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10/08 18:27 ＥＵ加盟に期待と不満交錯　分断の首都ニコシア 　外信73
共同
　地中海の島国キプロス。欧州連合（ＥＵ）欧州委員会がＥＵ拡大
に向けて九日、加盟を勧告する見通しの十カ国の中では最有力候補
だ。だがギリシャ系の「キプロス共和国」とトルコ系の「北キプロ
ス・トルコ共和国」が併存し、こうした南北分断問題を抱え込んだ
ままＥＵ加盟が実現する見込みが強い。　　　　　　　　　　　　
　世界で「分断された最後の首都」ニコシアは、経済活性化への南
側の期待と、経済格差に対する北側の不満が交錯していた。　　　
　ニコシアには境界線グリーンラインが東西を走り、青地に白色の
国連旗と有刺鉄線ばかりが目立つ。自動小銃を持った国連キプロス
平和維持軍（ＵＮＦＩＣＹＰ）兵士の乗った軍用トラックが巡回。
南北を分離する幅二百メートルほどの緩衝地帯周辺の緊張は依然続
き、キプロス紛争から約三十年たっても事態はこう着状態のままだ
。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　南のギリシャ系人口は五十五万人。ニコシアの南半分には新しい
ビルが次々と建設され、街並みにはしゃれたファッションがあふれ
ファストフードの店が並ぶ。一人当たり国内総生産（ＧＤＰ）はギ
リシャを超え一万二千三百七十ドル（約百五十四万円）。年間三百
万人の観光客のおかげで「経済優等生」になり、新聞には「二○○
四年にＥＵ加盟」という派手な活字が躍る。　　　　　　　　　　
　キプロス外務省のゾディアテスＥＵ問題部長は「人、モノ、サー
ビスが自由に行き来できるようになり、国としての発言権も増す」
と大歓迎。バシリウＥＵ交渉担当官も「分断解決でもあらゆるイニ
シアチブをとる用意がある」と前向きな対応を見せる。　　　　　
　しかし、人口二十万人のトルコ系住民からなり、トルコだけが承
認する北キプロスの反応は対照的に冷淡だ。ニコシア北部に一歩踏
み込むと街の景観は一変。ほこりっぽい道を走る古い車や失業中の
若者ら。所得水準は南の四分の一余りで、住民脱出でこれまでに人
口が五万人減少した。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　北キプロスの外務国防省のベヒビ報道官は「対欧州農業輸出もで
きず、国際スポーツ大会からも閉め出されたままだ」と怒る。デン
クタシュ大統領のムフティザデ政治顧問は「ここで生き、住んでい
るというわれわれの存在を南は無視している。北を対等なパートナ
ーとして認めることが加盟問題より優先だ」と抗議する。　　　　
　北キプロスにはトルコ兵三万六千人が駐留。南に戻ると「加盟後
に北はどう出ると思うか」と境界線を越えられないギリシャ系住民
が質問攻めにした。（ニコシア共同＝木原実郎）　　　　　　　　
（了）　　０２１００８　１８２６　　　　　　　　　　　　　　
[2002-10-08-18:27]

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