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英国帰りの記者の目で見た日本の現状←(毎日新聞より転載)
投稿者 座頭市 日時 2003 年 1 月 20 日 21:13:40:

★少し前の記事ですが、少し面白いので貼っておきます。
 あまりバイアスのかかってない(?)ストレートな見解だと思われます。

毎日新聞2002年12月26日より全文転載

【引用開始】
記者の目
■■■英国帰りの目で見た日本  笠原敏彦(外信部)

●夢を描ける未来像がない 外国の物まねを止める時

ロンドンでの特派員生活を終え、この秋、5年ぶりに帰国した。外国メディア
を通して英国で見た日本像は、不良債権などによる経済失速や政治腐敗に
対処できない「ダメな国」だった。

帰国後、強い危機感が漂っていると思いきや・・・・・。 正直、拍子抜けした。
活気がないのは事実だったが、テレビはグルメと温泉情報にあふれかえり、
外国の懸念を尻目に「一国快楽主義」とでも呼びたい様相だ。この根底には、
将来像を示せない政治の貧困と、個人が夢を描けない寂しい現実があるよう
に感じている。

 日本には「イギリス真理教」なる言葉があるようだ。英国社会のマイナス面も
肯的にとらえ、「だから英国は素晴らしい」と感激する人たちのことを呼ぶ。
明治の「脱亜入欧」以来のあこがれと劣等感が生み出す現象かもしれない。

私は真理教徒ではないが、駐在生活を振り返ると、「英国の芝は青かった」と
いうのが偽らざる感想である。この先の日本での生活を考えると「見てはいけ
ないもの」を見てしまった気すらする。そう思うくらい生活の質の違いは歴然と
していた。

 ロンドンでは電車の遅れは日常茶飯事だし、日用品ひとつとってもお粗末な
ものが多く、日本的な基準からすれば「不便」だった。しかし、空間の豊かさは
素晴らしく、生活の潤いが実感できた。例えば、中心部から地下鉄で約30分の
自宅周辺でも広い公園があり、ゴルフ場やテニスコートが整備され、格安で楽
しめた。余暇を楽しむのにも金持ちである必要はなかった。

 日本社会の効率性、隅々まで行き届いた、過剰なまでのサービスには改めて
感心する。定刻通りに来る電車に、外国人なら誰でも驚く。一方で、駅売店に
ずらりと並ぶ「ストレス社会」の象徴とでも思える栄養ドリンクの多さにも驚き、
年間の自殺者数約3万人というのは想像を超えた世界のようだ。

 満員の通勤電車で多くの人の疲れた姿を見ると、日本経済の緊急課題である
不良債権、デフレ問題が解決したとしても、生活にどんな「夢」を持てるのだろう
かと思ってしまう。

 英国滞在中、「なぜ日本で革命が起きないのか不思議だ」という声を何度か
聞いた。日本の対外イメージは、国際社会が「しっかりしてくれよ」と肩を揺さぶ
っても、起きようとしない「寝たきりの人」のようである。「外圧がなければ、日本
は現状を永久保存してしまう」という指摘さえある。この現状を国民が怒れない
のは、経済・政治の分離に限らず、改革が次々と掛け声倒れに終わり、将来へ
の夢をあきらめかけているからだろうか。

 その改革を外から見ると、実に外国の制度の物まねが多く、独創性がない
ことか。以下は、ある日本人外交官の述懐である。

 「日本では何か問題が起きると、まず英、米、仏、独の制度を調べる。しかし、
米国は社会が進み過ぎ、フランスは中央集権が強く、ドイツは連邦制で日本
には適せず、結局、英国の制度が導入される。改革が失敗しても、制度導入に
かかわった官僚や政治家はすでに担当が代わり、誰も責任を問われない」

 例えば、教育現場を見ると、注目を浴びた校区を越えた公立学校の自由選択制
や、開かれた学校を目指す学校評価員制度など、いずれも英国に元々あるものだ。
こうした制度を形だけ導入しても、日本で機能するか、極めて疑わしい。

 英国では教育界の「自由競争」が徹底している。共通テストの成績により公立学校
の順位が地域ごとに1位から最下位まで公表され、新聞に掲載される。
選択基準の明示なしに自由選択制は成り立たないのだ。

 問題への対処には、個々の改革に反映する大原則が必要であり、それもなく、
患部への対症療法を繰り返すのは、危なっかしい「ギャンブル」の域を出ないの
ではないかと思う。

 「改革」という言葉を聞かない日のないニッポン。論議の主戦場となるべき国会の
党首討論は、英国の「首相のクエスチョンタイム」を参考にしたものだが、盛り上が
らず、導入3年で見直し論が出ているという。
他人のベッドで夢を見るのには限界がある。改革も良いが、いいかげん、困った時
の「外国頼み」はやめるべきではないか。

 閉塞状況に風穴を開けるため、いま政治指導者に必要なのは、国民の夢を刺激
する未来像を描くことだ。英国生活を通じて体感したそのキーワードは、「想像力」を
働かせ、「自立した精神」で将来を切り開くことではないかと思う。

(写真)
ロンドンの英国国会議事堂。
日本は「首相のクエスチョンタイム」をまねたが・・・。=AP

【引用終了】

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