歴史的評価を下すには、まだ、時期尚早だろうが、オサマの功罪について、考察してみたい。
もちろん、9.11アタックが全くの謀略だとすれば、オサマ氏は考察の対象にはならない。また、オサマがCIAのエージェント、アセットで、9.11もその流れで起きた、とすれば、功罪(功はないが)評価の対象は、CIA、あるいは、その一部の「暴走した諜報機関メンバー」になる。この点は、まだ歴史的事実として確定していない(永久に確定しないかも)ので、この点も別稿に譲りたい。(この点については、あっしらさんがかなりの分析をしているのでご参考に。あっしらさんは、なかなか思弁力があり、「説得力のあるロジック」を展開してくれています)。
まず、罪の方としては、@米国を打倒する(昔風に言えば「米帝国主義を打倒する」というところですが、イスラミストは階級闘争史観を採用していないので、こうは言えない)包括的な戦略を持たずに米国に”突っかかった”ため、せっかく誕生した世界初のイスラミスト政権「タリバン」までを潰してしまったA世界を支配する究極的な力(のひとつ)は、軍事力であるが、剥き出しの軍事力を誇示してはまずかろう、と(あの米国でさえ)それをカモフラージュして「人権」だの「自由」だのを旗印にしていたが、今回のアタックで世界秩序の裏が軍事力であることが世界的に明白になった。ダブヤ一派は、もともと、あまり頭のいいスタッフがいないこともあって、色々、もっともらしい理屈を言うのが面倒臭くなったのか、暴力団のように、(もっとも、日本の暴力団ですら、企業舎弟などと称して経済活動団体のフリをしていますが)剥き出しの軍事力で世界を仕切ろう、とし始めていること。このきっかけは、9.11アタックですBパレスチナ支援を唱える割には、イスラエルへのゲリラ攻撃をしていないこと(勘ぐれば、アルカイダとモサドとの何らかの関係も推測できます)ーーなどでしょう。
逆に「功」の方は、上記の「罪」の見方をひっくり返したような話となりますが、@色々に理論やイデオロギーにおおわれていた世界の本質、つまり、暴力、軍事力を剥き出しにし、米国の凶暴さをあからさまにしてみせたことA西欧的価値観と真っ向から対立するイスラミストの存在を全世界に知らしめた事Bアフガン問題、インド・パキスタン問題(カシミール問題)、パレスチナ問題の根の深さを全世界に知らしめた事――などでしょうか。
オサマ自身は、自分たちの行動を現実的な有効性を持つ政治運動と考えているのか、現実への影響はあまり重視しない宗教的行為とかんがえているのか、いまひとつはっきりしないころがあります。宗教行為しとしての9.11アタックへの評価は小生の手には余りますが、もしかすると歴史的にはこちらの方がずっと強く、しかも息の長い影響を後世に与えるかも知れません。キリストの磔刑やジュウイッシュにとってのマサダ、イスラムにとってのサラディンのような「象徴的事象」になるかも知れません。まあ、そうした評価がイスラム圏から高まっていくには、あと1世紀はかかるのでしょうが。もっとも、アフガニスタン・ジハード・ニュースなどを見ると、タリバンのゲリラ戦も本格化しつつあるようですし、米国主導の局面が大転換する可能性もかなりあり、そうなると9.11アタックの評価も変わってくるでしょうが。