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(回答先: インフレ論者になったせいがく 投稿者 せいがく 日時 2003 年 1 月 09 日 07:32:33)
せいがくさん、新年明けましておめでとうございます。
>静態的にはその通りですが、実際には貯蓄の取り崩しが否応なく始まると考えるのが
>現実的ではないでしょうか。もっと言えば、あっしらさんが例で想定された10%の円
>安ではなく、より過激な円安(50%とか)を引き起こして、無理矢理にでも貯蓄を取り
>崩さざるを得なくなるように仕向けなければならないのではないでしょうか。
>「袖」(貯蓄)はあるのに「振る気」になっていないのが問題です。正攻法で「振る気」
>にさせるには莫大な時間と努力が必要なので、強制的に袖を振らせること(超円安に
>持ちこむ)も検討してみる必要があると思います。
貯蓄の取り崩しについては、元の説明で書いたように、「輸入品の価格上昇に対応して多くの家計が貯蓄の取り崩しを行えば、デフレ圧力を緩和することになります。(先行き不安感が満ちている現状に照らせば、そのような貯蓄取り崩し行動は限られると予測します)」と考えています。
より重要な視点は、貯蓄はストックですから、フローが一定であれば、取り崩しによって底をつくということです。
さらにいえば、貯蓄は国民が平均的に保有しているのではなく、所得以上の偏りがあるという現実です。
貯蓄の多い人が失業したり所得を減少させ、貯蓄の少ない人は少ないながらも所得を維持しているというのであれば、“貯蓄効果”が大きくなるはずですが、貯蓄の少ない人が所得を減らせば、そのまま消費減につながっていきます。
現状でも、消費性向の上昇傾向と預貯金残高の減少傾向から貯蓄の取り崩しは行われていると推察できます。
GDPに占める個人消費も、90年の53.0%から00年の54.2%、そして、02年の57.4%と上昇しています。(名目ではこれ以上の上昇を見せています)
失業者の増加や所得の減少という経済動向を考えると、このような経済事象は、消費性向や貯蓄の取り崩しがあるという判断根拠になります。
所得(フロー)が増加しない限り、持続的なデフレ緩和は実現できません。
円安が10%ではなまっちょろい、50%になったらというご指摘ですが、これは、貯蓄の取り崩しではなく、そのような急激な輸入物価の上昇を超える賃金の引き上げに結びつけばデフレを緩和することになります。(これは、10%の円安でも同じことです)
もちろん、年金支給額や失業給付額も増加させる必要があります。
小さな変動は抑え込めるが、大きな変動であればなんらかの手を打たざるを得ないということはありますから、輸入物価の大幅な上昇が賃金上昇をもたらす可能性もあります。
しかし、それが、輸入物価の上昇が及ぼす全体的な物価上昇を下回るものであれば、国内品に対するデフレ圧力、そして、輸入品に対する利益減少圧力は解消できません。
このような政策の必要性は、円安が国際競争力を上昇させるという“神話”も吹き飛ばすものです。
円安を国際競争力の上昇に結びつけるためには、円安の割合が輸出製品のコスト上昇率よりも高くなければなりません。
説明してきたように、デフレを解消するためには輸入物価の上昇を超えた賃金の引き上げが必要ですから、短期はともかく、中長期的には輸出品の価格競争力を高めることはありません。
>こうすると、『良いインフレ』じゃなく悪性インフレになることでしょう。しかし、
>デフレ・スパイラルの金縛りから開放されるには、それしかないのではないでしょう
>か。「デフレ--->良いインフレ」という経路は幻想で、「デフレ--->悪性インフレ--->
>良いインフレ」にする経路しか実はデフレ脱却の方法はないのでは?デフレをデフレ
>のまま克服しようとしたら、あっしらさんが以前指摘されたごとく、「優良企業は給
>与を増やせ」とか「これまでの流れをご破算にした税制改革を」というやや非現実的
>な政策に頼らざるを得なくなります。
現状の日本経済の能力に照らせば、デフレよりは、悪性インフレのほうがましだとは言えます。
日本産業の供給力には余裕があるので、悪性インフレは、金融政策や財政政策で抑え込むことができます。
財政政策が縛られ輸出拡大が期待できない現状では、「優良企業は給与を増やせ」&「これまでの流れをご破算にした税制改革」+「金利上昇&量的緩和政策」以外に、根源的なデフレ解消策はありません。(貯蓄は底をつくものです)
この政策が非現実的だと考えられているあいだは、政府紙幣発行や国債焚き火処理といった非正統的手段を除き、「デフレ不況」を克服することは断じてできません。