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この番組に関するコメントは「 」さんが既に書き込みをされているが、朝まで付き合ったので感想を書かせていただく。
司会の田原総一朗氏に以下の討論参加者である。
阿久津 博康(岡崎研究所主任研究員)
勝谷 誠彦(コラムニスト)
工藤 雪枝(ジャーナリスト)
田中 宇(ジャーナリスト)
中林 美恵子(経済産業研究所研究員,元米上院予算委補佐官)
宮崎 哲弥 (評論家)
宮台 真司(東京都立大学助教授)
村田 晃嗣 (同志社大学助教授)
山本 一太 (自民党・参議院議員)
和田 秀樹(精神科医)
金子 勝(慶応大学教授)
宮崎 学 (作家)
※ 安保理決議なしのイラク攻撃に対する支持・不支持の色分け
■ 不支持:宮崎 学
■ 条件付支持:勝谷・田中・金子
■ 支持やむなし:田原・宮崎 哲弥・宮台・和田
■ 積極支持:阿久津・工藤・中林・村田・山本
[条件付支持]:米国の意図やイラク攻撃後の国際情勢に危惧を抱くとともに、現在の日本政府の外交に異論を唱えつつ、現実問題として日本は米国を支持せざるを得ない立場にあるとの認識。
[支持やむなし]:戦後日本の在り方・“国益”・“安全保障”を考えたときに他の選択肢はないという認識。
[積極支持]:日米同盟こそが今後の日本にとっても“国益”の源泉であり、イラク攻撃でも米国を積極的に支持することでそれを維持できるという認識。
安保理決議なしのイラク攻撃に対して「反対」を表明したのは、全参加者中ひとり宮崎 学氏だけである。
この支持・不支持の表明について田原氏がとった態度は実に印象的だった。
「日本には支持以外の選択肢はない」、「反対と言っても政府は支持するんだから意味はない。それを踏まえてどうするかということだ」(趣旨)という言動である。
それなら、支持・不支持の問題を含む討論番組をつくること自体に意味がなく、総選挙を行ってもどのみち与党が絶対過半数をしめるんだから野党に投票しても意味はなく、田原氏もあと100年は生きないだろうから今殺してもたいしたことはないということにもなる。
政府がたとえ支持を表明したとしても、一人でも多くの国民が反対の意思を表明していたという現実が内外に対して持つ重さも理解できないようだ。
田原氏は、日本国民を国際法・道義に反する虐殺行使の荷担者にするプロパガンダ番組を主宰したのである。
● “国益”と“安全保障”という言葉を振り回しての米国支持正当化
安保理決議なしのイラク攻撃を支持する理論的根拠は、つまるところ“国益”と“安全保障”である。
“国益”と“安全保障”とは何かという規定がないまま論議が進められていたので共通の概念規定は推測するしかないが、おそらく、「国民経済的利益の拡大条件」と「日本に対する攻撃抑止や攻撃を受けた際の被害極小化」と考えているのだろう。
安保理決議なしのイラク攻撃支持を主張している人たちは、たとえ国際法や国際秩序そして道義に反するものであっても、米国を支持することが日米同盟(片務条約だから実態は別)を強化につながり日本の“国益”と“安全保障”に資すると考えている。
しかし、“国益”そのもののが議論されないくらいだから、“国益”の歴史的変動や日米間で生じる“国益”の対立が論議されることもなく、“安全保障”についても米国との対立が生じる可能性については触れられることさえない。
“安全保障”について言うなら、今回のイラク攻撃は、昨年夏に出された危険な国家に対しては“先制攻撃”も辞さないという「ブッシュドクトリン」に基づいて行われようとしている。(イラクが米国ないし軍事同盟国を攻撃することなく、安保理の決議もないままイラクを攻撃すればそうなる。田中氏はこの問題を取り上げていた)
「ブッシュドクトリン」は、米国政権がテロや大量破壊兵器保有に関わっていると認定した国家の政権を軍事力を行使してでも排除するというものである。国際司法権もその判断の現実化手段も米国政権に属するという宣言である。
日本政府は「ブッシュドクトリン」を承認したが、ジャッジメントが米国政権の手に委ねられているこのような単独軍事行動を正当なものとして認めれば、日本は、米国に「悪の国家」を認定されないよう、米国政権の意向に唯々諾々と従わざるを得なくなる。
例えば、北朝鮮問題に絡んで核兵器の保有がちらほら論議されているが、日本の核兵器保有が米国政権の気に障ることであれば、そのような動きを「大量破壊兵器保有」と結びつけて、日本を「悪の国家」と非難し、いざとなれば攻撃することも可能である。
