【エルサレム28日=平野真一】イスラエル政府は28日開いた閣議で、ヨルダン川西岸ラマッラのパレスチナ自治政府議長府内にいるテロ重要容疑者6人の引き渡し要求を取り下げ、パレスチナ側で服役させるとの米提案の受諾を決めた。イスラエル軍は先月29日の自治区侵攻以来、同容疑者逮捕を求めて議長府を包囲、アラファト議長を監禁してきたが、近く包囲が解除され、議長も自由になる見込みが強まった。
米提案は27日夜、ブッシュ米大統領がシャロン首相に直接電話で伝えたほか、パウエル米国務長官も同様の書簡を送った。米側はこの中で、ゼエビ・イスラエル観光相暗殺事件(昨年10月)の容疑者4人や、武器密輸事件(今年1月)の首謀者ら計6人をパレスチナ側で裁判・服役させ、米英両軍要員が監視することを提案。さらにイスラエル軍が議長府包囲を解き、アラファト議長の自治区内での自由移動を認めるよう求めた。閣議で採決の結果、賛成17、反対8で受諾が決定した。
ブッシュ大統領はまた、中東和平戦略に関する協議のため、シャロン首相に来週訪米するよう招請した。
イスラエル側はヨルダン川西岸からの軍撤退を「テロ重要容疑者を野放しにできない」として拒否していた。米提案は、イスラエルの治安への懸念に配慮しつつ、国際社会で高まる撤退要求に応えたと言える。ただ、パレスチナ側での裁判の進め方など詳細は決まっておらず、米国は今後もイスラエル、パレスチナ双方との仲介を進めると見られる。
(4月29日01:19)