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【補足】「信用創造」の問題
投稿者 あっしら 日時 2002 年 11 月 19 日 18:56:19:

(回答先: 「デフレ不況」で「構造改革」ができるのは全知全能の神のみ 投稿者 あっしら 日時 2002 年 11 月 19 日 17:20:35)

説明が一つ抜けていました。

>>大事なことは、このケースでは「信用創造」で需要が膨らんでいるわけですから、
>>金利5%だとしても、元の貯蓄(100)に対しては15%の金利を支払うことに
>>なります。
>>その債務が履行できなくなれば、バブル崩壊になります。

>大事な部分なのでしょうが、ここの意味が良く分かりませんでした。


「信用創造」は、100億円の原資で300億円とかの貸し出しを行うことです。
(100億円の原資で100億円を貸し出しするのは、たんなる貸し出しです)

「信用創造」で3つの企業に100億円ずつ5%で貸し出ししたとします。

銀行は、100億円を原資に金利5%で300億円貸し出したことになります。
これは、原資である100億円を15%で貸したことと論理的に同じです。

金融家の“錬金術”なのですが、本物の“錬金術”ではなく単なる“詐欺”ですから、100億円が本当に300億円になったわけではありません。

貸し出しされた300億円はなんらかの供給活動に使われるわけですから、供給=需要が一時的に200億円水増しされたことになります。

これまでフローからなんとか利払いと元本返済が行われているとしたら、新たな融資300億円に対する5%の利息である15億円に相当するフローが年間で増えなければならないことになります。

300億円の「信用創造」でフローが300億円増えたことは事実ですが、預金を取り崩すことで生じた一時的なものです。
300億円の「信用創造」により増加した15億円の利息を購う継続的なフローの増加はないのです。

それを実現できるのは、輸出増加のフロー化・持続的な預金の取り崩しです。

具体的な流れを考えてみます。

[与件]

可処分所得年間総和:10兆円
預金残高:500億円
貸出残高:300億円
支払利息: 15億円


[信用創造]

銀行がA社に100億円貸し、A社はそれで機械設備をB社から購入した。
B社は銀行にそれを預金をした。
銀行は、その100億円をC社に貸し、C社がそれで機械設備をB社から購入した。
B社は銀行にそれを預金をした。
銀行は、その100億円をD社に貸し、D社がそれで機械設備をB社から購入した。
B社は銀行にそれを預金をした。


※ 機械設備は生産性を10%上昇させるもので従来のものの置き換えという想定です。そして、A・C・D社は従来と同じ価格で全量が販売できると考えて設備更新を決定したとします。

[変動]

可処分所得年間総和:10兆円
預金残高:800億円
貸出残高:600億円
支払利息: 30億円


[変動]結果を見ればわかるように、10兆円というフロー金額は変わっていないのに、支払い利息が15億円増加しています。

この状況で、A・C・D社が輸出数量を10%増加させて、それで稼いだお金をフローとして使えば問題は起きません。

しかし、輸出が不変であればフローも変わらないので、増えた利息分15億円をどこかから捻出しなければなりません。ぎりぎりで利払いと元本返済が行われていたとしたら、給与を下げなければ対応できません。そうすれば、10兆円というフロー金額は減少することになります。

簡単に行く末を説明します。

可処分所得の年間総和が10兆円ですから、財の価格が下落することになります。それにより、A・C・D社以外の企業が価格競争力に破れて破綻することになります。(破綻した企業に債務があれば、その分が焦げ付くことになります)
他の企業が破綻して、セーフティ・ネットが100%張られていれば、A・C・D社が供給する財の価格は上昇します。

セーフティ・ネットが100%ですから、赤字財政支出がないとすれば、増税が行われることになります。(赤字財政支出があっても利払いや償還があるのですから同じことですが、わかりやすくするためになしにしています)

増税により、可処分所得の年間総和は10兆円から減少することになります。
これにより、再びA・C・D社が供給する財の価格は下落します。

計画は従来と同じ価格で全量が販売できるというものですから、財の価格の下落により、債務の履行ができなくなります。

この事態を“正常”に解消できるのは、輸出の増加を原資にしたフローの拡大だけです。
輸出の増加で外部から流入する通貨的“富”が増加し、それがきちんと使われれば、フローも増加します。(輸出の増加で可能になったフローの拡大を給与の引き上げに使うということです)

この事態を“その場しのぎ”で解消できるのは、赤字財政支出と預金の取り崩しです。

赤字財政支出は、現在の日本のように後で増税をもたらし、利息分だけ悪い結果を生み出します。
預金の取り崩しは、預金が底をついたときに終わりになります。現実は、その前に、銀行が預金の払い戻しに応じられなくなり、金融システムが崩壊することになります。


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