現在地 HOME > 掲示板 > 議論・雑談8 > 607.html ★阿修羅♪ |
|
(回答先: 米国イラク攻撃「石油目的論」の陥穽 − 否定はしないが「石油目的論」では占領支配以降の動きを見誤る − 投稿者 あっしら 日時 2003 年 3 月 03 日 18:03:17)
あっしらさん こんばんわ。 きわめて重要な指摘と思います。 ここがイラク戦争早期終結論(たぶん大勢)と、中東戦争泥沼論の境界になるように思いますので、この機会にレスさせて頂くことにしました。
(イラク占領は成功するという見方にも理がある)
実はイラク占領がうまくいくという立論も可能です。 最初にこの側面を検討してみます。
中東世界でイラクはもっとも占領統治しやすい国です(トルコをのぞく)。 ある程度近代的な社会と価値観を持っており、かなり完備した官僚機構を持っています。 長年の物質的耐乏に耐えています。
ここで米国が占領後に、あっしらさんご指摘のように、石油代金を流し込み、またこれまで止めていた物資、医薬品等を豊富に供給し、国民を手なづける戦略をとれば、ある程度成功の見込みがあります。
実は、私もある程度こういう見方をとっています。
占領下日本とのアナロジーで考えてみます。 大日本帝国は、近代的な社会と価値観を持っており、能率的な官僚機構を持っていました。 国民は長年の物質的耐乏に耐えていました。 米国は、占領後に、豊富な資金を流し込み、またこれまで止めていた物資、医薬品等を豊富に供給し、国民を手なづけました。
イラクと大日本帝国とはこの意味でアナロジーがかなり成立しています。 これがまさにイラクから戦争を始めた理由でしょう。
(占領政策が困難という見方)
この見方の根拠は以前投稿しましたが、再録させて頂きます。
(民俗への介入)
イスラム世界に欧米的経済社会制度を持ち込むことは激烈な抵抗を受けると思います。
一つめの理由は、これが「民俗」への介入にあたるからです。 英国の植民地支配は「民俗」への介入を最小限に止めた点で成功したと言われています。 大日本帝国は、朝鮮人民に対して、日本式の氏名を与えたり、神社をぼこぼこ建てたりしました。 こういう「民俗」への介入は激烈な抵抗を受け、恨みを残すわけです。
大日本帝国では、明治時代に近代金融システムを導入しています(金色夜叉の時代)。 民法はフランスから「直輸入」しています。 このような条件がイラクには存在しません。
(社会連帯の否定)
次は、推定ですが、中東世界では、イスラム法が「社会的連帯」を保証しているからです。 隣人を信用できるのは、隣人もイスラム法を守るという確信があるからだと思います。 これが否定されると、社会は恐ろしい無秩序状態に投げ込まれます。 人間関係がバラバラになります。 社会的連帯の否定は激烈な抵抗を受けます。
(地続きの世界)
イスラム法支配地域は地続きです。 国境は西洋人が決めた仮想的なものです。 これも日本と決定的に異なる条件となります。 イラクが民主主義のショーウインドウとして成功すれば、隣国の政権は不安定化します。 イラクで流血の市街テロ戦争が始まれば、隣国から直ちに戦士が越境してくるものと思います。
(思想統制と洗脳について)
最も決定的な条件がこれです。 占領下の日本では、思想統制、洗脳が機能しました。 出版物は徹底的に検閲されたそうです(江藤淳氏の有名な研究あり)。 占領軍への反抗を訴えるような出版物はあまりなかったんですよね。 古事記も「霊の御柱」も教育勅語も占領軍への抵抗を訴えていません。
イスラム世界には、占領軍への抵抗、戦闘を訴える出版物が偏在しています。 コーランです。 メッカを占領する悪魔を撃退せよと訴えています。 みんな持っています。 (たぶん)検閲できません。 神の言葉です。 思想統制も洗脳もたぶん無理です。 コーランを墨で縫って出版することもできません。 そんなことをしたらエライ騒ぎになります。 思想統制も検閲も無効ですから、民衆の洗脳は困難です。
(占領政策成功の条件を満たすつもりがない?)
占領成功のためには、民俗、金融システムに介入しないこと、物質的に援助して民心をつかむこと、非戦闘員の虐殺を最小限に留めることが必要条件です。 価値観、民俗、金融システム、そしてコーランに立ち入ると泥沼に落ちます。
つまり、イラクを「ショーウインドウ」に止めておくなら、過度の流血は避けられるという見通しはが立ちます(私個人はあまりゲリラ戦になってほしくありませんが)。
問題は、米国がそんなお人好しなのかということです。 これまでの履歴から見て、イラク国民の福利厚生を本気で考えているとは、とても信ずることができません。 あっしらさんご指摘のような金融的収奪に向かうと共に、隣国への戦火拡大を企画していると考えます。
つまり、占領政策成功の条件はある程度分かっているが、米国はそれを守る気は、おそらくありません。 私が、中東戦争の泥沼に落ちると考える根拠はこれです。
(今後の見通し)
短期的にはイラク占領が成功する(させる)のかもしれません。 だがその後の段階で日本みたいにうまくいくと思っているのなら、戦乱の泥沼に落ちます。 その段階で、占領政策失敗の原因をイスラム教徒になすりつける宣伝が始まると予測しています。 こうなると「宗教戦争の時代」が本格化してしまいます。 いいかげんにしてくれ(つい興奮して失礼しました)。