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『<帝国> グローバル化と世界秩序とマルチチュードの可能性』(アントニオ・ネグリ/マイケル・ハート著・水島一憲他訳・以文社・5600円)を今日から読み始めた。
この英語版は阿修羅サイトでも紹介されたが、主たる著者であるアントニオ・ネグリ氏は、非共産党系左翼で70年代のテロ嫌疑で現在なお収監されている人である。(フランス亡命後イタリアに帰国し収監された)
大書をざっと読んだだけで決めつけるわけではないが、『<帝国>』は極めて“危険な”書である。
何度か書いてきたが、“戦争狂”ブッシュ政権の後には“モダン社会主義者”が救世主のふりをしながら登場し、うまいタイミングでそれを行えば、多くの人がそれを歓呼の声で迎えると考えている。
これも書いてきたことだが、民族国家主義的共産主義ではなく正統派マルクス主義は、国際金融家(世界経済支配層)の防御手段・保険・攻撃手段である。
正統派マルクス主義は、グローバリズム左派であり、米英政権に代表されるグローバリズム右派の補完勢力である。(マルクス主義が近代主義の枠内であることを忘れてはならない)
「知的謀略」に優れそれを悪とも思わない世界支配層は、近代の主要な対立構造さえ自前で用意しているのである。
自分たちが用意しなかった敵対勢力であるスターリン主義国家(ソ連・中国)・民族派国家社会主義国家(ドイツ・イタリア・スペイン)・民族派対外拡張主義国家(日本)は、戦争・内部破壊・取り込みを通じて排除してきた。
そして今、イスラム世界という最後に残った自分たちが用意しなかった敵対勢力のいっそうを目指した戦争を展開している。
既にイスラム世界の取り込みには成功しているが、天然資源と商品市場という範囲にとどめ、イスラム価値観に基づく経済制度には手をつけなかった。
今回の「対イスラム戦争」は、イスラム世界の政治経済制度の変更をめざすものであり、イスラム価値観を心の中のものに封じ込めることを意図したものである。
「知的謀略」に優れた世界支配層は、当然のように「対イスラム戦争」で勝利できない事態も考慮している。
そのときには、自分たちの政治的代理人(=“知的執事”)を生け贄に捧げて自分たちの延命をはかろうとする。
そして、それと同時に、「対イスラム戦争」に変わる手段での世界支配をめざすことになる。
このように考えている者としては、『<帝国>』はその先を考える上で非常に参考になる書籍だと思える。
『何故人びとは、あたかも自分たちが救われるためであるかのように、みずからすすんで隷属するためにかくも執拗に戦うのか』という問いは、『<帝国>』のP.276に引用されているもので、スピノザが提起し、ライヒが再提起したものという。
この問いに関する私なりの答えは、『「寄生性」&「知的謀略」が国際金融家や国際商人の“危険因子” − トヨタなど日本の国際商人(輸出優良企業)も“危険因子”を持ちつつある −』( http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/737.html )を参照して欲しい。
『<帝国>』に対する批判や書評は、現実の世界が激しく動いているのでいつになるかはわからないが、後日書き込みをしたいと思っている。
大書で価格も高い本だが、“近代知性”の高みにある人たちが、現在−未来の歴史的変化を多面的な角度から予測し、それへの“対抗手段”も論じているものでなかなか読み応えがある。
『<帝国>』をともに読む人があれば、少しずつでも議論を始めることもできると思われるので、同好の方の登場にも期待したい。