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(回答先: イラク戦に耐えられるか 薄氷の米国経済 週刊エコノミスト 投稿者 Ddog 日時 2003 年 1 月 23 日 00:30:57)
総予測3月決算
http://www.mainichi.co.jp/life/family/syuppan/economist/030128/1.html
2003年3月決算を目前に控えて、今年も「3月危機」が懸念されている。年明け早々から、朝日生命がミレアグループから離脱したり、西武百貨店がみずほコーポレート銀行など主力債権者に対して金融支援を要請するなど、企業の動きも激しい。政府は、不良債権処理を円滑に進めることを目的とした産業再生機構を今春発足するなど、金融危機封じ込めにやっきになっている。一方で米国のイラク攻撃が迫るなど、日本経済に打撃を与えかねない不確定要素もあり、企業経営は予断を許さない。3月決算を大胆に予測してみた。
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熊谷組、ダイエー、生保、商社
決算直前の状況
3月決算を前に、各社の状況や、企業再生の行方について、金融、産業界、企業監査の専門家に語ってもらった。
A=金融アナリスト
B=金融ジャーナリスト
C=監査法人会計士
――経営再建中の朝日生命がミレアグループからの離脱を決めた。
A 朝日生命は今、極めて厳しい状況だ。朝日生命にとってミレアグループとの統合が唯一の頼みの綱だった。
B 朝日生命は、確かに実質純資産や、ソルベンシーの問題があるが、それは差し迫った危機ではない。最大の問題は株安で、有価証券含み損に剰余金(配当可能な自己資本)を加えても、なおマイナス(約800億円)だ。朝日生命は、危険準備金を前期に取り崩しており、今は1億円しかない。今の水準だと基金利息を払えない可能性もあるのではないか。万が一基金利息を払えないときに、基金を出しているみずほやりそなグループは、朝日生命をどこに債務者区分するのだろう。要管理にして引き当てを積むつもりなのか。2002年度中間期時点で、朝日生命の基礎利益は、わずか292億円程度しかない。下期に約800億円のマイナスを埋めるだけの利益を捻出できるだろうか。中間期よりも、さらに、株価が下がっているので、マイナス幅は広がっているはずだ。
そうすると、方法は三つしかないと思う。一つ目は資産売却、部門売却して、剰余金のための益を出す。二つ目は、銀行から劣後ローンを取り入れて、債権放棄をしてもらう。三つ目は、これはまさに会計操作まがいだが、保険料の積み立て方式を、現在の純保険料式(注1)から、チルメル式(注2)に変える。今後は、例えばホールセールの部分を売却し、それで益出しするというシナリオも考えられる。
A それだと何も残らなくなる。
B 当然、金融庁に決算報告をするが、それは4〜5月。同時に銀行の問題も出てきてしまう可能性がある。りそなとみずほが、どう出るか。
――ゼネコンのさらなる淘汰はあるだろうか。
A ゼネコンの場合、債権放棄を繰り返してきているので、かなり有利子負債は圧縮しており、大きな動きはないだろう。
C 熊谷組の株価が9円から5円になっても、話題にもならない。常態化してしまっている。
A 熊谷組は分社化というシナリオも考えられる。問題は、メーンバンクの三井住友銀行が、どこと統合させるかだ。グッドカンパニーとバッドカンパニーの組み合わせが考えられるが、鹿島は絶対にノーだと言っている。一番分かりやすいのは、フジタの良い部門と熊谷組の良い部門を分離して統合することだろう。三井住友銀行傘下には圧倒的にゼネコンが多いので、メーンバンクの系列を乗り越える可能性も十分ある。例えばハザマが一時話題になった。
ダイエーは政府のモデルケース
――ダイエーの今後は?
