【ベツレヘム(ヨルダン川西岸)井上卓弥】
2日から聖誕教会に立てこもっているパレスチナ武装集団ら約200人の扱いをめぐり、人命尊重と教会保全を目指すキリスト教各宗派と、過激派容疑者の摘発を主張するイスラエル政府の対立が続いている。
カトリック教会の本山、ローマ法王庁(バチカン)とエルサレムに拠点を置く各宗派代表は先週、教会内にいるパレスチナ人の救出を嘆願する親書をイスラエル政府に送付した。だが、イスラエルのカツァブ大統領は「テロリストを釈放することはできない」と一蹴。教会関係者は12日、イスラエル訪問中のパウエル米国務長官にイスラエル軍に必需品供給を働きかけるよう要請した。
一方、イスラエル軍と武装集団との銃撃戦での負傷者発生や教会施設の損壊が国際的に問題化し、イスラエル政府は13日、武装集団に対し(1)投降してイスラエルの法制度下で裁判を受ける(2)帰還しない条件で外国亡命を許す、の二者択一の選択肢を提示した。だが、パレスチナ自治政府側は「提案は信用できない」と拒否した。
イスラエル軍の包囲作戦は先週末から新段階を迎えた。教会近くのイブラヒムさん(36)は「スピーカーから毎晩、女性のすすり泣く声や奇妙な動物の声が大音響で流れる。頭がおかしくなりそうだ」と話した。教会内にいるカトリック系フランチェスコ修道会司祭は「聖誕教会の中にいる人たちの睡眠を妨害し、精神的混乱に陥れようとするイスラエル軍の心理テロだ」と反発している。