全保障理事会への報告が行われた。イラクに対する評価はあいまいさが残り、査察が延長されるということになっているが、2/5に行われる大使級の会議の結果次第では、早期に米国の開戦に向けた動きがでてくる可能性がある。ブッシュ政権は2/5にもイラクの大量破壊兵器保有に関する証拠を提出するとしており、それをテコに武力行使の正当化を行う構えである。一般教書演説やその後の演説にもみられたとおり、フセインが亡命するのでない限り、ブッシュ大統領は対イラク開戦を決意しているようだ。

イスラエルにおいては、労働党が連立を離脱した結果行われた総選挙(1/29)で右派リクードが勝利し、パレスティナ問題での強硬姿勢を継続することになった。対イラク戦争と同時にパレスティナ状勢が悪化すれば、世界経済にとっての長期的なリスクに発展する可能性があるといえるだろう。

一方、対イラク開戦のショックにより大きな株安が生じた場合には、米国金融当局はただちに利下げなどの金融緩和措置をとることは間違いない。金融当局の関心は実物経済の短期的な景気動向だけでなく日本の90年代後半以降のようなモノのデフレと資産デフレのスパイラル発生のリスクにあり、それを断固として阻止する構えを持っている。 株価暴落を放置することはありえない。

しかも、世界の株式市場はすでに対イラク戦争のネガティヴ要因を相当程度に織り込んでしまっているように思われる。ダウ工業株30種8000ドル水準のP/Eレシオは20倍程度であり、益回りは5%になる。長期金利との比較においてもかなり割安状態に入っているといえるだろう。企業業績も10-12月期決算発表の動向を見る限り、全体的には収益回復の継続が確認できる。そうした基礎条件に注目すれば、事が起きた後には相当の反騰相場が期待できるのではないか。

前回コメントで、米国金融動向を見る上で2つのキーポイントを挙げた。ひとつは期待インフレ率で、これを上昇に方向転換させ、2%程度に戻すことができるかどうか。もうひとつはクレジットリスクプレミアムの問題で、こちらは例えば10年国債とBaa格社債の格差で3%以内に押さえ込むことができるかどうか、この辺りが追加利下げをせざるをえなくなるかどうかの試金石である。

期待インフレ率は、2010年満期のインフレ連動債と普通国債の利回り差でみると1.15%(02/10/29)まで低下した後、1.63%(1/28)まで回復してきた。10年国債利回りとBaa格社債の利回り格差でクレジットリスクプレミアムの動向を観察してみると、3.90%(02/1 0/9)をピークとして、3.18%(1/28)にまで低下している。どちらもまだ十分ではないが、前回利下げ時より改善していると認識できるだろう。ただし、3月の次回FOMCまでに更なる改善がでてこない場合には追加利下げがあると考える。

3.注目点:「元切り上げの可能性とインパクト」

GDPデフレータを利用して中国元の対ドル購買力平価を試算してみると、1996年以降で16%程度上昇している結果となる。現実の元レートが変化していないことを考えると、購買力平価との関係で中国元は上昇のポテンシャルをもっていることになる。
これまで、中国元の水準について積極的な発言をしてきたのは日本の財務省であるが、米国の対中国貿易赤字も2002年は11月までの累計990億ドルに急増しており、かつ急増傾向が続いている。対日赤字679億ドル(同)、対EU赤字773億ドル(同)と比較しても、もはや、米国にとって無視できない赤字規模になってきた。中国元の適切な切り上げを求 める動きに米国が同調する可能性はあるだろう。

中国としても、2600億ドルを超えている外貨準備をやたらに積みましても意味のないことであり、適正な相場に元を調整することは中国の内需拡大、自立的経済成長にも役立つ。ただし、現在の中国は国内的にもデフレ傾向があり、WTO加盟による輸入の増加がまだ読み切れていない段階であるので、ただちに切り上げに踏み切ることは難しいのであろう。しかし、今年秋以降には現実性をもった課題として討議に上ってくる可能性は十分にある。
仮に、中国が元切り上げに踏み切れば、これまで中国の生産コストの安さに依存することでうまくいってきた事業、企業に対し、中国市場自体に焦点をあてた事業、企業が相対的に浮上していくことは間違いない。

日本のデフレ克服には良い影響があるだろうか。ひとつのマイナス要因がなくなることは事実である。中国からの輸入は7.7兆円(02年)で日本のGDPと比較すると1.5%となる。これが元切り上げで15%値上がりしたと仮定した時の日本のGDPデフレータへの直接的影響は0.3%といったところであろう。無視できるほどではないが、かといってこれで解決できるという話でもない。

<岡野進氏略歴>
1956年生。80年東京大学教養学部基礎科学科卒、大和証券入社。本店第二営業部、株式部、投資情報部、大和総研経済調査部長などを経て、2002年7月から現職。主な著書「株価革命とエクイティ・ファイナンス」(東洋経済新報社)、「株価・金利・為替の読み方」(東洋経済新報社、共著)など。東洋経済「統計月報『エコノミスト・コンセンサス』」などのコメンテータ。エコノミスト人気調査ランキング19位(2002年3月25日付日経金融新聞)。

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