パレスチナ危機の収拾に向けた仲介にあたるパウエル米国務長官は17日、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ラマラでアラファト自治政府議長と2度目の会談をした。長官は具体的なテロ対策を求めたが、議長は自治区に侵攻しているイスラエル軍の撤退が先決と主張。予定していた共同声明の発表は見送られた。長官はイスラエルのシャロン首相との会談でも、軍の全面撤退を拒否されたままだ。米国が威信をかけた仲介の第1幕は、双方から停戦への具体策を引き出すことができず、事実上の失敗に終わった。
パウエル長官はアラファト議長とラマラで会談後、エルサレムで記者会見し、「停戦という言葉は現状に即していない」と語り、自治区への軍事侵攻と自爆テロという暴力の連鎖を食い止めることができなかったことを間接的に認めた。議長からテロ対策を引き出すことができなかった長官は、会見で「議長に失望した」とまで語った。
長官は一方で、米国が今後も仲介を続ける方針を明らかにした。国務省の担当者が現地に残ってイスラエル、パレスチナ双方と協議。停戦案をまとめたテネット米中央情報局(CIA)長官も「近い将来」に再び派遣する。
パウエル長官自身も再訪に意欲を見せた。
会見で長官は「双方にさらなる妥協が必要だ」と述べ、イスラエル軍の即時撤退とパレスチナ人による自爆テロの停止を強く求めた。
アラファト議長との会談について、長官は16日に「これからの24時間でさらなる進展を期待している」と楽観的な見通しを述べていたが、決裂した。全面撤退する気配がないイスラエル軍に議長の態度が硬化した。
長官は米東部時間の7日夜に米国を出発し、モロッコ、エジプト、スペイン、ヨルダンを歴訪。中東諸国や欧州連合(EU)、国連などの指導者と事前に協議し、マドリードでは国連とEUにロシアを加えた4者でイスラエル軍の即時撤退と停戦実施を求める共同声明を発表したうえで、11日夜にイスラエル入りした。
長官はシャロン首相と3度、アラファト議長とは2度にわたって会談。その間にアラファト議長はテロ非難声明をアラビア語で発表した。シャロン首相は自治区の一部からイスラエル軍を撤退させると表明した。
しかし、長官が現地での工作を始めた12日、エルサレム市街で自爆テロが発生した。シャロン首相の撤退表明も、作戦が完了した自治区の一部からだけのもので、パレスチナ側が納得できるものではなかった。
米国は今後、シャロン首相が提案した「中東和平会議」構想を軸に調整にあたる。アラファト議長も会議の開催には関心を示した。ただ、議長の排除をもくろむイスラエルにはパレスチナだけでなく、アラブ諸国が反発している。パウエル長官は17日、米国への帰途につく。
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