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地球にやさしく財布にもやさしく
有機農業は意外に「庶民的」だとする研究も
シュテファン・タイル(ベルリン)
ウォルフガング・フォン・ミュンヒハウゼンの農場の作物は、高級仕様で値段も高い。ドイツで120ヘクタールの穀物農場を経営する彼は、以前は125種類もの農薬を散布していた。だが健康を損なったため、10年前に有機農業へ転換した。
いまミュンヒハウゼンの作物を買いつけるのは、有機穀物で作った高級パンをちょっと高めの値段で売るベーカリーだ。収穫高は従来型農場の半分だが、ミュンヒハウゼンに不満はない。
しかし有機農法の批判派が問題にするのは、まさにその点だ。有機農家は贅沢品を作っているだけだ、途上国の人口を養えるようにした50〜60年代の「緑の革命」には化学農法が不可欠だったと、批判派は言う。
この主張に、スイスにある二つの農業研究機関の科学者たちが異議を唱えた。先ごろサイエンス誌に発表された報告によれば、有機農法は中小農家にとって従来の農法より経済効率が高くなる可能性がある。
彼らは21年間にわたり、完全な有機農法と化学農法、さらに中間の2種類の農法を調査。その結果、有機農法は化学農法より「効率がよく、環境にやさしい」という結論に達した。
●市場競争力もアップする
確かに化学農法に比べて収穫高は少なかったが、その差は予想を下回る20%程度。化学肥料の使用量は4割、農薬は97%少なかった(これらの限定的な使用は認められていた)。「結論としては、有機農法のほうが経済的だ」と、この報告を書いた有機農業研究所のアンドレアス・フリースバッハは言う。
だとすれば、有機農業は「贅沢農業」というイメージを払拭できるかもしれない。大半の消費者は、余分な金を出してまで有機食品を買おうとしない。需要が最も高い西ヨーロッパでも、有機作物が農産物市場に占める割合は3%程度だ。それでもフリースバッハらの報告からわかるように、有機作物が今より市場競争力をつけることは可能だろう。
●インドで綿花を2割増産
問題は、有機農法で世界中の人々を食べさせていけるかどうかだ。批判派に言わせれば有機農法は収穫量が少ないため、その分だけ農地を切り開かなくてはならない。それが環境破壊につながるという。だがフリースバッハらの報告によって、この主張は説得力が薄れてきた。
インドにある世界最大の有機農業地帯へ行けば、それがわかる。中部のマドヤプラデシュ州では、77の村で約1100世帯の農家が伝統農法や欧米の有機農法を採用した。
害虫の駆除には駆除効果のあるインドセンダンの種や、誘引物質で誘い込むフェロモントラップを使う。表土が流出した土地は、堆肥でよみがえらせた。
「化学肥料をやめると3年は収穫高が減るが、その後は増加に転じる」と、プロジェクトを率いるラジブ・バルアは言う。主要な換金作物である綿花の収穫高は、化学農法を続けている近隣の農家を約20%上回っている。
「手軽な化学肥料や農薬を買わずに、畑をまめに手入れし、土を健康な状態に保つ。それだけのことだ」と、バルアは言う。これなら途上国でも無理のない贅沢だ。