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なにやら、「阿修羅」サイトの書評担当のような感じで気が引けますが、また、面白い本が出ました。「戦争広告」という講談社から出た本です。もともとは、2年ほど前にNHK特集で放映したドキュメンタリー(小生は未見)を担当プロデャーサーが文章化したものです。
取り上げているのは、ユーゴ内戦というか、ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦です。オスマントルコ時代の影響で、イスラム化したボスニアは、軍事的には圧倒的に優勢なセルビアとの紛争を何とかしのぎ切ろう、と米国の広告代理店と契約します。
この代理店は、民間企業でなく、国家をクライアントにしており、国際社会、特に米国をボスニア寄りにするために、色々なキャンペーンを展開し、ついにセルビア側に一方的に非がある、というムードになります。
ミロシェビッチらの「蛮行」とされた「民族浄化(エスニック・クレンジング)」は、ボスニア側も行っていたようですが、キャンペーンの効果で、ボスニア側のみが「悲劇の主役」になっていったようです。
ミロシェビッチは、「米国がアルカイダもからんでいた、と指摘しているイスラム勢力を叩いたのは、反テロ活動の一環なのに、なぜ、自分が国際法廷で戦争犯罪人として裁かれなければならないのか」と主張しているようですが、この弁明にも「一片の真理」はあるのかも知れません。まあ、ナチスドイツにはゲッペルズがいましたし、ナチスはあのノストラダムスまで利用しようとして、「ノストラダムスはナチスの勝利を予言している」というキャンペーンまでやったくらいですから(英国のスパイ小説の巨匠の一人、ジョン・カードナーはこの話を素材にしたスパイ小説を書いています。創元推理文庫で翻訳が出ていますので、興味のある方は古本屋で探してみて下さい。タイトルは「ノストラダムス・ファクター」だったと思います)、戦争とプロパガンタは密接な関係があるのは事実でしょう。湾岸戦争でも、今回のアフガン戦争でも、世界中に配信された写真が「ニセもの」だった、と指摘されていますし、オサマのテレビメッセージの真偽も取り沙汰されています。まあ、近代戦争の「総力戦」というのは、そういうことなのでしょうが、バブリック・リレーションズとか最近、流行のCRM(カスタマー・リレーションズ・マネージメント)などという言葉が好きになれない筆者としては「オリンピックやワールドカップだけでなく、戦争まで、広告代理店が仕切るのか」と鼻白む思いです。