テロに関しては、ご存知のようにでっち上げは簡単である。日本の態度(政策)が気に入らなければ、テロを口実に恫喝することもできる。
この100年を振り返っただけでも、日英同盟から同盟解消を経て「日英戦争」へ、そして、日米友好から日米対立を経て「日米戦争」そして日米安保体制へ、正統中国政権の認定が台湾から中国へというというように、国家間の同盟関係や友好関係は激しく変動している。
日米安保体制の維持と「ブッシュドクトリン」の承認とは次元が異なるのであり、安保理の武力行使容認決議がなければ「ブッシュドクトリン」に基づくかたちになるイラク攻撃を支持するかしないかは、日米安保体制とロジカルには無関係である。
(ロジカルには無関係であるが、ブッシュ政権不支持を打ち出せば、日米関係が揺らぐことは間違いない。しかし、国際社会の多くも反対し、米国とは経済的相互依存関係にありしかも金主という優位の立場にある日本は、きちんとした対応をすればその難局を乗り越えることができる。短期のうちに米国が攻撃をちらつかせることはないので、最悪の場合でも、現在は米国に対して行っている資金を貸して財を買ってもらうという仕組みをロシアなどに分散すれば経済的不利益も緩和できる。これは、販売市場の拡大や金融資産のリスク分散という意味でも好ましいことである)
ブッシュ政権の対外政策に反対することは、一時的には「反米」とそしられることになるが、中長期的な意味での「反米」にはならない。
米国民のイラク攻撃支持も、9・11の麻薬効果のおかげで多数になっているだけであり、何かのきっかけで正常に戻るという実に希薄なものである。
(「真珠湾奇襲攻撃」をかけた日本や欧州全域を軍事侵攻したナチスドイツに対するものとは異質なのである)
“国益”や“安全保障”の問題を歴史超越的な静止した固定構造に依拠したものと考え、歴史の変動や米国が行おうとしていることの意味(目的)そしてその後の成り行きを読めないまま、国際法に反し道義にもとるイラク攻撃を支持することは、日本が今後も、搾り取られようがどつかれようが、袖にされたりはねつけられたりしようが、米国政権の裾にでもなにとかしがみついてついていかなければならないことを意味するのである。
※ この項に関する参考書き込み
『イラク攻撃への対応の色分けは産業主義と金融主義が基準』
( http://www.asyura.com/2003/war24/msg/886.html )
『“確信親米派”は好きです(笑)』
( http://www.asyura.com/2003/war23/msg/266.html )
『日米安全保障体制の虚実』
( http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/236.html )
『攻撃が成功し勝者となれば世論も変わると踏んでいるんでしょう』
( http://www.asyura.com/2003/war24/msg/956.html )
『「ブッシュ・ドクトリン」なら“次の標的は日本だ”もあり』
( http://www.asyura.com/2002/war16/msg/371.html )
『協力しない限りブッシュ政権との対立は避けられない』
( http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/307.html )
● 日本は力では可能だが法論理としては殺人を罰せない国家になる
国際法にも道義にも反するイラク攻撃を“国益”や“安全保障”を名目に支持するということは、日本という国家を危殆に陥れる。
安保理決議なしのイラク攻撃を支持するということは、米国主導の軍事力行使によるイラク国民の虐殺を支持するということであり、資金(名目は復興費でも)及び後方支援で協力すれば、イラク国民の虐殺に直接荷担するということである。
“国益”や“安全保障”を国内の問題に置き換えてみれば、そのような主張がとんでない論理的帰結をもたらすことがわかる。
“国益”を“私益”に置き換えれば、ある個人がより大きな経済的利益を得るために他者を殺害したとき、国家はどのような論理を適用して罪をさばくことができるというのか。
