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不審船というお芝居 第二幕
奄美沖の茶番(下)
船体を射撃するという戦争行為をしてまで、要求命令した目的は、
(理由の正当性有無は措くとして)はっきりしている。
即ち、漁業法74条3項に基ずく【臨検】をするために停船を求めたの
だという。(朝日 12/24)
【資料】
(漁業法第七十四条3
漁業監督官又は漁業監督吏員は、必要があると認めるときは、漁場、船
舶、事業場、事務所、倉庫等に臨んでその状況若しくは帳簿書類その他
の物件を検査し、又は関係者に対し質問することができる。)
そして、停船命令を無視したので、立ち入り検査忌避したことになり、
危害射撃を加えた。(毎日 12/24)
船体射撃をした行為についての法論議は、識者に委ねるとして、2点の
不条理を挙げることが出来る。
一つは、500メートルの距離からの、特にお得意の【追尾】態勢での、
拡声器、手旗、空中・海中射撃という警告手段は、波音やエンジン音も加
わって、相手に通ずる筈がないことを、承知の筈であること。
船は進行方向に注意を払っているから、前方に出れば意思を伝えやすい
のに、能登沖と同じように、敢えて【追尾】に徹するのである。
今一つは、臨検が目的ならば、停船させなくとも出来るものである。
他船に乗り移るには、船体同士が平行している方が望ましい。
小型船は、風波のある時停船すると、風に流されて船首の方位が変わり
易いから、接船する相手は平行の位置へ操船するのは困難になるという。
従って、速力のあったほうが船首方向が安定していて、平行に接舷するた
めの操船がし易くなる。
船乗りの常識だから、救難などの訓練をつんでいる海保船なら当然承知
の筈だと船員の方は断言している。
臨検するためには、相手の船に乗り込んで、調査取り調べるのが常道で
ある。 巡視船は不審船に接触も含めると、3回接舷している。
13:54 不審船と「いなさ」が接触。
18:52 「きりしま」が不審船に接舷。不審船が停船。しかし、うねりが
強いためにいったん離れ、巡視船4隻で不審船を取り囲む。
ここで不思議なことが起こった。
船同士は完全に接舷して、相手も停まったのに、一人も乗り移らないの
である。
「特別司法警察職員」という権限を持っている乗組員は、臨検どころか、
何のために接舷しているのかさえ分からない行動をとる。
(波のため船が軋むので「早く逃げて下さい」という乗組員の声に、
船長は、接舷を続けるのは困難とみて、巡視船を離脱させた。)
(読売 2002.08/25)
臨検は、船を継続接舷しておく必要はない。
波があれば乗り移ったら離船し、臨検業務が終わったら迎えの接舷をす
るのが、普通の作業手順だろう。
不審船は、一人の保安官も乗らないまま、21:22まで2時間半も停止し
ていたのである!!
その間、4隻の巡視船らは、500メートルも離れていて何の処置もして
いない。
何のために停船命令を出し、どうして砲撃したのか。
巡視船の乗組員たちは、何の矛盾も感じなかったのだろうか。
21:22 不審船が、再び動き出す。
21:35、「みずき」が、相手が動き出したということで、又、船体に砲撃
を加えた。(全部で、223発という)
人間に例えれば、身体を斬りつけることである。
停まれば何もしない。 動けば斬りつける。
ネズミを弄ぶ、ネコじゃらし行為である。
(そのネズミは、レッキとした中国船籍を表示しているのである!)
21:37 2回目の接舷を、「あまみ」と「きりしま」が行った。
その時の臨検行動は、どういうものだったか、若干報じられている。
波浪もあることだから、相手の船に乗り移るには、接舷の瞬間を捉えて飛
び移る。 船乗りでなくとも、これが常識的鉄則である。
国家を不安にさせる疑いのある不審な船ということで、25隻の船艇と14
機の航空機を動員しての、大事な任務である。
「あまみ」が接舷態勢に入った時、乗組員の配置はどうだったか。
防弾ヘルメットと防弾チョッキを着用した10人余の乗組員は、デッキで
はなく、船橋にいるのである。(船長談)
飛び移るには、船橋を出てから5,6メートルも後部に移動し、階段を下り
から、ということになる。
迅速を要する作業なのに、何と言う臨検準備態勢であろうか。
結局、船橋に控える乗組員は、防弾ヘルメット・チョッキを着た人形か、
案山子のままで終わる。
しかし、この公務員たちは、それなりの役目を担っているのである。
ネジを巻かれて動き出せば、折角用意してあるロケットを発射する場面
が、演じられなくなるからだ。
警備のための法改正の口実が、出来なくなるからだ。
【人形でいる理由】を疑われないための、用意はしてある。
即ち、【巡視船はいったん不審船に接舷したものの、乗り込むことは避け、
特別警備隊の到着を待っていた。】 (毎日新聞12月23日)
不審があるから臨検する。
停船命令を無視したから、船体を砲撃した。
停船しても、特別警備隊が到着するまで、そのままで居ろ。
特別警備隊が到着するのは、明日になる。
正気とも思われないことが、国家の行動として実際に起こったのである!
