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【北京11日=杉山祐之】中国共産党機関紙「人民日報」の著名な評論員(論説委員)・馬立誠氏(56)が、今月発行の「戦略と管理」誌最新号で、民族主義的色彩が強い自国の「反日」行動を強烈に批判、客観的事実に即して日本を評価する論文を発表した。感情的な「日本たたき」をよしとする傾向が強い中国で、こうした論文が公表されるのは極めて異例だ。馬氏は、日中摩擦の根幹である歴史認識問題でも、「謝罪」の問題は解決ずみとの考えを示した。
論文名は、「対日関係の新思考」。馬氏は、党内闘争の内幕を描いた大ベストセラー「交鋒」(1998年)の著者として、内外で広く知られている。
中国では今年、旧日本軍の軍艦旗に似たデザインの衣装を着たモデル、靖国神社を訪れた映画監督が、世論の激しい批判を浴びた。広東省深センでは、歴史問題に抗議して「日本人入るべからず」との看板を掲げたバーもあったという。
馬氏はこうした行動を、「愛国の旗をうち振った非理性的な妄動」などと痛烈に批判、「自大、排他的な民族主義」の有害性、危険性を説いた。
日本への評価では、中国で人気がある「日本軍事大国化」脅威論に対し、「国家として軍事的に正常な状態を目指すことと、軍国主義復活とは区別すべきだ」と主張。改憲、自衛隊の海外派遣を支持するアジア諸国研究者らの声も紹介した。
さらに、世界第2位の経済大国となった日本を「アジアの誇り」と呼び、日本の対中経済協力を高く評価した。日本人の対中イメージ悪化の原因として、不法滞在中国人の犯罪問題を詳しく記している。
歴史問題については、小泉首相が昨年、北京・盧溝橋で侵略戦争への反省を表明したことなどを受け、「謝罪問題はすでに解決し、(文書化の)形式にこだわる必要はない」とした。
馬氏は、石原慎太郎・東京都知事の対中発言など、日本側の言動にも批判を加えているが、全体を通じて問題にしているのは、中国人の対日観だ。
こうした見解の公表は、「社会的、政治的に極めて微妙な対日問題では、日本を批判しておくのが最も無難」(メディア関係者)と言われる中国言論界の“常識”を覆すものだ。民衆から「売国奴」扱いされる危険性さえ伴う。
中国筋は論文の政治的背景について、「先月の第16回党大会で党政治局常務委員に選出された曽慶紅氏の対日重視方針への支持表明だ」と指摘する。
曽氏は江沢民・前党総書記の腹心。今春の小泉首相の靖国神社参拝後、国内の反発を浴びながら訪日を決行した「知日派」の実力者だ。党大会後、新指導部の中で初めて外国人と会見、その相手には日本人を選んだ。共産党筋によると、曽氏は、新指導部で対日外交も担当する。
中国では近年、「対日批判の行き過ぎは、経済発展など国益上マイナス」(外交関係者)との、理性的かつ実益重視の判断も出てきている。馬氏は、党指導部の交代時期をとらえ、まず、事実を踏まえた対日観の構築に向け、言論界に最初の一石を投じたと言える。
「戦略と管理」誌は、改革・開放路線を支えた長老の1人、谷牧・元副首相を会長とする研究会が発行、一般にも販売されている。
(センは土ヘンに「川」)
(12月11日21:50)