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消費の二極化傾向を反映し、低価格品志向の代表格ともいえる100円ショップはここ数年、大きく成長してきています。これからのし烈な競争を生き残っていくためのポイントとは?
消費は、高級ブランド志向と低価格品志向の2極化の傾向にあると言われています。不景気とは言われながらも、確かにブランド品に対する意欲はいまだ強く、東京銀座にエルメス直営店がオープンしたときは長い行列を作りました。一方で、日常の消費財に対する財布のヒモは固く、少しでも安いものでまかなおうということで安売り店が繁盛しています。特に、いわゆる「100円ショップ」といわれる業界は、この1、2年は成熟した感はありますが、ここ数年で大きく成長してきた業界です。
そうした状況下、来たる5月24日に株式会社ワッツという会社がジャスダック市場に株式公開を予定しています。同社は大阪に本社をおきながらも全国で100円ショップを展開する会社で、平成13年12月期末で190店の100円ショップを運営しています。同社の直前期(平成13年12月期)の売上高は94億8千万円強と、小売の規模としては比較的まだ小さいもののここ数年は増収を果たしており、今後の展開が期待されるところです。
同社のような100円ショップを運営する会社は、すでにスルガ(株)やキャンドウ(株)などが株式公開しており、マーケットとしては非常に厳しい状況にありますが、コストを考えた新規出店戦略と商品戦略が成長維持の重要な鍵となると考えられます。
不景気の昨今において、小売店は、既存店の売上は年々逓減していきますので、その分新規に出店していくことによって増収を狙っていくことになり、その出店戦略が非常に重要になります。同社の場合も、現在は全国へ展開していますが、物流コストを考えて北海道と東北地区への出店を行わず、物流センターが滋賀県にあることから出店地域を絞っていく考えがあるようです。また、同社の店舗展開で注意すべき点としては、同社が出店した先の店舗(マイカルや壽屋など)が民事再生法適用申請を行うなどでやむなく店舗閉鎖せざるを得なくなるという事態が発生していることがあげられます。自社以外の事情で店舗戦略そして業績に影響が出ていますので、会社公表の資料はよく注意しておきましょう。
また、コスト低減のためには、在庫管理や仕入コストの低下も重要なポイントであり、同社の財務諸表から商品在庫や仕入原価を読み取ることができますので、調べてみることも必要でしょう。
もう1つの商品戦略についてですが、どういう商品を100円で販売できるかも事業の成長性判断の重要な指標になります。いくらコストの安い商品を用意できたとしても、限られた商品では消費者の充足感はすぐに満たされてしまいます。消費者を引きつけるために常に商品開発が求められるわけですが、代償としてかなりのコストも要求されてしまいます。
そこで同社では、商品の多様性という方向に向かうのではなく、回転のきく消耗日用雑貨を重点商品と位置付けて、この範囲内での商品レベルのアップを目指しています。同社の株式公開時の開示資料からは、具体的な戦略についてみえてきませんが、新しい商品で新しい消費者の気をひくというより既存ユーザの回転利用を狙っており、底固い経営ともいえるかもしれません。
グローバル・ブレイン(株) IPOソリューション部部長 安田功夫
提供:株式会社FP総研