“安全保障”を“身の安全”に置き換えれば、何かがあったときは君を助けてあげると約束している人から、気に入らない奴がいるから殺そうと思っているんだが手伝ってくれと言われ、ともに殺人に手を染めたとき、国家はどのような論理を適用して罪をさばくことができるというのか。
国家が“国益”や“安全保障”を法や道義に優先させる判断を行えば、法は無効の存在となり、ただ国家機構の判断や強制力のみが有効という無法国家になるのである。
イラク攻撃をどうしても支持し協力したいのであれば、過去の決議内容を無理やり結びつけて一方的な解釈で乗り切るのではなく、きちんと国際法上の要件を満たすかたちにするしかなく、それが達成できない場合は、国家が国家としての存在を維持しようと思ったら明確に不支持と非協力を表明するしかないのである。
※ この項に関する参考書き込み
『【唾棄すべき妄言】「北朝鮮脅威」をリンクさせた米国支持論は理性なき暴論 【政府を超えた恥ずべき亡国論】』
(http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/260.html)
『【政府の対応は最悪】 “国際社会”や“国際世論”を楯に米国のイラク攻撃を支持してきた日本政府の根拠は瓦解した!! 【“正義の盟主”となったフランスは後退しない】』
( http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/251.html )
『お金に色がついているわけではなく復興費名目でも米国に渡すのなら戦費負担と同じです』
( http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/489.html )
● 田中宇氏が提示した9・11疑惑はシカトで不発
田原氏が番組冒頭で「生放送なので番組を中断しなければならない状況になるかもしれない」と言ったとき、9・11謀略説を主張している田中 宇氏が出演していることもあり、9・11の真相や疑惑絡みかなと思った。
しかし、米国や米国民がイラク攻撃にこだわるのは9・11の恐さが染み込んでいるからだといった議論が展開されていても、9・11の真相やビンランディン氏犯行説への疑義が田中氏から提起されることはなかった。
番組の終わり近くになってようやく田中氏が、「9・11だって、ブッシュ政権はまじめに捜査していない。ビンラディンがやったかどうかもわからないんですよ」と口火を切った。
その発言を受けてカメラは村田氏を中心に山本氏と工藤さんのほうに向けられたが、言葉での反応はなかった。
(表情からは、村田氏は別の構図であると考えているように見え、山本参議院議員は反証は用意できていないから対応しない構えに見え、工藤さんはどういうことかしらという感じに見えた)
田原氏は、しばらく間をとったが、田中氏のそのような提起について“積極支持派”にコメントを求めることはせず、そのまま別の議論に移った。
田中氏もそれ以上言及することもなかったので、「9・11疑惑」については触れないことという事前打ち合わせでもあったと思われる。
● たわいもない「論理吐き出しマシン」ぶりを発揮した米国留学組
議論に参加したメンバーのなかで、阿久津・工藤・中林・村田・山本の諸氏が海外留学組だということだった。(阿久津氏はオーストラリア留学で他は米国留学)
それに共通しているのは、米国のイラク攻撃を積極的に支持するということだが、それ以上に感じたのは、思考的に練られていない言葉の組み合わせで持論を説明すると言うことであり、何より、論理や職業に先立ち、この世界で生きていく人として持つべき価値観や理念の存在を感じられないということである。
巧い下手の違いはあっても、米国流のリアルポリティクス論をただ振り回しているだけである。
それに比較すれば、勝谷・宮崎 哲弥・宮台・和田といった諸氏のほうが実存的な発言をしていたと評価できる。
● 印象に残った発言
対米追随が子々孫々にわたるまで日本の国益に叶うことだと主張している岡崎久彦氏が主宰する岡崎研究所の阿久津氏は、「イラクの次はサウジアラビアの民主化が行われる」と発言し、イラク攻撃が中東全域の民主化の始まりであり、中東での覇権確立をめざした米国の戦略に基づくものであることを説明した。(この問題に関する議論も広がることなく打ち切り)
唯一と言ってもいいイラク攻撃反対論者である宮崎 学氏は、残念ながら有効な反対論を展開することはできなかった。