B 潰す必要もないし、やはり潰せない。今の財務状況を考えると、かなり有利子負債も減ってきている。だが、本業が問題だ。既存店の売上高を見ても、昨年9月以降ずっとマイナスだし、何より問題なのは「カテゴリーバリューセンター」(CVC=価値ある専門分野の集積施設)という戦略。CVCの店舗は、再建計画だと対前年同月比で10%増という売り上げが、今のところ2%増で低迷している。しかも、今期中に不採算店を60店舗閉鎖することになっている。その中に、埼玉県の蕨店も含まれていた。蕨店はCVC構想に基づいて大改装した店だ。それをわざわざ閉めなくてはならないほど、本業が相当厳しいということだ。
A 昨年2月にUFJ銀行など主力3行の5200億円の金融支援を含む再建計画を策定した。しかし、当時でも計画の完全達成は疑問視されていた。そういう意味では、すべて織り込み済みと考えるべきだ。その落としどころをどうするか。ダイエーは既に不良債権処理のモデルケースという位置づけになってしまっているので、政府の失政を認めることになるから、潰すわけにいかない。
C ダイエーの02年8月中間決算で、単独ベースの経常利益は、当初予想の110億円を下回り、91億円にとどまった。新しい再建計画の1年目から達成できなかったということを、マーケットがどう評価するのかが注目だ。再建途上の会社で、再建計画通り売り上げを出さないといけないというプレッシャーの中で働く従業員は、精神的な面でのモチベーションは全然違うと思う。国で資本を入れるなりして、もう1回フレッシュスタートさせるのも手だろう。
将来シナリオのない商社
――商社は昨年末までに危機回避に向けた取り組みをしてきた感がある。
B ニチメンと統合する日商岩井は2兆円近い有利子負債があり、それを減らすためには何らかの金融支援が必要ではないか。統合しただけでは、本当に弱者連合で終わってしまうのでは、という気がする。またトーメンは、UFJ銀行などに1700億円の金融支援を要請したが、これで足りるか。いずれ豊田通商と統合するにしても、現時点で1兆1120億円の連結有利子負債があるから、キャッシュフローや収益力からすると、5000億円ぐらいの金融支援が必要とみる。
A これまでの特別検査では商社は対象外だったが、今回は対象になる。商社は有利子負債が膨大だから、メーンバンクはどこまで引き当てを迫られるのかが問題だ。商社は決算手法が難しい。ブラックボックスは海外事業だ。3年前、トーメンが再建策をまとめたときも、社内文書で300ページ近くの国内外の関連会社の投融資に関する内部資料があった。監査法人は、その資料を見て債務超過だと判断し、トーメンは、約2000億円の債権放棄を受けざるを得なくなった。将来的には、大手3社以外は、基本的に総合商社ではなくなるだろう。
日経平均は7000円台に
――金融庁の特別検査が1月中にも始まる。
A 昨年9月末に輪郭が出てきた竹中プランでは、ハードランディングの路線が明確に示された。ところが、例の金融再生プログラムでは具体的に厳しい方に合わすという文言には一切触れていない。前回の特別検査は、破綻させないことを前提に、3月危機を株価対策とセットで乗り切ることが目的だった。今回も同じスタンスだろう。今回の特別検査で抜本処理に踏み切るかというと、現段階ではスキーム的にも時間的にも不可能だ。特別検査は、基本的に企業救済ではなく銀行救済である。多分、ある程度要管理の幅を持たせるだろう。
C 確かに昨年11〜12月頃は、公的資金が注入されるんじゃないかと我々も監査しながら思っていた。しかし、もはや時間的に無理だ。とは言え、銀行の財務諸表を見れば、公的資金を入れないと、金融のシステムが持たないというのは、素人が見てもわかる。
A 3月決算前で一番怖いのは、株価のクラッシュや、米国によるイラク攻撃などの不確定要素だ。米国市場が減速してしまえば、日経平均株価は7000円台まで下落する可能性がある。まだまだ不透明だが、現段階でのシナリオでは、危機を乗り切るのではなくて、あくまでも回避であり、封じ込めである。特別検査が3月末で終われば、その公表が5月の大型連休前後になる。その間の2カ月間がヤマ場になりそうだ。
