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ニューヨーク 1月28日(ブルームバーグ):わたしは「対イラク攻撃懸念でドルが下落」というニュースを見聞きするたびに当惑する。
ドル安要因は複数あるが、イラク問題は関係ない。短絡的なドル相場とイラク攻撃懸念とを結びつけることに実質はない。対イラク戦争が短期で終わるにせよ長期化するにせよ、中東に民主主義を伝える、あるいは中東全体を揺るがす戦争というものは、ドル相場にとって本質的にマイナス材料ではない。戦争が長引き大量の米兵の死体が本国に送還されるという事態がない限り、心理的にドルの魅力がユーロに劣ることはないだろう。
かつてソ連の崩壊時には、新たなニュースが走るたびに、地理的な近さからドイツ・マルクの悪材料になった。対イラク戦争が中東を揺るがせば、同じ理屈で近隣の欧州通貨がリスクにさらされることになる。
戦争懸念によるドル下落という論議には、しばしば政治的な意図があるように思える。対イラク戦争懸念でドルが下落する場合、全世界的な支持の有無にかかわらずイラクをたたこうとするブッシュ米大統領のやり方に不満の欧州諸国が、米国から資金を引き揚げることによってその意思を示そうとする政治的な意図があるのではないか。
イラク攻撃によって対米投資の妙味は低下するだろうか。原油供給が滞り原油相場が上昇した場合、打撃を受けるのは欧州も同様。欧州の成長率は鈍化しつつある。一方、米国がイラク再建という重荷を担わなければならない場合は、財政赤字が3000億ドルにも達すると懸念されているときに、政府借り入れの増加と歳出拡大につながるだろう。イラクの原油収入を再建費用に利用できると考えるかもしれないが、イラクのフセイン大統領が手練手管でそれを阻止する可能性もある。
ファンダメンタルズ
ドル相場は過去1年間下落し、特に過去3カ月はそのペースが加速している。大勢の市場関係者が毎日、市場に関し独自の見解を示しており、その理由を1つだけ取り上げるのは常に至難の業だ。市場のモメンタム(勢い)は重要な役割を果たし、ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)は実際の動きを決める。
米国の経常収支の対GDP(国内総生産)比率は昨年第2四半期(4−6月)、第3四半期(7−9月)はそれぞれ4.9%、4.8%。エコノミストたちはかねて、こうした規模の赤字は「持続不可能」との見解を示している。高い投資収益率を求めて米国に資金が流入しているうちは、巨額の経常収支を埋め合わせるのに問題はない。今がその状態だ。調整はドルの下落を通じて起こる。ドル安は輸出依存型経済国の通貨上昇を意味する。
J.P.モルガン・チェースの米国担当シニアエコノミスト、グラスマン氏は「ドル安に伴うコストをだれが引き受けるかだ」とし、「中国はドル安を嫌い、欧州は窮地に陥る。米製造業者は大喜びだ」と指摘する。同氏はドル安が「長期的傾向だとは思わない。米国が中東の秩序を回復させ、原油にとって適切な環境を整えることができれば、ドル相場にとってマイナスだと思わない」と語る。
実質金利
実質短期金利もドル安の方向だ。米国のフェデルラファンド(FF)金利は1.25%、消費者物価指数(CPI)の2002年の上昇率は2.4%で、実質金利はマイナス。一方、欧州は短期買いオペ(14日物売り戻し条件付き債券買いオペ=レポ)金利が2.75%、昨年12月のCPIの前年比上昇率は2.3%で、依然として実質金利はプラスだ。
イラクは、米経済の悪いところすべての理由に引き合いに出されている。設備投資、消費者信頼感、株式相場、ドル相場が弱含みなのはイラク戦争の懸念のためだと。さて、その戦争が終わったとき、代わって何がその責めを引き受けるのだろうか。(キャロリン・ボーム)
(ボーム氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストで、このコラムの内容は同氏自身の見解です)
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