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☆みずほHDの株価は少し戻してるようだが
持ち合いによる粉飾を魔ーケットは評価してるのか
第32回「竹中新3原則『3つのS』の読み方」
(KFi〔KPMGフィナンシャル〕代表 木村 剛氏)
最終更新日時: 2003/01/21
新しい年が明けた。この2003年は日本経済が本格的に再生を遂げるかどうかを占う意味で非常に重要な年である。われわれはいま、2003年の日本経済が、引き続き出口の見えない暗雲のなかにあるという状況に終わるのか、それとも本格回復に向けての一筋の光を見出すのか、という非常に重要な岐路に立たされていると思う。
そのポイントになるのは、何と言っても、我々の目の前に広がる、日本の金融システムに対する暗雲の行方だろう。そもそも本来であれば、2003年4月という期日は、わが国の銀行が健全性を完全に回復したことを祝して、待ちに待った「ペイオフ全面解禁」を迎えるはずであったが、結局、また2年先送りされることとなった。こうした煮えきらない政府の対応をみていると、いつまでたっても、日本の預金者は銀行の財務体質に懸念することなく、預金を預けることができないという悲惨な環境に置かれているようにもみえる。
この事態を打開するため、昨秋、金融担当大臣を兼務することになった竹中平蔵大臣は、わが国における銀行の不良債権問題に本格的なメスを入れることを目的に、就任後わずか1ヶ月で「金融再生プログラム」を発表した。これは、わが国の行政史上、最速で打ち出された政策方針だったといってよい。
今後の日本経済の行方は、日本の金融、特に銀行の不良債権問題がどう解決されるかにかかってくるだろう。昨年11月末、金融庁は「金融再生プログラム」に関する「作業工程表」を発表したが、基本的に「資産査定の厳格化」等については、2003年3月期の決算に反映されることとなった。少なからぬ主要行は、この決算対策のために大幅な組織見直しを含めた経営計画を打ち出して動き出している。このため、この経営計画の中身が日本経済の大きな方向を決めると言っても過言ではない。
経営計画を改定せざるを得ない銀行も
こうした主要行の経営計画に対して、新年明け早々、竹中大臣は「3つのS」という新しい視点を示した。すなわち、主要行が公表している新しい経営計画が、戦略的か否か(Strategic)、健全か否か(Sound)、誠実か否か(Sincere)、を厳しくチェックするというのだ。いわゆる「竹中新3原則」である。
「戦略的か否か」というのは、経営計画に明確な意味付けを求めるということ。金融行政を司る者として、単なる数字合わせのための組織変革や合併を前向きに評価することは難しいということだろう。当たり前のことである。単に配当原資の確保や自己資本比率の嵩上げ、不良債権の切り離しだけを目的とした経営計画は戦略性に欠けているといわざるを得まい。
「健全か否か」というのは、経営計画においては、健全な財務基盤の維持が必要ということ。貴重な原資をなし崩し的に費消するような経営計画は百害あって一利なしであり、いわゆる蛸足配当的な行為が健全性に反することは明白だろう。会計面についても、預金者や投資家を保護するために現行会計基準が厳格に適用されることは当然であり、二期連続で厳しい決算になる場合には、監査法人の責任において、繰延税金資産の正当性について厳しく審査されるべきという考えのようだ。これも言わずもがなのことではある。
「誠実か否か」というのは、経営計画は、法令を遵守し、フェアに行動することが前提だということ。貸し手としての優越的地位を濫用して増資の引き受けを迫ったり、互いに増資を引き受けあって自己資本比率の嵩上げを図ることがフェアな行動でないことは明らかだろう。お年寄りや債務者に増資を強要してから破綻したため被害者を増やした石川銀行の悲劇を二度と繰り返すべきではない。また、公的資金を受け入れた際に提出した各種の計画は、国民との約束なので、厳粛に遵守することは当然である。これも至極ごもっとも。
これら三つの視点から、主要行の経営計画の内容を吟味するというのだから、吟味の結果によっては、経営計画を改定せざるを得ない銀行も出てくるかもしれない。要するに、「新しい経営計画」と言うのなら、一時凌ぎでその場しのぎのいい加減なものではなく、本格的な改革案を出してくれということなのだろう。実際、銀行法第26条には、「銀行の業務若しくは財産又は銀行及びその子会社等の財産の状況に照らして、当該銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、……監督上必要な措置を命ずることができる」とされており、同第30条においては、合併や営業譲渡などについては認可が必要と明記されている。すなわち、経営計画の内容に対して、竹中大臣が強い疑義を示した場合には見直しを迫られかねないのだ。
一般常識の範囲を超えない当たり前のこと
実際、現在各行から公表されている経営計画を見渡すと、持株会社という屋上屋の上にさらに屋を架して配当原資を捻り出すようなアクロバチィックなものであったり、存続会社を子会社にする「逆さ合併」という奇策で財務上のマジックを断行するために根抵当権の名義変更登記が生じて数百億円もの登録免許税を支払うコスト高のプランになっていたり、銀行の預金者には何らメリットがないのに新設子会社に第三者増資をすることを以って自己資本の増強だと強弁するものになっていて、一見して首を傾げざるを得ないような奇妙奇天烈な計画が大手を振って闊歩している。
素直に考えれば、このような経営計画が高く評価されるわけがない。株価をみれば、マーケットが冷ややかな評価を下していることは一目瞭然である。先述したとおり、「竹中新3原則」などというものは、一般常識の範囲を超えない当たり前のことであって、その当たり前のことを指摘されただけで立ち行かなくなるかもしれない経営計画を打ち出して平然としていることこそ、わが国銀行経営者の問題点を公に示している。
銀行の経営計画の話だけでなく、日本経済全体に対する処方箋についても同じ事が言えるのだが、短期的な痛みを避けてモルヒネやゴマカシに頼るようなら、われわれの目の前に広がる暗雲はその広がりを増すだけであろうし、本格的な復活など期待できないに違いない。
一方、短期的な痛みは伴おうが、不良債権問題が解決される道筋が確保され、日本の金融システムが安全なものに戻るという確信が多くの人々の心に宿ったとき、日本経済の行く手にはようやく一筋の光が射し込むであろう。そういった意味では、2003年3月期の銀行決算を吟味することによって、その光の射し込み具合は判明することになるのではないだろうか。
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