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(回答先: 野口旭の「ケイザイを斬る!」 第2回 「構造」なる思考の罠 投稿者 TORA 日時 2003 年 2 月 04 日 11:19:06)
野口旭氏は、「構造デフレ論」批判やデフレ解消に資する金融政策の重要性を傍証するために、歴史的経済事象を持ち出している。
歴史的経済事象を考察することは意味があるが、とりわけ経済社会の“原理”が異なる時代のものはその取り扱いに慎重さを要する。
>構造的デフレ論の家元の一人に、「デフレ革命」なるものを唱えているエコノミスト
>がいる。そのエコノミストはかねてから、「歴史的には、輸送技術の改善によって取
>引圏が広がったときにデフレが起きている」と主張している。筆者が常々尊敬してい
>るある経済学者が教えてくれたのであるが、試みにこのエコノミストの主張を大学の
>講義で紹介したところ、一人の学生が感きわまって「そいつは馬鹿かあ!デフレを止
>めるには鎖国しろってことか!吉宗の時だってデフレだったぞ!」と叫んだそうである。
>確かに、徳川吉宗の時代には、吉宗が「享保の改革」と呼ばれる緊縮政策を実行した
>ことが原因で、厳しいデフレが生じている。しかし、「元文の改鋳」と呼ばれる通貨
>供給拡大政策を実行したとたんに、デフレは嘘のように止まり、経済情勢が顕著に好
>転したことが知られている2)。デフレとはあくまでも貨幣的現象であり、「グローバ
>ル化」なるものとは無関係であることを示す史実といえよう。上記の学生の経済学的
>センスが、このデフレ革命を唱えるエコノミストよりもはるかに上に思われることだ
>けは確かなようである。
吉宗の時代は、政府(幕府)支出が米以外の商品に対する最大の需要である。
政治的安定のなかで江戸期に米をはじめとした財の生産性(供給力)が傾向的に高まっていたので、幕府支出が緊縮に向かえばデフレになる経済的条件にあった。
「元文の改鋳」でデフレが解消されたのも事実だが、それは限定的な国際交易しか行わない鎖国であったことや通貨が幕府発行で国内(それも幕府領内中心)であったことを考慮しなければならない。
江戸期の経済が自由貿易や国際通貨システムに組み込まれていたとしたら、「元文の改鋳」でデフレが解消できたかどうかははなはだ疑問である。
閉鎖経済体制で幕府が通貨発行権者+主要需要者であったことが、政策の通用性を保証したと言える。
「元文の改鋳」をもって、現在のデフレ解消方策の傍証とする野口旭氏の論は乱暴である。