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【リヤド小倉孝保】
サウジアラビアのサウド外相は毎日新聞との単独会見で、米国の対イラク攻撃に絡み、サウジ国内の基地使用を事実上拒否する姿勢を明確にし、中東地域を混乱に陥れかねないイラク攻撃に精一杯の抵抗を見せた。一方で外相は、対米関係について「対テロ戦争」への協力姿勢を強調した。アラブ有数の親米国の立場を堅持しつつ、世界約10億人にのぼるイスラム教徒の世論にも配慮せざるを得ない苦渋の決断が垣間見えた。
サウジが米国のイラク攻撃に抵抗するのは、▽フセイン・イラク政権が崩壊した場合、その混乱がサウジなど周辺諸国の政情不安を誘発する▽民間人など多数のイスラム教徒が犠牲になる恐れがあり、サウジ国内のイスラム原理主義勢力を刺激し、王政への反発が強まる▽アラブ・イスラム社会が親米派と反米派に分裂する―といった危惧があるためだ。
会見で外相は、米上下両院が先月末、エルサレムをイスラエルの首都と容認する条項を含む法案を可決したため、ブッシュ米大統領が署名に追い込まれたことについて「エルサレムの帰属という微妙な問題をなぜ一方的に決めるのか。米議会のやり方はイスラエル寄りで、和平を壊しかねない」と厳しく批判した。
さらに外相は、自国のアブドラ皇太子が先に提示した「イスラエル軍の占領地からの全面撤退と引き換えにアラブ諸国がイスラエルと国交樹立を行う」との中東和平包括案に言及し、「提案は最も現実的で、イスラエル内の多数派が支持していると思う」と述べ、パレスチナ衝突収拾に向け、国際社会が積極的に乗り出すよう求めた。
サウジはメッカ、メディナというイスラム教の「2大聖地の守護者」を自認する。それだけに、米国の対イラク攻撃に伴い、アラブ民衆の反米感情がこれ以上高まれば、パレスチナ衝突が一層、泥沼化しかねないとの懸念が、発言の背景にあるとみられる。
一方、外相は、昨年の米同時多発テロで実行犯19人のうち15人がサウジ人だったことで、悪化しているといわれる対米関係について「両国のメディアがセンセーショナルに報じている。だが、両国首脳は対テロで一緒に戦うと約束しており、両国関係の行方を心配してはいない」と述べた。
「サウジはイラク攻撃回避は困難とみている」(外交筋)のが実態で、サウジは今後、対イラク攻撃とパレスチナ情勢を両にらみしつつ、困難な舵取りを強いられそうだ。