その特別警備隊(SST)は、どう行動したか見てみよう。
01:10、大阪のSST17人に出動命令。彼らを乗せる小型ジェットは、羽田で
燃料が無いからと給油。 命令から2時間経って飛びたち、関西空港で待
っている隊員を乗せる。 08:00頃、鹿児島航空基地に到着。
ヘリに乗り換えて大型巡視船おおすみに移る。 又、ヘリで不審船を追
う高速巡視艇に向けて飛び立ち、この船で不審船に追いつくのは、翌23日
00:00の予定。……………というわけである。(九州読売 12/26)
24時間体制で緊急事態に対処しているSST隊員が、大阪から沖縄付近へ
移動するのに、丸一日かかるという愚弄。
到着が翌日になる船に何故降りたのか。
何故、現場で行動している「あまみ」などへ直接降りないのか。
隊員を乗せるジェット機の動き。隊員を迎えるヘリ搭載型巡視船「おお
すみ」の準備態勢。現場へ向かうヘリの奇怪な動き。
「おおすみ」の速力23ノット(42.6キロ)
搭載ヘリ、ベル212型、航続距離670km、、最大搭載人員 11名
最大速度 120ノット(222キロ)
鹿児島から現場まで……400キロ?
一つ一つの時間と行動をみてゆけば、これがお芝居でなければ、道理が
成り立たない。
「あまみ」が銃撃されたという時の様子は、写真や動画で公開されてい
る。「あまみ」は、完全に横付け接舷していて、斜めから接近しているよ
うに書かれている図面とは違う。
完全に接舷しているから、本来ならば疾うに乗り移って臨検、怪しけれ
ば摘発出来ている筈なのである。
真横の低い位置からの銃撃とすれば、弾痕の殆んどが「あまみ」の船橋
正面にあるから理に合わない。後ろへ下がってからのものを示している。
防弾マスク・チョッキを装備している、警察業務に携わっている保安官
なのである。
夜の闇を利用して、素早く取り押さえる行動は、被害を広げないために
も最善の筈でないか。
しかし、人形は船橋から出ないまま、巡視船は引き下がったのである。
不審の証拠として映した写真は、図らずも自らのウソを証明するものと
なった。 観客を甘く見た、シナリオのミスであろう。
船体前部への砲撃写真は、16:58なのに空は真っ暗である。
当日の東京の日没は16:32、沖縄は約1時間遅れであるから、日没には30
分も前なので、感光写真でなく赤外線写真なのだろうか。
赤外線に依る熱感知で、エンジンは二層に分かれた前方船倉の船底にあ
ると断定して砲撃を加えた。 その船倉の上は、蓋が掛けられシートで覆
われた密閉状態であるから、エンジンの熱気が出る筈はない。
エンジンの排気ガスなら、パイプを引けば、船尾でも出せる。
この仰天の、熱気によるエンジン前部説の断定は、【幽霊船】の誕生の
経緯を、正体を知っているものでなければ、発想出来ないものであろう。
12/24、鹿児島に入港した4隻の巡視艇の船長が、十管区本部で記者会見
した。 その報道記事で【沈没船から、500メートル離れろ】という指示
があったことを載せたのは、西日本新聞1社だけだったのは、不思議なこ
とである。 中央3紙を調べたが、見つからなかった。
溺れている乗組員を【助けてはならない】というに等しいこのメッセー
ジは、この【幽霊船】の正体を知っているための、このお芝居の演技者で
あることを、知られないための抹殺なのでないか。
社会の記録に残らない生活をしていたが為に、潤沢な資金を使ったプロ
に依って探し出され、雇い金のドルを握って「こんな約束ではなかった」
と悔いながら、冷たい海底に沈んで逝ったことだろう。
「ワシントン9/7共同」の、アーミテージ米国務副長官が、中谷防衛庁長
官に、「対イラク攻撃に際しても、日本の給油活動を期待する」と述べた
というが、【日本憲法の足かせを外すために仕組んだ、プロデューサー料
の請求】のように、私には聞こえた。
本間正勝