現在地 HOME > 掲示板 ★阿修羅♪ |
|
2003年の米国株、ブルベア対論――循環回復派VS構造問題派
2003年の米国株式相場を見方の異なる2人のストラテジストに展望してもらった。現在880台のS&P500種株価指数について、2003年末の目標値を800に置くのはJPモルガン・チェースのカルロス・アシリス氏。4年連続で運用利回りがマイナスになると慎重に見込む。かたやプルデンシャル証券のエド・ヤルデニ氏の目標値は1100。企業収益の回復をテコに20%を超える運用利回りを期待する。
両者の違いは米経済を取り巻く構造問題の取り扱い。企業の過剰な設備や債務の解消に伴うバランスシート調整の影響を重視し、企業収益を圧迫するというのが慎重派の見解だ。実質国内総生産(GDP)が早々にプラスとなった2002年も企業収益の回復は鈍かった。同じ構図が2003年も続くと警戒する。
JPモルガンの2003年の経済成長率の予想はプラス2.8%。ただ、アシリス氏は「売上高は増えるかもしれないが、利益率はおそらく低下する。
企業収益は大方の期待を裏切る」と予測する。
プルデンシャルのヤルデニ氏も構造問題の存在は認める。中国との競争激化を背景にデフレの脅威が続くとみるなど、むしろ慎重な印象すら受けた。ただ、ヤルデニ氏は米連邦準備理事会(FRB)が供給した大量の流動性がいつか動き出すという持論を展開。
循環的な景気回復が商品や素材の価格を押し上げ、「今度こそ企業収益は回復に向かうはずだ」と話す。企業収益の回復と投資家心理の後退が、構造問題に打ち勝って株高を導くとの主張だ。
2001年は、2002年を楽観視するムードが目立った。対米同時テロにもかかわらず個人消費が底堅さを保ち、一方で在庫調整が急速に進んでいたためだ。企業の設備投資が回復し、個人消費に代わって景気のけん引役になるとの見方は多かった。しかし、いまだ設備投資には明確な回復の兆しが見えず、個人消費に減速の兆しが漂う。対イラク武力行使も秒読みとの見方が大勢だ。10月を底とした株式相場の回復で、景気2番底やデフレに対する一時の警戒感は和らいだものの、2003年を楽観できる要素は減りつつある。
プルデンシャルのヤルデニ氏 2003年こそ利益が回復
プルデンシャル証券のチーフ・インベストメント・ストラテジスト、エド・ヤルデニ氏
目標株価――S&P500種株価指数 1100
ダウ工業株30種平均 1万500
ナスダック総合株価指数 1500
――推奨ポートフォリオの資産別配分比率
株…65%、債券…25%、現金…10%
現金は株式の増減に伴い出し入れ。悲観論が強まったら株式を購入し、逆に今回のように大幅な相場上昇の後は現金を増やす。
<企業収益と株価>
2002年の誤算は企業収益が景気とともに回復しなかったことだ。とりわけハイテク、エネルギー、公益業種の収益には失望した。米国はいまやデフレーションに陥る瀬戸際にあり、売り上げ減などそのリスクに直面した企業が生産を手控えている。ただ、ハイテク製品などの価格低下は、一方で企業の生産性の向上にもつながった。2003年にかけても景気の回復基調は続き、商品や素材価格は循環的に上昇に向かうだろう。デフレは回避し、今度こそ企業収益は回復に向かうはずだ。最終的に一株利益で10―15%の伸びが可能だと思う。
10月を底とした今回の相場回復は、多分にバリュエーション(適正株価)の変化に起因する。言い換えればPER(株価収益率)を構成するE(利益)は変わらず、(投資家のリスクをとれる度合いに応じて)PERだけが変化したにすぎない。少なくとも年前半は収益の回復期待が存在し、相場を動かした。しかし、6月末のワールドコムの粉飾決算を境に収益は脇に置かれ続けている。それまで19倍だったS&P500構成企業の予想PERは10月に14.5倍に低下した。今は16倍だ。
2003年に株価が上昇するためには、PERとEの両方が増える必要がある。おそらく投資家がデフレは無いと確信すればPERは上昇する。さらに一次産品や素材価格の上昇が、Eの回復にも寄与するだろう。
<デフレ>デフレは明らかに注意深く観察し続ける必要のある問題だ。デフレ圧力は内外での競争激化が一因であり、とりわけ今後数年は中国が世界的なデフレの震源地になるだろう。80年代に米国が日本との競争に直面した当時は政治的な圧力で米国に日本の生産を呼び寄せた。しかし、今回は逆に米国や他の競争国が中国に生産設備を移す可能性が高い。価格競争は一段と激しくなり、デフレ圧力を高める要因となる。ただ、中国は同時に膨大な農・鉱業産品や物資、サービスの消費国にもなる。米国にとって2003年はデフレの年になるまい。
<新経済チーム>
ブッシュ大統領は積極財政や配当二重課税の削減・撤廃といった投資家優遇策など、数多くの景気刺激策を実行に移そうとしている。経済チームの刷新は、単純にオニール財務長官がこうした政策のスポークスマンにふさわしくないと考えたからだろう。議会やマスコミとの関係で信頼のおける、より政治的に適した人物に任せたかったのだと思う。経済をイラク情勢などと並んで重要だと意思表示する狙いもあったのではないか。仮にイラク情勢や国際関係で多大な成功を収めたとしても、2004年の大統領選では経済が問題になるからだ。(湾岸戦争に勝利しても選挙で敗れた)彼の父に学んだ面が大きいと思う。
ドル安が進んでいるが、政府が貿易赤字や製造業救済の手段としてドル安を志向することは無い。問題解決の手段として通貨を利用することは、貿易相手国の不満など弊害の方が大きいと思う。17日に政府がドル高政策の支持を表明したのは、市場への意思表示だろう。
<イラク>
なお外交的な解決の可能性は残るものの、イラクとの戦争はもはや避けられない。2003年早々にも開戦となるだろう。大胆な予想かもしれないが、米国は直ちに勝利を収めるとみる。もちろん、問題はそれで市場のリスクに対する意識がどうなるかだ。おそらく投資家は戦争がどういった形で収束しようと、企業収益やバリュエーション(適正株価)にさほど大きく影響しないと結論づけるのではないだろうか。
クイックより