弾力性がある日本式DCF 特効薬にならず
――銀行の資産を厳しく見積もる米国流のDCF(割引現在価値)方式が導入される。
A あれは日本式のDCFだ。今までも日本の会計基準では、原価主義、時価会計にしてもすべて日本式でやっている。だから、日本式でいくらでも弾力性を持たせて先送りしようと思えばできる。
C 確かにDCFには弾力性がある。将来のキャッシュフローの見込みを自由に設定できるので、かなり金額にはブレがある。米国の金融機関は、企業の将来のキャッシュフローをもとにして貸している。だから、企業は常にDCFが頭にある。一方、日本の銀行の融資は担保もしくは経営者の個人保証を重視する。いずれにしても、DCFには、恣意が入る余地があるので、そんなに特効薬にはならないと思う。
A 裏を返すと、まともにやったら、みんなアウトだ。5年など長期的なスパンで見た場合に、そもそもゼロ金利の国でDCFは何の意味もない。1%金利が上がってしまえば、すべて崩れるわけだから。
しかし、少なくともDCF的な手法というのはこれから浸透せざるを得なくなってくる。そういった場合に、一番ダメージがあるのは、ゼネコン、ノンバンク、不動産より、メーカーだと思う。と言うのも製造業は、将来の収益見通しが立てにくいからだ。メーカーが一番ダメージを受けるだろう。今は、基本的にリストラ頼みだが、それも来期から限界がある。メーカーでも、株価100円割れ銘柄はいっぱいある。02年に倒産した上場企業の3分の1ぐらいはメーカーだった。
もう一つのポイントは、産業再生機構がどう機能するかだ。
B 産業再生機構の場合は人の問題がある。米国の投資銀行のように、M&Aのノウハウや人材を揃えているものを産業再生機構に期待できるのかというと、ほとんど期待できない。そうすると、メーンバンクが作ってきた再建計画に最後に判子を押すか、押さないかを判断する機能しかない気がする。
取引が停滞し中小企業は"冬眠"
――先送りの先に待っているものは。
C 長期停滞だ。
A 5〜10年は停滞するだろう。危機打開の最後のチャンスは1年前だった。あの時に問題企業を抜本処理していれば、状況は一変していただろう。
B 銀行は、自己資本比率ばかり注目されるが、その中のTier1(自己資本の中の基本的項目)の貸出総額自体が中間期で10%ぐらい減っている。つまり、企業の次の事業展開のための資金が減っている。日本の銀行の国際競争力は沈んでいくばかりだ。
A これからは、経済が縮小していくから、銀行は貸すところがない。
――大企業ばかり注目されるが、中小企業は期末を乗り切れるか。
A 去年の秋口ぐらいから、中小企業の倒産が減って、特に11〜12月あたりは記録的に少ない。銀行は、年初は体力の範囲内で中小企業の処理をやっていたが、年後半から、それすらもできなくなった。中小企業も、先行きが見えず、潰れたくないので手形を切らない。だから、不渡りが出ない。そのかわり売り上げは、激減し、じっと"冬眠"する。一方で、金融機関も身動きがとれない。結果、完全に企業間取引というものが停滞してしまう。企業は手形を切らず、現金決済なので、経済がどんどん縮小していく。多分、日本全体もそうなっていくんだろう。日本の国力そのものが、どんどん地盤沈下する。銀行も当然貸すところがなくなっていくわけだ。
B 縮小均衡というより、「縮小不均衡」。要するに、信用創造機能がマヒしている。
C 企業も生ける屍みたいな企業が抜本処理されないので、倒産はないが、日本経済の低迷が続く不思議な状態が当分続くだろう。
(注1)純保険料式:責任準備金の積み立て方式の一つで、事業費を保険料払込期間にわたって毎回一定額と想定し、責任準備金を計算する。この方式による責任準備金は、正確には平準純保険料式責任準備金という。
(注2)チルメル式: 事業費を初年度に厚くし、初年度以降、一定の期間で償却すると想定し、責任準備金を計算する。