戦争の災厄やベトナム戦争の米国敗北を持ち出してイラク攻撃に反対することを表明したが、“国益”と“安全保障”を振り回してイラク攻撃支持を正当化する論に対しては“ひ弱”な論拠と受け止められたかもしれない。
悲しいことに、現在の日本の主要メディアでは、この世界で生きていく人として何より基本である「ゆえなく他者を傷付けない」、「汝殺すなかれ」は、“国益”と“安全保障”のずっと後ろにひっそりとたたずむ理想論になってしまい、リアルポリティクスや資本の論理を振り回す「悪魔崇拝に魅入られた人たち」が幅を利かしているようだ。
このようなイラク攻撃支持正当化プロパガンダ番組であったにも関わらず、視聴者アンケートの結果が「無条件の協力」:31.1%、「国連決議ありで協力」:24.3%、「一切協力すべきではない」:37.5%、「わからない」:7.1%であったことは、メディアに出てくる人たちとは違って、日本人の多くがまとまな判断力を持っている証左だと言える。
(新決議なしで分類すると、「協力なし」:31.1%・「協力しない」:61.8%となる)テレビ朝日「朝生」ページ:http://www.tv-asahi.co.jp/asanama/index.html
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※ 全体の関連参照書き込み
『イラク攻撃から始まろうとしている「中東対イスラム戦争」を止められる国家は日本だけ!?』
( http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/215.html )
『産油国の「近代化」には失敗し、ブッシュ政権には“悪の烙印”が押され、「近代」は終焉に向かいます』
( http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/375.html )
『日本やドイツで成功した占領政策が通用せず、勝利できない戦争に足を突っ込むのは愚か − 米国に勝手にやらせればいい −』
( http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/405.html )
『「近代化」の定義が異なるようです』
http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/512.html
『簡単な今後の見通し』
( http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/323.html )
『感動的な書き込みを汚して失礼:「こんな事ができるのは人間だから」です』
( http://www.asyura.com/2003/dispute8/msg/452.html )
『【イラクは端緒:「中東対イスラム戦争」との本音を明言】 中東全体の民主化目指す フセイン後で米大統領演説 [共同−産経] 【“ド腐れ価値観”実現に向けた虐殺戦争への加担は亡国への道】』
http://www.asyura.com/2003/war24/msg/1021.html
『「近代経済システム」や「近代価値観」が悪魔崇拝者(知的強欲追求者)のものであることが浮かび上がる』
http://www.asyura.com/2003/war24/msg/1034.html
『「近代主義」信仰か、イスラム信仰か、という“思想戦”の表明でイラク侵攻後の作戦を正当化 − 大量破壊兵器や「テロ」の確証を示せないなかイデオロギーという究極の旗を掲げた −』
http://www.asyura.com/2003/war24/msg/1031.html
『だからこそ、アフガニスタンが“第一標的”になった』
http://www.asyura.com/2003/war24/msg/1036.html
『【補足】 アフガニスタン支配はイラン挟撃も意図』
http://www.asyura.com/2003/war24/msg/1038.html
『イラク攻撃への対応の色分けは産業主義と金融主義が基準』
( http://www.asyura.com/2003/war24/msg/886.html )
『「米国が使用するわけないだろ」には大笑いですね。 − フセイン政権&イラク軍の極悪非道性を訴え開戦と虐殺を正当化する格好のネタ −』
( http://www.asyura.com/2003/war24/msg/816.html )