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＞あっしら氏は以前、韋駄天で敵国の攻撃を受けた場合、敵国の首都に届く核兵器を保
＞有し、通常兵力を削減する防衛構想を提案しておられましたが、北朝鮮、インド、パ
＞キスタンの国防ドクトリンは正にこの構想の具現化であると考えますが？

「敵対国」と国境線を隔てて陸続きにある北朝鮮・インド・パキスタンの国防ドクトリンは、攻防ともに通常戦力を重視したものだと思っています。
中長距離ミサイル（核弾頭・通常弾頭）、とりわけ核ミサイルは、望まないかたちでの戦争を避けるための抑止力として位置づけられていると考えています。

現在のところ明確な「敵対国」を有しない日本とは国防ドクトリンが異なるでしょう。

＞私は戦争には核兵器の使用に至る以前に、政治的な話し合いから→非正規戦争→正規
＞軍同士の決戦→核兵器の使用に至る様々な段階があり、そのエスカレーションの中に
＞政治的解決（つまり妥協）の話し合いの機会がありうると思いますが、通常兵力で圧
＞倒的な戦力差がある印パの場合はこれがあてはまりそうにはありません。

印パ間でも、「正規軍同士の決戦→核兵器の使用」に至る過程でご指摘の段階が踏まれる可能性が高いと考えています。

“国益”にどれほど関わるのかという係争問題の質と量、政治的解決で許容される落とし所と戦争に委ねて勝利したときに得られる権益（逆に、敗北したときに失う権益）の差異、戦争で予測される被害の質と量、戦争遂行を支える国力と国民意識、“国際世論”の動向などを、印パともにシミュレートしているでしょう。

通常兵力で圧倒的に劣るパキスタンがミサイル実験を行ったのも、戦争抑止のためのデモンストレーションであり、これまでも主張してきた政治的解決をさらにインド政権に要請したものでしょう。

印パ紛争でもっとも不安定要素は、両国国民意識や国際世論の動向だと思われます。
政治的妥協点をどの“水準”に設定できるかがポイントです。
それそれがそれぞれの利益に高い水準で適う妥協点を持ち続ければ、政治的解決は難しく、緊張と偶発的な衝突が継続し、「インド国会襲撃事件」や「バス襲撃」に類似した事件の発生を契機に、メディアなどの主張に押されて正面戦に突入する可能性もあります。

［印パの争点］

●　カシミールの実効支配線は潜在的主張はともかく現実的には相互が認め合っている
●　インドがパキスタンに要請しているのは、越境攻撃の抑止である。
●　パキスタンは、インド側カシミール住民の政治的活動は是としているが、越境テロ攻撃は取り締まり対象としている。

ムシャラフ政権は、インド統治で受ける“弾圧”に対してテロで対抗することを容認していないことが重要です。

パキスタンがインド側カシミールの反インド武力闘争を正当化していれば、妥協点を見出すのは困難ですが、そうではありません。
バジパイ政権も、カシミール全域の領有を公言しているわけではなく、テロ活動の背後にパキスタン情報部の存在があることを匂わせてはいますが、ムシャラフ政権が公式に後押ししているとは考えていません。

インドが大部隊をカシミールに貼り付けているのも、「国会襲撃事件」で失ったメンツを取り戻すための主権誇示行為でしょう。

＞正直申し上げて、印パ北朝鮮のような貧乏国、政情不安国や、イスラエルのような先
＞制攻撃を肯定する軍事ドクトリンを持つ国は、核を持つには分不相応であるとしかい
＞いようがありません。

＞戦争が別の手段による政治の延長である以上、その集結が両国の滅亡では意味がない
＞からで、降伏や停戦条件の話し合いの余地を残さない戦争は無意味も無意味だからで
＞す。

米国も先制攻撃を肯定する軍事ドクトリンを保有しています。
それはともかく、印・パ・北朝鮮も、「戦争が別の手段による政治の延長」と考え、自国（自政権）の滅亡では意味がないと考えているでしょう。

国力・戦力ともに優れ滅亡の危機意識もない米国が、軍事行動にはいちばん無頓着だと思っています。

＞私はこの地域の政治的安定の為にも、米・中・露・仏・英の核保有常任理事国は、早
＞急にインドとパキスタンへの予防的攻撃を決議し、実行に移すべきであると考えま
＞す。
＞具体的にはアフガンを哨戒中の米軍の空軍機・海軍機・巡航ミサイルを使った両国の
＞核施設への空爆を実施します。

＞その際、通常兵器では破壊が困難な人口密集地から離れたミサイルサイロなどの強化
＞された目標に対しては戦術核の使用も考慮されるべきです。

係争の内容から言って、ご提案のようなぶっそうな軍事行動を起こす必要はないと考えています。
常任理事国やＵ.Ｎ.（アナン事務総長）が、「対テロ戦争」の論理に従って“インド擁護”・“パキスタン非難”の姿勢を打ち出すのではなく、今回の緊張高揚の契機になった「国会襲撃事件」をはじめとする事件の真相究明と責任の所在、そして、防止策を模索する会議を開くようインドとパキスタンに“強要”することで沈静化できると考えています。
（主要国やＵ.Ｎ.は、逆に、印パ戦争を望んでいるように見受けられます）

パキスタンが核ミサイルを保有していることは、危険であると同時に、それなりの抑止力になっていると考えています。

国際社会は、「国会襲撃事件」などのテロ活動が、主権侵害であり、背後関係によっては戦争につながる危険なものであることを認めつつ、様々な実態が明らかにならないまま国家間の全面戦争に進んでいくことは“無謀な飛躍”でしかないことをインド政権に突きつけていく必要があります。
（これまでは、話し合いを求めているパキスタンとそれを無視しているインドという構図です）

ムシャラフ政権は、インドが話し合いに応じれば、これまでも国内でやってきたように、カシミール地域でテロ志向組織＋αの“壊滅”に動くと思っています。
ムシャラフ大統領は、いいか悪いかは別として、近代主義者であり反イスラム復古主義者ですから、実効支配線が維持できる限り、そのような策を採るでしょう。
ムシャラフ政権は、インドとの緊張の高まりとそれを解消するための妥協を、治安強化の好機とさえ考えるかも知れません。

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